2度目のヴァナディール ソロ活動中の妄想屋クルクと仲間達。
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ランプの明かりが必要になり始めた頃、急に屋敷が騒がしくなったんだ。
ザワザワと話し声が聞こえて、何人もの足音がこっちに向かって来ているようだ。
オレとサンラーは、適当に椅子を床に倒して置いたり、ベッドのシーツを引っ張て乱したりしてからランプを消した。
そして、サンラーが持っていたパウダーを使って、姿を消した。

「おおぉ、この部屋じゃ! この部屋から、邪気が感じられるぞ! ドアを開けい!」
「では、護符を・・・」
「そのままで構わん!」

ドアのすぐ外で声が聞こえて、いきなりバーンとドアが開くと同時に、キャッという短い悲鳴がいくつか聞こえた。
部屋の中に明かりが射し込み、開いたドアの前には、フードのついた修道服を着た二人の人が立っていた。
その後ろに、ロディファスさんと使用人達がいた。
ドアを開けた時に、護符が粉々に破れ散ったらしく、床に散乱している。

修道服を着た一人は、背が小さかったのでタルタルだとわかる。
っていうか、さっきの声で、かぼすだとすぐにわかった。
そしてもう一人は、ぴよさんだ。
ぴよさんは黒いもじゃもじゃの付け髭を付けてるけど、あれってチャママさん特製の探偵の七つ道具かな。
うずらさんが言っていた 「夜なべでお裁縫」 って、二人の修道服を縫ってたのか?
一体なにやらかす気だよ・・・。
みんな固唾を飲んで、二人を見つめている。
その時、「何事ですか?」 と言うシュリーナさんの声が聞こえ、ポリエッタに支えられて部屋にやって来た。

「シュリーナ、こちらのお二人は世界を回り、各地で邪悪なる霊を鎮め、封印してこられた司教様と修道士様だ」
「まぁ・・・!」

修道服の二人、かぼすとぴよさんは、手のひらを上に向けてお辞儀をすると、「アルタナ様の加護」 がどうとか 「楽園の扉」 が云々とか呟いていたから、オレはおかしくって笑いをこらえるのに一苦労だったぜ。
なのに、サンラーが 「プッ」 と吹き出しちゃったんだ!
サイレントオイルは使ってなかったから、全員に聞こえたはずだ。
全員の顔が、ギクッと強張って見えたよ。
すかざず、かぼすが大声を出した。

「あぁっ! 邪悪な霊が、誰かに憑りつこうと狙っておりまするぞ!」
「司教様、これを!」

ぴよさんがかぼすに何だかわからない札を渡すと、かぼすはそれを掲げて 「ムニャムニャムムン!」 とか適当なことを言ってから、宙に放り投げた。
すると札は一瞬のうちに炎に包まれて灰になって消えた。
代わりに現れたのは、見たこともないミスラだった。
手品かよ。
全員が 「おぉぉ!」 とどよめいていたから、オレとサンラーの声はそれに紛れてわからなかったはずだ。

赤っぽい髪を頭の上の方でまとめているミスラは、白装束を着ていた。
みんなには背中を向けていたけど、オレの方からは白目を剥いて気絶しているように見えた。
でも、立ってるんだよな・・・フラフラしてるけど。

「悪霊よ! 依代に憑依するのじゃ~~~! きょえぇぇぇ~~~!」

かぼすが両手を広げると、窓にかけられていたカーテンが、ブワッと舞った。
そして暖炉に、黒っぽい紫色の火が点いたんだ。
例の呪符の効果だろう。
しかも、ミスラが宙に浮いて、ガックンガックン頭を揺らしているもんだから、使用人達はギャーギャー悲鳴を上げてたよ。

「ぐ・・・ぐぉぉぉぉ・・・我ハ解キ放タレルノダ・・・」

宙に浮いてガクガクしているミスラから、爺やの声が聞こえて来た。
もしかして、爺やもパウダーで姿を消してるのか?
んで、ミスラを持ち上げてるのか?
何やってるんだよ!?

使用人たちはシュリーナさんを守るように取り囲み、部屋の隅で青ざめた顔を引きつらせて固まっている。
その前でロディファスさんが仁王立ちしていた。
かぼすとぴよさんは、見えない何かを手で振り払いながら、インチキくさい呪文を唱えている。
やがて、ミスラの動きがゆっくりになって来た。
かぼすはミスラを見上げて、ビシッと指をさした。

「そなた、何者じゃ!!」
「ぐぉぉぉぉ・・・我ハ・・・初代プリズ家当主・・・」
「え?」
「ぐぉぉぉぉぉぉ・・・」

え? って、なんだよ。
爺やが、台本とは違うことを言ったのかな?
かぼすは目をパチパチした後、気を取り直してセリフを続けた。

「何で・・・何故、悪霊と成り果てたのじゃ!?」
「ぐぉぉ・・・ワカラヌ・・・ぐぉぉぉぉぉ」
「・・・・・・」
「司教様・・・ぉぃ、司祭様・・・」
「えーっと・・・よろしい! では、このわたしが、浄化してしんぜよう!」
「・・・護リノ剣ノ力ガ弱マッテイルノダ・・・ぐぉぉぉ・・・」
「・・・はぁ・・・?」
「司教!・・・様!」
「ぐぉぉぉ・・・コノ屋敷ハ・・・メイヴェルニ護ラレテオル・・・剣ノ・・・力ヲ・・・強メルノダ・・・ぐぉ・・ぉ」

ぐぉぉぉとか、力んで声を出しているのがだんだん疲れて来たみたいだ。
でもって、話の流れを剣に持って行こうとしてるんだな。
ちょっと無理矢理っぽくないか?
なんつーか、後でたっぷりからかってやろう。
かぼすが 「話が違うじゃないか」 ってボソッと呟いたら、それを誤魔化すようにぴよさんが 「話が繋がりました!」 って叫んだんだ。
いや、ぴよさんのセリフが繋がってないから。
それでも取り繕うように、やる気がなくなってきたかぼすに代わって、ぴよさんがロディファスさんに声をかけた。

「この部屋の主が使っていた剣は、埋葬したものの他にもありますか?」
「その、壁に飾ってある剣がそうです。特にこちらを・・・」

ロディファスさんが、壁にかかっていた剣に手を伸ばした。

「ぐぉ・・・新タナ剣ヲ・・・護リノ剣ヲ・・・」

誰かに取り憑こうとしてる悪霊が、防御の力を強めろって助言するって、辻褄が合わないだろうによ。
しかもその悪霊って、この家の初代の当主なんだろ?
何かおかしいって、誰も思わないのかな?
まぁ、その方がコッチは好都合なんだけどさ。

ロディファスさんが手に取った剣を鞘から抜くと、刃は靄がかかったように揺らめき、小さな光の粒が舞い出した。
エフェメロンか・・・オレは初めて見たよ。
ウソくさい芝居の最中だけど、剣の様子はその場には効果的に見えた。
みんなもそれに見入っていたよ。
サンラーが、「キレイ」 って呟いたけど、誰も気にしていないみたいだ。

「この剣を、兄上の墓に入れればよいのだな」
「ぐ・・・ぉおっ・・ぉぉ・・・」
「よし、いいよ!・・・うむ、よいぞ! では、まずは悪霊になりそうになっちゃった初代当主の御霊を鎮めようぞ。それから、剣をお墓に入れればいいんだね。・・・ということだ」
「・・・ぐ・・・・・ぉ・・・っ・・・ぉ・・・」

爺や、ノド大丈夫かよ。
かぼすのしゃべり方もおかしくなってきてるし、ボロが出過ぎる前に済ませないとヤバそうだ。
ぴよさんは懐から聖水を取り出して、一々手のひらを上に向けてお辞儀をしながら、部屋中にそれを撒きだしたよ。
それに合わせて、かぼすが 「ニッチョリ、ニョッチョリ」 とか呪文みたいな変な言葉を呟いてるけど、どうせ嘘っぱちなんだろう。
白目のミスラは相変わらすガクガク揺れてたけど、かぼすが 「迷える~御霊よぉ~ぉぉぉ」 と大袈裟な身振りをしながら声を大きくして唱えると、ミスラは宙に浮いたまま上や下にビョンビョン動いて、見ていた使用人達を凍りつかせていた。
まさか爺や、放り投げてるんじゃないだろうな?
っていうか、このミスラ誰だよ!?

「んもぉぉ~~~つかぁぁ~~~れぇぇぇ~~~たぁぁぁ~~~はぁっ!!!!」

ヤケクソみたいにかぼすが叫ぶと、暖炉の炎がボンと弾けて消え、宙を飛び跳ねていたミスラの身体を紫色の光が包み込みこんだ。
一瞬後、ミスラの姿は消えていた。
・・・デジョンか。
ハタハタとはためいていたカーテンが、ふわりと落ち着いた。

「・・・修道士、後の説明をしておいて」
「は・・・。えー、皆様方、これでこの屋敷から悪霊は取り除かれました。我々はこれから、悪しきものからの防御を更に強めるために、う・・・メイデル殿の墓所へ行き」
「メイデルだって・・・ぷぷっ・・・メイヴェルだよ」
「ちっ・・・メイヴェル殿の墓所へ、この剣を納めに行きます。どなたか、一緒に行かれる方はおりますか?」

使用人たちは目を見開き凍りついたまま、誰も動こうとはしない。
そりゃそうだろうな。
あんなもん見せられて、その後に墓場になんか行きたいもんか。
しかも夜だ。
もちろんロディファスさんが、名乗りを上げたよ。

「私が行こう。兄上が護ってくださっていたとは・・・。私が行かずして誰が行くと言うのだ」
「あなた・・・わたくしも・・・」
「いや、シュリーナは屋敷に残りなさい。皆の者、シュリーナを頼むぞ」
「ははっ、旦那様!」

何だかみんな、ちょっとおかしくなってるみたいだ。
茶番ともいえる芝居に中てられちゃってるのかな?
神妙な顔つきで、ぞろぞろと皆が部屋から出て行く。
かぼすとぴよさんも、小突き合いながら廊下へ出た。
爺やはミスラと一緒にデジョンしたのかな?
姿を消したままのサンラーが 「面白かったです」 って呟いているのが聞こえた。
オレが階段を下りる時、ロディファスさんが梅さんの部屋のドアを閉めていた。

結局、墓場にはロディファスさんの他に、使用人のジョハンが付いて来ることになった。
ロディファスさんだけだったら、もう芝居はしないで済むし、オレやサンラーも姿を現せたのにな。
墓場になんか、本当は行きたくなんかなかったさ。
でも、ここまできたなら、最後まで見ておかないとな。

道中は、先頭にランプを持ったジョハン、その後ろにエフェメロンを持ったロディファスさん、その後を修道服姿のかぼすとぴよさんが続いている。
オレとサンラーはインビジが切れていたけど、かぼすたちの少し後ろを並んで歩いていた。
見つかっても、ただの通行人で通せるもんな。

途中で、かぼすが後ろを向いたんだ。
オレたちの方を見て、何か紙切れを落とした。
そのまま進んで拾ってみると、矢印とウサギの絵が描いてあった。

「コレ、お兄ちゃんがよく呪符に使っている紙だわ」
「何だろう? コレでウサギのモンスターでも召喚しろってことか?」
「お墓で使うのかしら?」
「そうかもな。やってみようぜ」

墓地に着くと、入口に小さな小屋があった。
そこに墓守がいるらしい。
ジョハンがドアを叩くと、中から小汚い服を着たガルカが出て来た。

「ん? お前だったか?」
「今夜はワシが番ですじゃ」
「ブッ・・・!」

噴き出したのは、このオレだ。
だって、爺やだったんだもん!
さっき 「ぐぉぉ、ぐぉぉ」 って言ってたせいか、声が枯れてるみたいだぞ。
ジョハンがスコップを持ってついて来いと言うと、爺や・・・墓守はイヤだとごねた。
夜中に墓を掘るものじゃない、と。
それでもロディファスさんに命令されると、いかにも渋々といった感じで、大きな袋にスコップを2本入れ、それを引きづりながらついて行った。
オレとサンラーは、木や草の茂みに隠れながら、みんなの後について行ったよ。
墓地の暗闇は怖かったけど、すぐ側にはブツブツと文句を言っている爺やもいる。

立派な石碑のお墓の前に着くと、かぼすとぴよさんがムニャムニャと祈りを捧げ、それから爺やが重たそうな墓石をずらした。
ロディファスさんは後ろの方からそれを見守っている。
もちろん、ジョハンもロディファスさんの隣に畏まって立っていた。
かぼすがキョロキョロと辺りを見回していると、ジョハンが 「司教様、いかがされました?」 と、怯えた声で尋ねた。
かぼすはキョロキョロしながらオレとサンラーが隠れている茂みに向かって、「アルタナ様の使徒が・・・」 と言った。
そうか、そのための呪符なんだな!
ウサギがアルタナの使いかどうかは知らないけど。
っつーか、そしたらもうウサギを狩れないじゃないかよ!

オレとサンラーは、かぼすの呪符を放り投げた。
すると・・・オレの目の前で、サンラーがウサギになったぞ!?
でも、よく見かける茶色のアイツじゃなくて、真っ白だ。
ってことは、オレもか!?
歩いてみようとしたら、ピョンって跳ねた。

「おぉ、現れたましたぞ」

やけに嬉しそうに、かぼすが手を叩いた。
姿が変わったならもう隠れることはないし、オレは爺やの側まで行ってみたよ。
爺やはスコップで、土を掘り返していた。
すでに大きな穴が開いていて、「あぁ、罰当たりだ」 って言いながら、更に深く掘り進めている。

「穴に落ちないように、気をつけてくだせぇ」

側に来たオレを見て、爺やがそう言った。
明かりはジョハンが持っているランプと、爺やが木の枝に引っかけたランタンだけだ。
暗がりの中で見る墓穴は、どこまでも深く落ちていきそうで怖かったよ。

「おい、修道士。お前も手伝うのだ」
「えぇっ!?」
「これも修行のうちぞ」
「っんだよ」

かぼすに押されて、ぴよさんは袋からスコップを取り出し手に取った。
爺やとぴよさんが、どんどん土を掘って行く。
そんなに掘るのかよってくらい、しばらく掘っていたら、スコップが何かに当たった音がしたんだ。
オレはブルッと震えちまったよ。
骨か!?
だけどそれは、梅さんの剣だったみたいだ。

「司教様、剣がありましたよ」
「よし。新たな剣をここへ」

ぴよさんはロディファスさんからエフェメロンを受け取り、墓の中に横たえた。
もったいないな、埋めちまうなんて。

「では、更なるアルタナ様の加護を与えようぞ。おぉ、使徒が剣に宿る・・・」

かぼすの目が、白いウサギになったオレとサンラーを見た。
で、ちょっとアゴを動かして合図して来る。
ま・・・まさか、穴に入れって言うんじゃないだろうな!?
お断りだ!!

「使徒よ、剣に宿れ!!」

今度こそ、逃げてもいいか?
隣にいる白いウサギが、ブルブル震えだした。
いや、震えているのはオレかもしれない。

「剣に、や、ど、れ! って言ってるんだよ!! 早くっ!!」

かぼすが癇癪を起こし始めたけど、オレは穴に入る気はないぞ!
が、隣にいる白ウサギが動いて、後ろからオレを押したんだ!
オレはパニックになりかけたけど、穴に落ちたオレの側に、白ウサギも飛び降りて来たんだ。
自分から墓穴に飛び降りるとは、サンラーすごいな。
それに墓穴の中には、まだ爺やとぴよさんがいた。
だから、気持ちは悪いけど、思ったほど恐怖はないかな。

「さぁ、祈りを捧げよう。修道士と墓守、穴から出なさい」

えええええ!?
まさか、生き埋めにされるなんてことねぇよな!?
爺やがそんなこと、するはずないよな?
でも、二人は穴から出ちまった。
見上げると、かぼすがニヤニヤしていた。
んなろぉ~、覚えてやがれ!!

「皆、祈るのだ・・・」

かぼすがまた、インチキくさい文句をツラツラと口ずさみ始めた。
するとぴよさんが穴に飛び降りて来て、ウサギになったままのサンラーとオレを素早く抱き上げて、墓穴から出してくれたんだ。
助かったぜ!
見ると、ロディファスさんやジョハンは片膝をつき目を閉じて祈っている。
それからぴよさんは、土の中から一本の剣を引き抜き、爺やに手渡した。
爺やは土にまみれたその剣を、スコップを入れて来た袋の中に隠し入れたんだ。
かぼすがオレたちを追い払うような手の仕草をしたから、草むらに隠れた。
ぴよさんはもう穴から出ていて、祈りの格好をしている。
やがて祈りが終わり、掘り返した穴を爺やとぴよさんが土で埋め、墓石を元に戻した。

「これで、プリズ家は永遠に護られるでしょう」
「司教さま、ありがとうございます。兄上、どうぞ不肖な我らをお守り下さい」

ロディファスさんとジョハンが再び祈りを捧げ、一行は墓地を後にした。
で、オレとサンラーは、爺やが小屋に戻ったから、ついて行ったんだ。

変身を解くと、開口一番にサンラーが 「お兄ちゃんの呪符なんか、使うんじゃなかったわ」 と文句を言った。
あいつ、絶対に遊んでやがったよな。
爺やはスコップを袋から出してから、剣を袋に包んで抱えた。

「さて、爺は一度モグハに戻ります。この剣を綺麗にしなければ」
「錆びたり腐食したりしてないのか?」
「梅はこの剣を、アクリメーターだと言っていました。そのくらいの業物になれば、数年土の中にあったとしても、状態に問題はないでしょう」
「黒糖さん、梅先生の剣をよろしくお願いします」

爺やがうずらさんの店に行くようにと言っていたから、オレとサンラーはそうすることにした。
店の前まで行くと、昨夜と同様やっぱりランプは消えていたんだ。
裏口の戸を叩いたら、今夜はすぐにチリさんが開けてくれたよ。

「お疲れさまでした。どうぞ」
「今日も休みだったんだな」
「えぇ」
「だーって、この人がいるんだもん、開けられないじゃない」
「バルファル、サンラー、ご苦労だったな」
「梅先生!」

チョコボではなく、いつものラフな格好をした梅さんが、カウンターの奥から2番目の席に腰かけていた。
サンラーは梅さんの方へと走って行き、隣のスツールに飛び乗った。
カウンターには他に、クルクと、青い髪をポニーテールにしたタルタルが座っていた。
クルクの親友のライカだな。
クルクはオレに 「おつ~」 と言うと、ライカに向けて話しかけた。

「こっそり隠れながら脅かしたりするの、クルクもやりたかったな~ぅ」
「そういうの、クルたん好きそう」
「かくれんぼみたいじゃん」
「ライカはハラハラしちゃって、きっとダメだな」
「いひひ。ライたんもビビリンボだもんね~」
「いひひ。それじゃ、ライカは帰るよ。素材を大量に買っちゃったから、これから作業するんだ」
「ありがとね~ん。また合成お願いする時はヨロピコ」
「ういうい」

ピョンとスツールから飛び降りたライカに、梅さんが礼を言った。

「世話になった。ポストにクリスタルを送っておく」
「ありあとん」
「それって、クルクのクリだけどね」

またね~と、手を振りながらライカが店を出て行った後、オレはクルクに今のは三人のうちのどのライカかと訊いてみた。

「どれだっていいじゃん」
「よかねーだろう」
「じゃぁ、バルはどのバルなのさ!?」
「はぁ? オレはオレだろ」
「そういうことだよ」
「・・・・・・梅さん、わかるか?」
「そういうことだろう?」
「ね~?」

たまにクルクと梅さんは、とっても波長が合うようだ。
ところで、クルクはライカに何を頼んでいたんだろう?
聞いてみると、剣だと言った。

「ウィングソードだよ。梅はパフェメロンていう剣を持ってて、形がそっくりなんだって」
「パフェメロンではなく、エフェメロンだ」
「同じだよ。ライたん、ウィングソード作れるって言うからさ。クルク、素材集めて作ってもらったんだよ。で、そのメロンとすり替えたの」
「え、いつだ? 部屋でロディファスさんが鞘から抜いた時は、本物だったぞ」
「皆が部屋を出た時だ。ロディが持っていたエフェメロンと、俺が持って行ったウィングソードを交換したのだ」

そう言って、梅さんが側に立てかけてある剣を指さした。
墓穴に入れたのは、ウィングソードだったのか。
っていうか、あの時、梅さんも部屋にいたのかよ。
かぼすたちと一緒に入って来たらしい。
最初は、チリさんが交換役に行くって言ったらしいんだ。
だけど、もしも成り行きが怪しくなってインチキだってバレてしまった時に、使用人たちを説得出来るのは自分だけだろうって、それで梅さんが来たみたいだ。

「二人とも、よく笑わずに見ていられたな。俺は笑いを堪えるのが大変だったぞ」
「いや、笑いそうになったけどさ。でも、見てるうちに、よくやるなぁって、だんだん呆れてきたって言うか」
「わたしは、とっても面白かったです」
「それは良かった」
「アレ、誰のシナリオだよ? 辻褄があってないぞ」
「そんなことないよ!」
「え、クルクなのか?」
「演技指導もしたよ。ぐぉぉぉっていうの、よかったでしょ?」

かぼすのあのヘンテコな呪文とか、そう言われればクルクがやりそうだ。
そう言ったら、かぼすの方は知らないって言うんだ!
てことは何だ?
爺やは、かぼすとぴよさんの二人とは別のストーリーを、クルクに教えられてやってたってことか。
梅さんは、自分が悪霊になったってことにすればいいって言ってたらしいよ。
かぼすたちは、そっちのストーリーのつもりだったんだろうな。

「だってさ、ウソっこでも、クルクは梅が悪者になるのがイヤだったんだよぅ。だから、別の悪役を作ったの」
「あ~、爺やが言ってた、初代の当主ってやつか」
「そんな知らない人は、クルク別にどうでもいいもんね。梅が守ってるって思われてた方が、そっちの方がクルクはいいんだもん」

梅さんは 「そうか?」 なんて言ってたけど、ちょっと照れくさそうだ。
チリさんも、目を潤ませてちゃってる。
うずらさんはフフッと笑った後、調理の手を止めて顔を上げた。

「今回は梅ちゃんの剣のために、みぃ~んなが協力してくれたのよ~? ランコントルを二晩も貸し切って、梅ちゃん、請求書送るからね」
「俺は貸し切りを頼んだ覚えはない」
「ん、まっ! じゃぁ、打ち上げに用意した、このお料理はどうしてくれるのよ!」
「心優しいオーナーのサービスじゃないのか?」
「ホント、ムカつくわね」

うずらさんはツンとそっぽを向いて、料理の乗った皿をテーブル席に運んでいる。
オレも手伝って、グラスを運んだりしていると、裏口が開いてクマさんとぴよさん、その後ろからかぼすもやって来た。

「お疲れさま~。あ、アタシも手伝うね」
「ありがとうございます。では、これをお皿に分けていただけますか?」
「バルちゃん、ありがと。いいから座って。ぴよは邪魔だから、ウロウロしないで座ってなさい。かぼちゃんも座って~」
「爺ちゃんはまだなの?」
「剣を綺麗にしてから来るんじゃないか? っていうか、おい、かぼす!!」
「なぁに?」
「ウサギなんか、必要なかっただろ!」
「そうよ、お兄ちゃん!」
「はぁ~? ぼく、何で文句言われてるのか、サッパリわかんないよ」
「なに? なに? クルクにも教えて~」

オレとサンラーは、墓場での出来事をみんなに話して聞かせたよ。
それからオレは、思い出したんだ。
ドアを引っ掻くようなあの音は、一体何だったんだろうって。
聞けば、それは何て事もないことだった。

「夜の間中、ずっと音を立てたりしているのは疲れちゃうでしょ? だからアタシがかぼちゃんに頼んで、音の鳴る呪符を作ってもらったの」
「クマちゃんは、優しいでしょ?」
「それをバル君やサンちゃんに知らせないお前は、最悪の性格してるよな!」
「ぴよ君はさぁ~、メイデルとか言っちゃうし、セリフも白々しくってイヤんなっちゃったよ」
「んだと? だいたいお前、あのミスラをまたあんな風に使ったりして、何してるんだよ!」
「ミスラって? また? ぴよ君も知ってるコなの?」
「え・・・? いや・・・し、知らないミスラだよ・・・」
「皆、揃っているな」
「黒糖さ~ん、お疲れ様~」
「ぴよ君ったら!」

爺やが最後にやってきた。
剣は土を落としただけで、まるで研いだ後のようにキレイになったそうだ。
梅さんのポストに送っておいたと言うと、みんなは口を揃えて 「見たかったのに」 と言って、爺やに頭をかかせていた。
それから、全員で乾杯をした後、それぞれ好き勝手に食べたりしゃべったり飲んだりしていたよ。
爺やはカウンターの席に行き、梅さんと話し始めた。
話の輪は重なったり広がったりしていたけど、時間が経つと別々になっていた。
カウンターの中にはうずらさんがいて、洗い物をしている。
その前には梅さんを挟んでサンラーとクルクが座っていた。
また梅さんに何か言われたのか、うずらさんが眉を上げて 「ムカつくわね」 と言っていた。
チリさんは酔い始めているのか、時々おしぼりで目の辺りを拭きながら、爺やと話をしている。
オレはどういうわけか、かぼすとぴよさんとクマさんの三人と座っていた。
みんなそれなりにホロ酔いで、ボンヤリしながらポツリとクマさんが言ったんだ。

「こういうの、楽しいね」
「飲み会みたいなの?」
「うん。みんなで、誰かのために一生懸命になって協力して、お疲れ様って乾杯して飲むの」
「そうだね。梅兄の状況がちょっと特殊だったから、今回は特にそうだよな」
「梅さんが剣を必要としたのは、サンラーを冒険に連れて行くためだし」
「てことは、みんなはサンのためにやってたってことか。ちぇっ」
「ねぇねぇ、奥様って、どんな人だった?」

クマさんが、ちょっと身を乗り出して小声で聞いてきた。
オレが、「ロディファスさんの?」 って聞き返すと、クマさんは頷いてから 「梅兄さんの許嫁だったんでしょ?」 って言った。

「キレイな人だったよ。大人しそうな感じでさ。な?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「あれ?」

ぴよさんとかぼすは、無言でグラスを傾けている。
え? キレイじゃなかったのか?
そりゃ好みはあるだろうけどさ。
かといって、シュリーナさんがオレの好みだって事じゃない。
一般的な話でさ。
オレの美的感覚が、崩壊してるってことないよな?
ってなことを考えてたら、ぴよさんがポツリと呟いたんだ。

「アネキの方がキレイだ」
「うん。それと、サンの方がカワイイ」
「だな。だけど、クマが一番だ」
「ぴよ君、ぼくも今それを言おうと思ってたとこ!」
「気が合うなぁ!」
「だね!」

ぴよさんとかぼすが、ハイタッチしてゲラゲラ笑い出した。
酔ってるのか・・・。
クマさんが、「いっつもこうならいいのに」 って、苦笑いしてた。

やがて、チリさんが本格的に泣き出し、サンラーが眠ってしまい、クルクがラララ~と歌い出し、ぴよさんとかぼすが殴り合いを始めたので、打ち上げの飲み会はお開きになった。
チリさんのことは任せろとうずらさんが言うから、お願いした。
つかみ合いをしているかぼすとぴよさんは、爺やが送ってくれることになって、クマさんはホッとしていた。
梅さんは寝ているサンラーを抱きかかえ、「サンラーが世話になったな」 ってオレにお礼を言ってくれた。
オレもサンラーには助けられたし、「一緒に行ってよかったよ」 って言ったんだ。
そしたら、「だろう?」 って得意そうに笑って、デジョンで帰って行ったよ。
オレはご機嫌でフンフン歌っているクルクを連れて、モグハに送って行った。

自分のモグハに帰ると、ずいぶん長い間留守にしていたような気分になった。
だけど、たった二日なんだよな。
明日また、梅さんのモグハに行ってみようかな。
「主の死」 と一緒に葬られていた剣が、蘇ったんだ。
名前は変わっているけど、その剣を握れば、持ち主も蘇るかな?
酔ってもいたし、疲れてもいたけど、オレは寝る前に素振りでもしようと思ったんだ。

「危ないから止めろって言ってるクポ!」

モグに怒られてしまったから、大人しく寝ることにするよ。
明日、梅さんに手合せをお願いしてみようっと。






<おしまい>





いつも遊びに来てくれてありがちょん(・▽・)
ポチッと押してくれたら嬉しいな♪



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【2016/05/04 23:59】 | * クルク一家
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かんけつ~
コウ
クルクさん、こんばんは~。

おぉ。大作ですね。しかもこれ、梅さんのレベル上げの為の前振りの話ですか~。
クルクさんは、一家のメンバーに思い入れがありますね。
それで、梅さんの剣は、エフェメロンとアクリメーターなんですね。
すると、梅さんは最低Lv95はあると言う設定ですか。いや、いまから鍛えるのかなあ。
エフェメロンという剣は初めて知りましたが、アクリメーターは、ベガリーインスペクターでドロップする剣ですね。・・・でもいま僕の手持ちを見たら持ってなかった。。
クルクさんは・・・そうか、ゴブの不思議箱でげっとしたのかなあ。
こないだのSSにもありましたが、梅さんは何気に赤ですね。サンドリアの王立騎士団出身・・・でよかったのかな。なら、納得ですねー。神殿騎士団ですけど、クルリラさんの父親も赤魔道師だったような。

シュリーナさんも初登場でしたが、いい人ですねー。
最後、一家の人にはダメ出しされてましたけど、無事に出産されるといいですね。

僕もGWが終わったら、お話書くのを再開します。今ようやくかぼす君がユファファに会うとこですね。
かぼす君は憎まれっ子なので、話の持ってきかたが難しいです。。

ともあれ、面白いお話でした。またお願いします~。

それでは~。


Re: かんけつ~
クルク
コウさん、こばわんわ(・▽・)ノ

読んでいただいて、ありがとうございます★
こんなに長くなるはずじゃなかったのに(^_^;)

梅は、すでに赤99ですw
サンちゃんを忍者に育てよっかな~と思ってて、それには梅の設定を引きこもりから更新させなくちゃならなくて。
で、ちょっと前からベドーに行かせたり、デルクフに行かせたりっていうお話書いてて、今回のお話で剣が手元に戻ったので、これで解禁ってことでいっかな~ってw
剣は2本とも、ゴブ箱から出てました★
出したのは2本ともうずらという、何か変な因果を感じますww

梅の設定では、王立騎士団希望だったけど、家系の都合で神殿騎士団になってガッカリって感じです。
クリルラパパは、赤AFの時に出て来てました(・▽・)ノ

シュリーナへのダメ出しは、親族の欲目ですよね、きっとw
普段なら絶対に言わないし思いもしないのかもしれないけど、お酒が入ってるのと、「元許嫁」に対するちょっとした対抗意識?みたいなw

ユファちゃんとかぼす!
絶対にユファちゃん、かぼすにムカつきますよねwww
きっと、ユファちゃんに言いたいこと言っちゃうんだろうなぁ(^_^;)
コウさんにお仕置きされればいいww
どんなヒトデナシぶりが読めるのか、ワクワクしてます♪(*´▽`*)ノ



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コメント
この記事へのコメント
かんけつ~
クルクさん、こんばんは~。

おぉ。大作ですね。しかもこれ、梅さんのレベル上げの為の前振りの話ですか~。
クルクさんは、一家のメンバーに思い入れがありますね。
それで、梅さんの剣は、エフェメロンとアクリメーターなんですね。
すると、梅さんは最低Lv95はあると言う設定ですか。いや、いまから鍛えるのかなあ。
エフェメロンという剣は初めて知りましたが、アクリメーターは、ベガリーインスペクターでドロップする剣ですね。・・・でもいま僕の手持ちを見たら持ってなかった。。
クルクさんは・・・そうか、ゴブの不思議箱でげっとしたのかなあ。
こないだのSSにもありましたが、梅さんは何気に赤ですね。サンドリアの王立騎士団出身・・・でよかったのかな。なら、納得ですねー。神殿騎士団ですけど、クルリラさんの父親も赤魔道師だったような。

シュリーナさんも初登場でしたが、いい人ですねー。
最後、一家の人にはダメ出しされてましたけど、無事に出産されるといいですね。

僕もGWが終わったら、お話書くのを再開します。今ようやくかぼす君がユファファに会うとこですね。
かぼす君は憎まれっ子なので、話の持ってきかたが難しいです。。

ともあれ、面白いお話でした。またお願いします~。

それでは~。
2016/05/05(Thu) 23:56 | URL  | コウ #-[ 編集]
Re: かんけつ~
コウさん、こばわんわ(・▽・)ノ

読んでいただいて、ありがとうございます★
こんなに長くなるはずじゃなかったのに(^_^;)

梅は、すでに赤99ですw
サンちゃんを忍者に育てよっかな~と思ってて、それには梅の設定を引きこもりから更新させなくちゃならなくて。
で、ちょっと前からベドーに行かせたり、デルクフに行かせたりっていうお話書いてて、今回のお話で剣が手元に戻ったので、これで解禁ってことでいっかな~ってw
剣は2本とも、ゴブ箱から出てました★
出したのは2本ともうずらという、何か変な因果を感じますww

梅の設定では、王立騎士団希望だったけど、家系の都合で神殿騎士団になってガッカリって感じです。
クリルラパパは、赤AFの時に出て来てました(・▽・)ノ

シュリーナへのダメ出しは、親族の欲目ですよね、きっとw
普段なら絶対に言わないし思いもしないのかもしれないけど、お酒が入ってるのと、「元許嫁」に対するちょっとした対抗意識?みたいなw

ユファちゃんとかぼす!
絶対にユファちゃん、かぼすにムカつきますよねwww
きっと、ユファちゃんに言いたいこと言っちゃうんだろうなぁ(^_^;)
コウさんにお仕置きされればいいww
どんなヒトデナシぶりが読めるのか、ワクワクしてます♪(*´▽`*)ノ

2016/05/06(Fri) 01:08 | URL  | クルク #-[ 編集]
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