2度目のヴァナディール ソロ活動中の妄想屋クルクと仲間達。
やっぷ~い、クルクです(・▽・)ノ

「Captivity」 モモンジーナ編その4です。


* 「 Captivity 」 1.Lost Day's(1)
* 「 Captivity 」 2.パール
* 「 Captivity 」 3.空耳
* 「 Captivity 」 4.ombre
* 「 Captivity 」 5.Lost Day's(2)
* 「 Captivity 」 6.Lost Day's(3)





Klu3313.jpg

北サンドリアにある見張り塔は、西ロンフォールに突き出た城壁の一部にある。
西ロンフォールを見渡せる造りになっており、奥には6名の義勇兵が監視の任務についている。
以前は新米冒険者たちが集まって、パーティーの心得を学んでいたこともあったという。
今では、立ち寄る冒険者も少ない。
細長い通路状の部屋には、当時使われていたベンチが置かれたままになっている。
手前にあるベンチの一つに、モモンジーナは座らされていた。
その横には、クルクがちょこんと腰かけている。
そして取り囲むように、うずらとぴよと、初老のガルカが立っていた。
「黒糖さん、座りなよ~。足まだ痛いんでしょ?」
クルクに言われ、黒糖と呼ばれたガルカは、「では失礼するかな」 と言って、モモンジーナの隣に腰を下ろした。
黒糖というのは本名ではなく、コクトーを黒糖と聞き違えたクルクがそう呼んでいて、何度訂正しても直らないので、そのままそう呼ばせていたら、みんながそう呼ぶようになってしまったのだ。

クリスタルで逃げようとしていたモモンジーナは、ちょうどクリスタルで移動してきたコクトーに抱え上げられてしまい、そのまま見張り塔まで運ばれてしまったのだ。
その際、もちろんモモンジーナは大暴れしようと思っていたし、大声も上げて助けを呼ぼうとも思っていた。
それが、「お嬢さん、老体にあまり手荒な真似はさせんでくれよ」 とコクトーに言われ、どういう訳だか大人しく担がれたままになっていた。
そして見張り塔の中にあるベンチに、そっと降ろされたのだ。

「来たのが黒糖さんで、よかったわね。梅ちゃんだったら、蹴っ飛ばされて掘りに突き落とされたかもよ」
目の前に立っているうずらがモモンジーナを見下ろして言うと、クルクが笑い声を上げた。
「梅なら、モグハの中をぐるぐる歩き回り過ぎて、目が回って倒れて、モグハの噴水に頭から突っ込んで溺れてたよ」
「バカじゃないの」
「だけど、よく梅兄が行くって言わなかったね」
「未だ、そのくらいの分別はあるようだが、そろそろ限界だろう」
「さぁ~あ、ももんがさんとやら、梅ちゃんがブチ切れちゃう前に、まずはサンちゃんの居場所を言ってもらいましょうか」
うずらがモモンジーナにそう言うと、クルクが促すようにモモンジーナの足をポンポンと叩いた。
この時もまだ、モモンジーナは隣にいるクルクを人質にして逃げられないかと考えていた。
だが・・・。
「ももんがよ、サンラーはまだ幼い。心細い思いをしているだろう。居場所を教えてはくれんか?」 と言ったコクトーに顔を向けた。
「殺したと言っただろう?」
「信じてはおらんよ」
「なぜだ? 生きているという証拠でもあるのか?」
仲間がいなくなって、死んだと聞かされたなら、もっとパニックになってもいいはずだとモモンジーナは思った。
うずらも、モモンジーナの言葉を信じようとしなかった。
「だってあたしたち、誰も自分の目で確かめていないもの。だから、場所を聞いているのよ」
「なら、確かめればいい。サンラーの死体は、クフタルの洞門に捨てたよ」
上目遣いでうずらを睨みつけ、モモンジーナは吐き出すように言った。
「バル、聞こえた? 梅と確認に行って」
クルクがシグナルパールを使い、バルファルに連絡を取った。
そして何度か 「うん」 と頷き、「お願いね」 と言った。

クフタルの洞門と言ったのは、もちろんモモンジーナの出まかせだった。
生きているか死んでいるかわからないが、サンラーは北の地にいるばずだ。

「でもさ~、理由がわかんないんだよね~」
クルクがモモンジーナを見上げて言った。
「クルクとは、ジュノで会ったのが初対面だよね? ゴハンの約束したのに、クルク達が帰っちゃったから、それで怒ってるの?」
「む、そうなのか? ならばそれは、私にも責任があるな。足の生爪を剥がしてしまったことを、モグが大騒ぎしてしまったのだ」
「いやいや。いくらなんでも、そんなことくらいでサンちゃんを誘拐なんかしませんよ」
「普通はそうよねぇ~」
それぞれが思っていることを口にしているが、モモンジーナはそっぽを向いたまま答えようともしない。
すると、「そう言えば」 とぴよが何かを思い出した。
「うずらのこと、アルベリックさんの愛人だとか言ってましたよね? ももんがさんは、アルベリックさんと知り合いだったんですか? それで、うずらがアルベリックさんの愛人だったことに嫉妬してるとか?」
「誰が愛人だ!」
「誰が嫉妬などするか!」
うずらとモモンジーナの叫びが重なった。
「あっそう、違うんだ? ついでに、アルベリックさんを殺してランコントルを手に入れたことが気にくわないって言うんなら、話が見えて来るんですけどね」
「違うと言っているだろう!」
「だったら、別にうずらが誰の愛人だろうが、どうやって店を手に入れようが、そんなのどうでもいいですよね?」
「だから、愛人じゃないって言ってるでしょ!」
「イテテテ!」
目を吊り上げたうずらが、ぴよの髪を鷲掴みして、そして引っ張っている。
クルクがポン、と手を打った。
「もしかしてさ、ももんがも誘拐されちゃった人? それなのに、うずらがお店を譲ってもらったから、それでズルいって思ってるとか?」
「誘拐された娘のリストに、ももんがなんて名前はなかったわよ」
ぴよの髪を掴みながら、うずらが言う。
「じゃぁ、そのお姉さんか妹?」
「だとしたら、うずらに感謝こそすれ、恨んだりはせんだろう」
「そうだよねぇ」
「・・・感謝?」
怪訝な表情で一同を見回したモモンジーナに、コクトーが 「ランコントルの事件は知っとるかね?」 と尋ねた。
モモンジーナは 「知っている」 と答えたが、実際は 「聞いた」 だけである。
「でも、クルクたちが悪いヤツらをやっつけたことは、ナイショってことになってるんだよ」
クルクはそう言った後、「あー!」 とモモンジーナを指差した。
「わかった~! ももんがって、ボードなんとかの仲間だったんでしょ? それで、クルクたちを恨んでるんだ!」
クルクが言うのはボードワン一家という、女性たちを誘拐していた者たちのことだった。
モモンジーナもその一員で、仲間が捕まってしまったことを逆恨みしているのだろうと言うのだ。
「思い付きで、適当なことを言うな」
「だって、ももんががしゃべってくれないからじゃ~ん」
クルクがプーっと頬を膨らませた。
「では、代わりに私がご紹介いたしますわ」
やって来たのは、先ほど城の前にあるクリスタルで消えた、エルヴァーンの女だった。

「遅くなりました。兄様に言われたことを確認して参りました」
女ははうずらの横に立ち、「チリと申しますわ」 とヒザを曲げて、モモンジーナに軽くお辞儀をした。
それからその場にいる者たちに、「こちらは、モモンジーナ・スーピさんとおっしゃいますの」 と言った。
「現在は、サンドリア所属の冒険者でいらっしゃいますが、元神殿騎士団の特別部隊に所属しておられました。特別部隊はクリルラ騎士団長直属で、約6名から成る小隊の集まりです。モモンジーナさんはその一つ、プリズ隊に籍を置かれていたのです」
「・・・え、それって・・・」
「やっぱりね、見たことあるはずだわ」
ぴよとうずらに頷くと、チリは言葉を続けた。
「プリズ隊は数年前に解散しております。6名中、現在生存していらっしゃるのは、モモンジーナさんと、ヴォルフィさんです」
「ヴォルフィ? どこかで聞いた名前だわ」
うずらが首を傾げると、チリは 「最近よくお店にいらっしゃるお客様ですわ」 と言った。
「ああ、黒髪の」
思い出したうずらに頷いた後、チリはモモンジーナ に顔を向けた。
「そして、ヴォルフィさんはつい先ほど、シャレーリさん殺害の罪で、指名手配されました」
「えっ・・・?」
それまでそっぽを向いて話を聞いていたモモンジーナが、弾かれたようにチリを見上げた。
「・・・どういうこと? お前たちは、また罪もない者を罠に嵌めるのか!」
「根も葉もない言いがかりは、およしになって。シャレーリさんがなぜ殺されたのか、モモンジーナさんはご存知ですの?」
「あぁ、知っている!」
噛みつくように答えたモモンジーナを、クルクが 「ちょっと待って」 と遮った。
「チリちゃん、そのシャランラって誰?」
「・・・シャレーリさんですわ、クルクさん。プリズ隊の一員でいらっしゃった方です。プリズ隊が解散した後、シャレーリさんは神殿騎士団で書類の保管係をしていらっしゃいました」
「え?・・・書類の保管係をしていたのは、ヴォルフィだろう?」
モモンジーナは本人から直接、そう聞いたのだ。
だが、チリはモモンジーナに首を振って見せた。
「いいえ、シャレーリさんですわ。ヴォルフィさんは、モモンジーナさんが騎士団をお辞めになったすぐ後に、一身上の都合という理由でやはり騎士団を辞めていらっしゃいます。お疑いなら、ご自分でお確かめになるとよろしいわ」
「・・・自分で・・・」
「ええ。モモンジーナさん、うずらちゃんのこと、ご自分でお調べになりましたの?」
「・・・・・・」
それまで腑に落ちない何かが、ずっと胸につかえていたのだ。
それが今、少しづつ剥がれ落ちて行くような感覚に、モモンジーナは戸惑っていた。
自分で確かめたものは、何一つとしてない。
ヴォルフィは、信頼できる仲間だ。
その彼が言ったことを、なぜ疑う?
だが、疑惑が脳裏を掠めていたのは確かだった。
サンドリアに戻り騎士団に会いに行った時、ヴォルフィは騎士団の制服を着てはいなかった。
特別隊では式典以外で制服を着用する必要がなかったため、モモンジーナは気づかなかったのだ。

「ももんがはさ、ボルビーに何か言われたの?」
「クルたん、ヴォルフィですよ」
「うん、それ」
「・・・シャレーリは、なぜ殺されたのだ?」
モモンジーナがチリを見上げて訊ねると、横にいるクルクが 「無視されちゃった」 とまた頬を膨らました。
「シャレーリさんは書類の整理中に、ヴォルフィさんに関する何かを見つけてしまったようです。それが何かについては、クリルラ様は教えてはくださいませんでした」
「騎士団長に・・・聞いたのか?」
「ええ。お会いして、直接お話を伺って参りましたわ。神殿騎士団では、少し前からヴォルフィさんについて内密な調査がされていたそうですわ。シャレーリさんは、見つけたその書類をクリルラ様にお渡しになったそうです。ですけれど・・・これはクリルラ様がおっしゃっていたことですが・・・シャレーリさんは仲間だったヴォルフィさんに、真実を問いただそうとして呼び出し、そこで殺されてしまったのではないでしょうか。早朝のギルド前広場で、言い争っている二人を見たという少年が見つかったそうですわ」
「嘘だ! デタラメだ!」
モモンジーナは立ち上がり、目の前に立っていたうずらを突き飛ばした。
それまで逃げようとせずに座っていたモモンジーナに、一同は完全に油断してしまっていたのだ。
倒れそうになったうずらを、ぴよとチリが支えようとしているその隙を、モモンジーナは飛び出した。
すぐにクルクとコクトーが追うが、見張り塔を出て右には、クリスタルとサバイバルガイドが設置されている。
それらを使って移動されてしまったら、後を追うことは出来なくなってしまう。

見張り塔から出たモモンジーナの視界に、黄色い何かが現れた。
それは、チョコボの着ぐるみを着た人のようだ。
「モモ!!」
突然愛称で呼ばれ、モモンジーナの足が止まった。
呼んだのは、チョコボだろうか?
そのチョコボは駆け寄りながら、モモンジーナを思いきり殴り飛ばしたのだ。
ガードする余裕もなく、モモンジーナは追って来たコクトーを巻き込みながら、後ろに吹っ飛んだ。
「貴様、死にたいらしいな」
近付きながらチョコボが腰の剣を抜き、上段に構えると一呼吸も置かずに振り下ろした。
「ダメーっ!」
クルクが倒れたモモンジーナに、庇うように覆いかぶさる。
とは言っても、体の小さなタルタルなので、せいぜい胸のあたりに乗っかっているだけに過ぎない。
だが、モモンジーナの額から指一本分離れた所に、剣の切っ先が止まっていた。
「・・・クルたんに免じて、一度目は許してやる。二度目はないぞ。サンラーの居場所を言え」
「・・・・・・イン・・・・・・フェ・・・イン・・・・・・」
モモンジーナはそれだけを言うのが精一杯だった。
チョコボは剣を収めると、そのまま踵を返してクリスタルに消えた。
そのすぐ後に、バルファルが姿を現した。
「クルク、梅さん来なかったか?」
バルファルは、クフタルの洞門にはサンラーはいなかったと告げた。
「数日前からあの場所にこもって、狩りをしているっていうパーティーがいたんだ。一度も他の冒険者を見ていないって言ってた」
「・・・梅、フェ・インに行った・・・」
モモンジーナに乗っかったままクルクが答えると、「今度は本当だろうな」 と言いながら、バルファルもクリスタルで姿を消した。

モモンジーナは、殴られた頬の痛みよりも、たった今目の前に見た剣に気を取られていた。
ヴァナディールに1本しかないというわけではない。
他の誰かも同じ剣を使っているだろう。
だが、モモンジーナが最後にあの剣を見たのは、メイヴェルの柩に被せられた国章旗の上に置かれていたものだった。
チョコボマスクのせいで多少くぐもって聞こえていたが、あの声もよく聞き知っていた。
それに、「モモ」 と呼ばれたのだ。
だがしかし・・・。

モモンジーナの下に倒れていたコクトーが、「大丈夫だったかね?」 と言いながら体を起こすと、モモンジーナも一緒に体を起こされた。
胸の上に乗っていたクルクは、コロリと転がった。
「チョコボ、ブチ切れてたわね」
そう言ったうずらに、チリはクルクを抱き起しながら 「嘘をつくからですわ」 と言った。
「ですけれど、女性の顔を殴るなんて、言語道断ですわ」
「嘘つくからよ」
憤慨したようなチリの言葉に、うずらが肩をすくめた。
「クルたんが止めに入らなかったら、その顔も真っ二つでしたよ」
「でも梅、初めから寸止めするつもりだったと思う」
起き上がったクルクが、地面に座ったままのモモンジーナを撫でながらぴよを見上げた。
「わかっていて、止めに入ったのですか?」
ぴよが尋ねると、クルクは首を横に振り、「ううん、とっさに」 と言って、エヘヘと笑った。
「でも、これでサンちゃんが見つからなかったら、この人ヤバいですよね」
ぴよの言葉に、一同はモモンジーナを見つめた。


バー・ランコントルに入るのは、モモンジーナは初めてだった。
賑やかに楽しく酒を飲みたいのなら、獅子の泉が一番だろうと思う。
だが、静かに刻を過ごすには、ランコントルはいいバーだとモモンジーナは感じた。
店の中にはミスラがいて、モップを持ち床を磨いていた。
「お帰りなさい。騎士団の人たち、ついさっき帰ったの。全部調べてくれたけど、毒は大丈夫だって」
「ありがとう、クマちゃん。来てくれて助かったわ。みんな、適当に座って」
うずらとチリがカウンターに入り、飲み物の用意を始めた。
チリは冷やしたタオルをモモンジーナへと手渡した。
殴られた頬が、赤く腫れている。
受け取ったタオルを頬に当てると、熱が引いて行くようで気持ちよかった。
モモンジーナはぼんやりと、なぜ自分はこの店に着いてきたのだろうと考えていた。
考えても、なぜだかはわからなかった。

クマと呼ばれていたのは、茶色い髪を二つに結んでいるミスラだった。
クマはモップを置くと、ぴよのとなりに腰を下ろした。
「かぼちゃん、連絡取れないの。サルサが言うには、エライ博士の実験を手伝ってるんだって」
「妹の一大事だってのに、何やってるんだ。シグナルパール、持ってたよな?」
「それが、どうもサルサがひっきりなしにかぼちゃんに連絡してたみたいで、うるさいって言われて、それから連絡取れないんだって」
「サルサって誰?」
モモンジーナの隣の椅子にぴょんと飛び乗ったクルクが尋ねると、「かぼすが雇っているバイトのミスラです」 とぴよが説明をした。

カウンターには、モモンジーナをはさんで両側にクルクとコクトー、コクトーの隣にぴよ、そしてクマが並んで座っている。
うずらはみんなに 「ひとまず、お疲れ様」 と言って、グラスを配った。
「・・・アネキ! これ酒じゃないか」
グラスに口をつけたぴよが、声を上げた。
「そうよ。毒が入ってないってわかったんだから、大丈夫よ」
「そうじゃなくて、昼間っから酒かよ。それに、まだ酔うわけにはいかないだろ」
「誰が酔うほど飲めって言ったのよ」
二人のやり取りをぼんやり聞きながら、モモンジーナはグラスを傾けた。
一口飲むと、喉の渇きを思い出したかのように、一気に飲み干してしまった。
「あら、いい飲みっぷり。もう一杯飲む?」
うずらがおかわりを注いだグラスを見つめ、モモンジーナは 「・・・何が本当なんだか・・・わからなくなった」 とポツリと呟いた。
先ほどからのクルクたちの会話を聞いていると、モモンジーナは特別隊にいた時を思い出さずにはいられなかった。
気心の知れた仲間たちとの会話、その時の雰囲気、そういったものがまざまざと蘇ってくるのだ。
「信頼している仲間の言葉を、お前たちは疑うか? 一々それを、自分で確認するか?」
モモンジーナの言葉を、みんなは黙って聞いていた。
「ヴォルフィは、背中を預けて戦ってきた仲間だったんだ。その彼が、言ったんだ」
モモンジーナは一度言葉を切り、うずらを真っ直ぐに見つめた。
「特別隊の動きを探るために、お前は隊長に近付いた。そしてその情報を、クルクに知らせた。違うか!?」
「違うわ」
モモンジーナを見返し、うずらはハッキリと答えた。
「ねぇねぇ、隊長って誰?」
小声で尋ねたクルクに、チリはカウンターに身を乗り出して「兄様ですわ」 と囁いた。
「クルクはうずらから聞いた情報を裏の組織へ流し、我々を嵌めたんだ。そのせいでゼンは死に、パスィリーは濡れ衣を着せられ死んだ。その上、事実を知った隊長をも殺し、シャレーリまでも・・・クルク、お前が殺したんだ!」
握った拳でテーブルを叩き、モモンジーナはクルクを睨みつけた。
クルクは何か言おうと口を開きかけたが、また閉じてしまった。
「モモンジーナさん」
声をかけたのは、チリだった。
「そう、ヴォルフィさんから聞かされていたのですよね? だけど、それは間違っているって、もうわかっていらっしゃるんでしょう?」
「・・・・・・」
「だって、私たちのこと、信用してくれていますもの」
「誰がお前たちのことなんか!」
「なら、どうしてこのお店まで付いて来てくださったの? それに、うずらちゃんが差し出したグラスを受け取って、飲み干しましたわ。その前に、毒の話をしていたのを聞いていらっしゃったでしょう? 私たちに警戒しているのなら、絶対に飲んだりしないはずですわ」
「それは・・・・・・」
「おぬしは、我々から話を聞きたいのではないか? 何が本当なのかわからなくなったというのは、それまで信じていたことに疑問が湧いてしまったからだろう? おぬしが信じるか信じぬかは自由だが、我々はおぬしが知りたいことを話すことが出来る」
コクトーが、ゆっくりとした口調でモモンジーナに語り掛けた。
するとクルクも、モモンジーナに顔を向けた。
「クルク、誰も殺してないよ。でも、もしもクルクがそこから離れずに一緒に戦っていたら、死なずに済んだかもしれない人は、いる。だから、本当にクルクのせいで誰も死んでいないかどうかは、クルクにはわかんない」
「クルクよ、戦場ではそれは、誰のせいでもないのだ。クルクがその場から離れずに戦っていたら、その者は死なずに済んだかもしれんが、クルクが行かなかった場所で、死んでしまった者がいるかもしれぬ」
コクトーの言葉に、クルクは 「・・・うん、そうだよね」 と小さく頷いた。
「・・・例えそうだとしても・・・お前に悪気はなかったのだとしても、お前の密告で死んだ者がいるとしたら」
「モモンジーナさん」
チリが、モモンジーナの言葉を遮った。
「クルクさんは、その当時まだうずらちゃんと知り合いになってはおりません」
「・・・え?」
「うずらちゃんがクルクさんと知り合ったのは、メイヴェルが死んだ後のことですわ」
「・・・そんな・・・」
ヴォルフィから聞いていた話が、全て嘘だったというのだろうか?
モモンジーナは頭を抱えてしまった。

突然、「え?」 とクルクが言った。
皆がクルクを見た。
クルクは意識をシグナルパールに集中させているようで、何もない一点を凝視している。
「いないって、ホントに? 全部見て回ったの?」
「サンちゃん、フェ・インにいないの?」
うずらがカウンターから身を乗り出しそう訊ねると、他の皆がモモンジーナを見つめた。
「う、嘘は言っていない。確かにフェ・インの小部屋に置いてきた」
モモンジーナがそう言うと、クルクは 「小部屋は? 全部見たの?」 と、通話相手であるバルファルに訊ねた。
「やっぱり殺してはいなかったんですね?」
「・・・殺してはいない。多少、乱暴はしたが・・・」
訊ねたぴよに、モモンジーナが答えた。
「今のは、梅に言わなくていいからね! ももんがは殺してないってことだけ言っといて。もう一回、ちゃんと探して来て!」
通話を終えたクルクは、「いないって、フェ・インから出たのかなぁ?」 と首を傾げた。
「いや、サンラーが一人で出られるとは思えん」
「そだよね。・・・ボルビーが連れ去ったってことは?」
クルクがモモンジーナを見る。
「私はサンラーのことを、ヴォルフィに話してはいない」
「・・・となると・・・」
ぴよが腕組みをして深刻なため息をついた。
「ももんがさんが嘘はついていなくても、そこにサンちゃんはいないわけで、もしもこのまま見つからずに梅兄が戻って来たら、俺は梅兄を止められませんからね」
「ぴよ君! まだ見つからないって決まったわけじゃないでしょ!」
クマにたしなめられて、ぴよが 「ごめん」 と謝った。
「もしサンちゃん帰って来なかったら、クルクも暴れちゃうかも」
「クルたんまで!」
「だって、サンちゃん関係ないじゃん! クルクが疑われたり、うずらが愛人だったりするのは仕方ないけど、サンちゃんは関係ないじゃん!!」
「あたしは愛人じゃないわ!」
「ももんが、何でサンちゃん誘拐したりしたのさ!」
涙目になったクルクに睨みつけられ、モモンジーナはフェ・インで泣きながら自分を睨みつけていたサンラーの顔を思い出した。
あの時は何の感情もなく置き去りにしてきたが、今、サンラーの身を案じている自分に動揺しつつあった。
そう、モモンジーナは 「ウメ」 と勘違いして、サンラーをさらったのだ。
もしもあの時、モグハウスから出て来たのがサンラーではなく 「ウメ」 本人だったら、きっと何もかもそこで終わっていたのではないかとモモンジーナは考えた。

その時、突然ランコントルのドアが開いた。
そこにいた全員が、ビクッとしてそちらを向く。
ドアを開けた者も、中にいた者たちの反応に驚いてビクッとしていた。
入って来たのは、厳つい顔のエルヴァーンだった。
「・・・なんだ、ロディファスさんか・・・梅ちゃんかと思っちゃったじゃないの」
うずらが肩の力を抜きながらため息をついた。
「兄上はおられないのか?」
「あー・・・ゴホン、ロディファスさんは、ももんがさんとはお知り合いだったかしら?」
「ももんが?」
厳つい顔を更に歪めて、ロディファスはうずらに聞き返した。
が、すぐにカウンターの席にモモンジーナの姿を認めると、ゲホゲホとむせるように咳込んでしまった。
「・・・何か用ですの?」
珍しくチリが強気でロディファスに訊ねた。
「あ? ああ・・・たった今、騎士団が港でヴォルフィを捕まえそこなったのだ。一緒にいた二人組の男たちは捕えることが出来たのだが、ヴォルフィには逃げられてしまって、行方がわからない。それで、ここへ来るかもしれないと、知らせにきたのだ。では」
それだけ言い終ると、そそくさと出て行ってしまった。
「・・・ここへ、何しに来るの?」
首を傾げたうずらに、ぴよが 「あの人、この店の何かが気になってるらしいから、だから忍び込んだりしてたんだろ」 と言った。
「忍び込んだのがヴォルフィさんだって、何でわかるのよ?」
「だって、ももんがさんに、うずらが愛人だとかオーナーを殺して店を奪ったとか、そんなこと吹き込んでたんだろう? カギが上手く開けられなかったり、毒も仕込まないヘタレっぷりだけど、店に通ったりもして、執着があったことは見え見えじゃないか」
ぴよの説明に、聞いていた者たちから 「あぁ~」 と納得のような声が漏れた。

モモンジーナは、それよりも、ヴォルフィの行方が気になった。
何をしようとしているのか、これまで何をしてきたのか・・・。
「・・・ギルド桟橋・・・」
「え?」
「ギルド桟橋から、ヴォルフィが出て来たところを見たんだ。いかがわしい風体の男二人が、ヴォルフィの前に出てきていた。聞いた時はとぼけていたけれど、おそらく関係あると思う」
モモンジーナがそう言うと、クルクが 「一緒に行ってみよう」 と椅子から飛び降りた。
「黒糖さんたちは、ここにいて。もしボルビーが来たら、捕まえてね!」
「うむ。気をつけるのだぞ」
「あいあいう~!」
「モモちゃん」
クルクに続いて出て行こうとしたモモンジーナに、うずらが声をかけた。
呼ばれたモモンジーナは、驚いたように目を丸くしてうずらを振り返った。
「シグナルパール、付けといて」
「・・・わかった」
うずらに頷くと、モモンジーナはクルクの後を追ってギルド桟橋へと走り出した。



NEXT → * 「 Captivity 」 8.Lost Day's (5)





読んでいただいて、ありがとうございます。
まだ続くんだね~( ̄▽ ̄)
あと2話くらいかな。
もうちょっとお付き合いくださ~い。
では、また来週~(・▽・)ノ




いつも遊びに来てくれてありがちょん(・▽・)
ポチッと押してくれたら嬉しいな♪



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【2016/07/17 23:59】 | * クルク一家
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さくらの
クルクちゃん こんばんあ♪

ああああ・・サンちゃんはどうなったの?
続き早く~~プリーズ

ドキドキはらはらですよう。

梅さんは怒り爆発ですし、サンちゃん
無事で帰ってきてください。

次はいつですか?ドキドキ

名前多すぎて、もはや誰が誰だかw

そして解決へ
コウ
クルクさん、こんばんは〜。

ようやく事件も解決に向かって来ましたね〜。やっぱり黒幕はヴォルフィさんでしたかー。逃げてるみたいですけど、捕まったら事件の全貌も明らかになるんでしょうか。捕まったら、真の黒幕に口封じをされちゃったりして。
これ、でもやっぱり梅さんが事情をある程度知ってるんじゃないかなあ。隊長だった訳だし。それとも蚊帳の外だったのかなあ。いずれにせよ、モモさんとの関係も含めて、梅さんがキーマン・・・いや、キーチョコボですねw
後はサンちゃんですねー。どこへ行ったんだろう。意外と自力でどうにかしてたり・・・続きが楽しみですね。

そう言えば、ボナンザの当選番号発表されましたね。クルクさんいかがでしたか〜。僕は・・・まだ確かめてなかったw
まあ、でも当たってないような気がします。ボナンザと言えば、リアルでもサマージャンボ買っとこう。当たった事ないんですけど、宝くじだけは、たまに買いたくなるんですよね〜。

お話の続き楽しみにしてます。ごゆっくりどうぞ。
それでは〜。

Re: さくらのさん
クルク
さくちゃん、こんばんは~(・▽・)ノ

登場人物、多すぎますよね(^_^;)
書いてて、たまに名前を間違えたりしてますw
次回に、名前一覧つけておこうかな・・・。

サンちゃんはどうしているのでしょうか・・・。

次は一応、24日の23時59分の予定です。
頑張ってまとめていきます!

コメント、ありがとうございます!
うれしいっ(≧▽≦)


Re: そして解決へ
クルク
コウさん、こんばんは(・▽・)ノ

事件の黒幕、クルク一家の誰かだったらコワイですね!

サンちゃんは梅が過保護にしてる割には意外とガッツありそうですから、今頃ラングモント峠を走ってたりしてw

「Captivity」の主事件は、きちんと完結させようと思っているので、それはうやむやに終わらせないようにしたいなと。
次のお話は80%完成しているので、微調整しつつ完成させたいと思います。

続きがあると、コレはこうなんですよ~っていうお話が出来ませんね(>_<)
でもいつも感想のコメントいただいて、とっても嬉しいです(*´-`*)
ありがとうございます!

ボナンザは、それぞれ10個ずつ買ったんですけど、黒糖さんが4等を当ててくれた他は、5等がチラホラでした。
バルはボナンザボールを10個もらいました!ヽ(`д´)ノ
コウさんはまだ見てないのですね~。
ジュノのお家で、アタリ番号をメモって来たユファちゃんが、「まずは5等から!」 とか言いながら発表するのかなぁ~(*´▽`*)

リアルでは、そっか、サマージャンボの季節になっていたんですね!
宝くじは、ロトとかたま~に買うくらいで、他は自分じゃ買ったことないですw
当たりますように☆彡(^人^)


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クルクちゃん こんばんあ♪

ああああ・・サンちゃんはどうなったの?
続き早く~~プリーズ

ドキドキはらはらですよう。

梅さんは怒り爆発ですし、サンちゃん
無事で帰ってきてください。

次はいつですか?ドキドキ

名前多すぎて、もはや誰が誰だかw
2016/07/18(Mon) 20:47 | URL  | さくらの #JalddpaA[ 編集]
そして解決へ
クルクさん、こんばんは〜。

ようやく事件も解決に向かって来ましたね〜。やっぱり黒幕はヴォルフィさんでしたかー。逃げてるみたいですけど、捕まったら事件の全貌も明らかになるんでしょうか。捕まったら、真の黒幕に口封じをされちゃったりして。
これ、でもやっぱり梅さんが事情をある程度知ってるんじゃないかなあ。隊長だった訳だし。それとも蚊帳の外だったのかなあ。いずれにせよ、モモさんとの関係も含めて、梅さんがキーマン・・・いや、キーチョコボですねw
後はサンちゃんですねー。どこへ行ったんだろう。意外と自力でどうにかしてたり・・・続きが楽しみですね。

そう言えば、ボナンザの当選番号発表されましたね。クルクさんいかがでしたか〜。僕は・・・まだ確かめてなかったw
まあ、でも当たってないような気がします。ボナンザと言えば、リアルでもサマージャンボ買っとこう。当たった事ないんですけど、宝くじだけは、たまに買いたくなるんですよね〜。

お話の続き楽しみにしてます。ごゆっくりどうぞ。
それでは〜。
2016/07/18(Mon) 22:21 | URL  | コウ #-[ 編集]
Re: さくらのさん
さくちゃん、こんばんは~(・▽・)ノ

登場人物、多すぎますよね(^_^;)
書いてて、たまに名前を間違えたりしてますw
次回に、名前一覧つけておこうかな・・・。

サンちゃんはどうしているのでしょうか・・・。

次は一応、24日の23時59分の予定です。
頑張ってまとめていきます!

コメント、ありがとうございます!
うれしいっ(≧▽≦)
2016/07/18(Mon) 23:39 | URL  | クルク #-[ 編集]
Re: そして解決へ
コウさん、こんばんは(・▽・)ノ

事件の黒幕、クルク一家の誰かだったらコワイですね!

サンちゃんは梅が過保護にしてる割には意外とガッツありそうですから、今頃ラングモント峠を走ってたりしてw

「Captivity」の主事件は、きちんと完結させようと思っているので、それはうやむやに終わらせないようにしたいなと。
次のお話は80%完成しているので、微調整しつつ完成させたいと思います。

続きがあると、コレはこうなんですよ~っていうお話が出来ませんね(>_<)
でもいつも感想のコメントいただいて、とっても嬉しいです(*´-`*)
ありがとうございます!

ボナンザは、それぞれ10個ずつ買ったんですけど、黒糖さんが4等を当ててくれた他は、5等がチラホラでした。
バルはボナンザボールを10個もらいました!ヽ(`д´)ノ
コウさんはまだ見てないのですね~。
ジュノのお家で、アタリ番号をメモって来たユファちゃんが、「まずは5等から!」 とか言いながら発表するのかなぁ~(*´▽`*)

リアルでは、そっか、サマージャンボの季節になっていたんですね!
宝くじは、ロトとかたま~に買うくらいで、他は自分じゃ買ったことないですw
当たりますように☆彡(^人^)
2016/07/18(Mon) 23:40 | URL  | クルク #-[ 編集]
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