2度目のヴァナディール ソロ活動中の妄想屋クルクと仲間達。
やっぴ~、クルクです(・▽・)ノ

今日は一家のお話でーす♪
いつも通りにダラダラと長いけど、仕様です(^▽^;)
起承転結とかありません★
一応、オールキャストを目指してみましたヽ(*´▽`*)ノ


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いつもは通らない港の跳ね橋を、たまにはこっちから帰るかって思ったりさえしなければ・・・。
それがそもそもの間違いだったと言えばそうなのかもしれないけれど、諸悪の根源は別の所にあったのです。


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ねえ・・・もしも、家に帰ったら見知らぬ女の子が自分の彼氏と一緒にいたら、どうする?

アタシがモグハに帰ってきたら、見知らぬミスラが寛いでたの。
誰? って聞いたら、跳ね橋の近くにあった木箱から尻尾が出てて、助けを求めてたってぴよ君が言うんだよね。
だから・・・なに?

困ってる人を助けてあげるのは、いいと思うよ。
だけどさ、何で家に入れるかな?
そりゃ~ぴよ君のモグハだから誰を入れようがぴよ君の勝手だけど、でもアタシが一緒に暮らしてるんだよ。
彼女が留守してる時に、会ったばかりの行きずりの女の子を部屋に入れるって、どういうこと?
その子が困ってるって言うなら、せめて一言アタシに相談してからにしてほしかったな。

その子がミスラだったから、アタシと仲良くなれるかもなんて、そんなの勝手に決めないでほしいよ。
同じミスラだから、余計にイヤなことだってあるんだから。

アタシが1人でヤキモチ妬いてるだけ?
自分のことは棚に上げて、勝手に怒ってるだけ?

「どうせアタシは心が狭くて、困ってる同胞にさえ意地悪するような女ですよっ!」

アタシ達は、出会ってから初めてケンカしちゃった。

モグハを飛び出しても、他に行く場所はないの。
立ち話するくらいの友達はいるけど、困った時に相談出来る人は、バスにはぴよ君とかぼちゃんしかいない。
だからアタシは、かぼちゃんのモグハを訪ねて行ったんだ。
でもね、かぼちゃんはいなかった。

「ウィンダスに行ったクポ。モグハをレンタルしてないから、今日中には戻ると思うクポ」

ウィンダスかぁ・・・。
黒糖さんに話を聞いてもらうのはどうかな。
だけど、前にぴよ君とかぼちゃんのことでオオゴトになちゃったからなぁ。
それに、今回のことは男の人より女の人に話を聞いて欲しいな。
サンドリアにいるうずらさんに相談してみるっていうのはどうだろう?
うずらさんはぴよ君のお姉さんだし、チリさんも一緒ならマトモな意見が聞けるかもしれないよね。

アタシは一番近くにあるクリスタルまで行くと、うずらさんを訪ねてサンドリアへと飛びました。


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うずらちゃんのお使いを済ませてお店へ戻ろうとした私は、こちらを見ている女性に気づきました。
その方はミスラで・・・あら?

「クマさんじゃありません? どうなさったの? お一人?」
「やっぱりチリさんだぁ~。よかった。クリスタルを間違えちゃって・・・」

クマさんはうずらちゃんのモグハへ行こうとしていたのだと言います。
サンドリアはあまり来たことがないらしく、ホッとした様子です。

「ここでお会い出来てよかったですわ。うずらちゃんでしたら、お店の方にいますの」

私はクマさんを連れて、うずらちゃんのお店へと向かいました。
うずらちゃんのお店は、一見しただけではバーだとは気づかないような、隠れ家的なお店です。
元々あった看板は外し、入り口には華奢な装飾が施された真鍮のプレートがかかっているだけです。

「ランコントル・・・出会い?」
「ええ、元々ついていたお店の名前ですわ。最初は変えるって言っていたのですけど、それ以上に素敵な名前が思いつかないって、そのままに」

私はお店のドアを開け、クマさんを中へと招き入れました。
うずらちゃんはオレンジを切っていたらしく、お店の中にいい香りが広がっています。

「お帰り~、ありがとうね。あら、クマちゃんじゃない。珍しいわね、1人?」
「お邪魔します。・・・あの、実は・・・」

言い淀むクマさんに座るように勧め、うずらちゃんはローストした厚切りのハムを切り分けて、お皿に盛り付けています。
私は先日完成したばかりのカクテルを作り、一緒に味見をしてもらおうとクマさんに差し出しました。
それぞれを口にしたクマさんは、香辛料を効かせたハムとほんのり甘くてピリッとした口当たりのカクテルがよく合うと褒めてくださいました。

「そういえば、探してた人って見つかったんですか? お店を手伝ってもらうって言ってたけど」
「あぁ~その人ね、見つかったんだけどぉ~。断られちゃったわ」
「えぇ~、どうして?」
「んー、それがねぇ・・・」

言葉を切ったうずらちゃんに代わり、私がクマさんに説明しました。

「結婚するんですって。お相手は、騎士団の方みたいですよ」
「ふん、平の下っぱ兵士よ! そんなのに落ち着いちゃうなんて、あたしは真っ平!」
「うずらちゃんたら・・・。身分なんて、幸せには関係ないって言っていますのに」
「あたしのことはいいわ。それより、クマちゃんは一人でサンドリアまで来たりして、どうしたってわけ~?」

カウンターに頬杖をついたうずらちゃんが、興味深そうにクマさんを見ました。
私が差し出した2杯目のカクテルのグラスに、クマさんは手を伸ばして、そして話し始めたのです。


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血相を変えたぴよ君に会ったのは、ボクがウィンダスから戻って来た直後だったよ。
自分のモグハのドアを開けると、誰かがボクを後ろから突き飛ばすようにしてモグハに押し入って来たんだ。
何だと驚いて振り返ると、そこにいたのはぴよ君だったの。

「ビックリしたなぁ。なに―」
「クマに会わなかったか!?」
「え? 今日は会ってないけど・・・いないの?」
「チクショウ! やっぱりベドーか」
「えっ・・・」

ベドーだって!?
ボクは血の気が引いていくのを感じた。

「な、何でベドーなのさ! 」
「とにかく俺は、クマを探しにベドーに行く。もしかしたら先にクマが戻って来るかもしれないから、お前はここで―」
「行ったらダメッ! ボクが行くから、ぴよ君は待ってて!」
「バカ言え! じゃあな!」

出て行くぴよ君の後ろ姿に、もう会うことのできない人の背中がダブって見えた。
「ベドーまで迎えに行って来るよ。戻ったらバスに連れて行ってやるから、いい子で待ってるんだぞ」
そう言って、2度と帰ってこなかったんだ・・・。

「やだ・・・行っちゃダメだよ・・・」

ボクは手当たり次第に、薬品をカバンに詰め込んだ。
そして 「モグ、梅先生に連絡しといてよ!」 とだけ言って、ボクはぴよ君の後を追いかけた。

2度も失うもんか!


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久しぶりにウィンダスに戻ったオレは、たまにはいらぬ世話でも焼かしてやろうと、爺やのモグハに顔を出した。

「坊っちゃま! どこにいたんですか!?」
「え、何だよ、クルクんとこに遊びに行ってたんだけど」
「あぁ、たしかクルクはバスに移籍したんでしたな。・・・っと、それよりも、大変なことになりました!」

聞けば、クマさんがベドーに行ったきり戻って来ないという。
ぴよさんとかぼすがベドーへ探しに行っているそうで、オレとクルクにも行ってほしいと、梅兄さんから頼まれたらしいんだ。

「梅はすでに向かっています。クルクには連絡がつきますかな?」
「あぁ。けどさ、クマさんは何しにベドーに行ったんだ?」

オレはシグナルパールでクルクを呼び出しながら、爺やに尋ねた。
クマさんは最近では、主に街の人たちのお使いを仕事にしていて、キケンな場所には行かないって聞いてたけど。
爺やも、ベドーに何の用があったのかまでは、知らないらしい。
そして問題はもう一つあって、梅兄さんがオレたちに助っ人を頼んできたのには、二次被害の心配があったからだって爺やが言うんだ。

「ミイラ取りがミイラになり兼ねない、と。つまり、探しに行ったぴよとかぼすも、あの地ではキケンだということなのです」
「マジかよ。無茶しやがるぜ。・・・ったく、クルクはいっつも繋がらねぇなぁ。クルクのあんぽんたんめ!」

そうボヤいた途端、まるで狙ったかのように 『なんだとぉ~』 と、シグナルパールからクルクの声が聞こえてきた。
オレはクルクに緊急事態だと告げ、詳しいことは会って話すけど、これからすぐにベドーに行けるかと聞いた。

『また、うずらが何かやらかしたの?』
「いや、今回は関係ない。詳しいことは、会って話すよ。オレはこれからすぐに出る」
『ういうい。クルクもすぐに出られるよ。それじゃ、ジュノから飛ぶ?』
「了解」

クルクとの通信を切ると、爺やがオレのカバンにハイポを詰めていた。

「万が一のためにお持ちくだされ」
「ん、ありがと。それじゃ、行ってくるよ」
「お気をつけて」

爺やは、梅兄さんの帰りを待っているサンラーが心細いだろうからと言って、これから訪ねると言っていた。
オレはクリスタルへと走り、ジュノへと飛んだ。


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クマちゃんとチリちゃんを連れてモグハに戻ると、モグが頭を抱えて唸りながら、部屋中をバタバタ飛んでいたの。
どうしたっていうの?

「ご主人さま、大変クポ! ぴよさんとかぼすさんが、ここにいるクマさんを探しに、ベドーへ行ってしまったクポ!」
「あら、そう。探せばいいんじゃないの~」

クマちゃんは驚いていたけど、あたしは気楽にアハハって笑ったわ。
でもモグは、更にジタバタして叫んだの。

「二人は大伽藍レベルに達していないクポ! 手前の地下でさえどうだかわからないクポよ。 上で見つからなければ、下に降りて行くに決まってるクポ! クマさんを探すためなら、多少のキケンやムリはしちゃう二人クポ」
「・・・そう・・・ね・・・」

そういえば、ぴよとクマちゃんは、ベドーで親しくなったって言ってたっけ。
てことは、何?
あのバカは、あたしの言葉を真に受けちゃったの?

クマちゃんから話を聞いたあたしは、あの身のほど知らずが反省するまでココにいればいいわって、そう言ったのよ。
他の女をモグハに連れ込んだですって!?
いったい何様のつもり!?
クマちゃんは 「アタシも悪いの」 な~んて言ってたけど、悪いのはぴよに決まってるじゃない!
いなくなってしまったクマちゃんを、オロオロと探し回ればいいんだわ。

クマちゃんをチリちゃんに任せて、あたしは一度自分のモグハに戻ったの。
モグに口止めするのと、クマちゃんのベッドを用意しておいてもらうためにね。
そしたらモグが、ぴよから連絡があったって言うじゃない。
ぴよはクマちゃんが来ていないか、聞いていたみたい。
あ~ら、ずいぶん早くに反省したのね。
ぴよが一言謝れば、クマちゃんは絶対に許しちゃうわ。
そういうことが重なれば、浮気したってクマちゃんなら許してくれるなんていい気になりかねないものね。

「モグ、ぴよに繋いでちょうだい」
「・・・クポ・・・・・・」
「あ、アネキ! クマ、そっちに行ってないか?」
「なぁに? ケンカでもしたの?」
「え・・・いや・・・ちょっと・・・」
「まさか、彼女の留守に女を引き入れたとか、そんなことしてないわよねぇ~?」
「なっ、なに言ってんだ! そんなんじゃないんだって! っていうか、クマいるのか?」
「いないわよ・・・もう」
「・・・え?」

実際に引き入れておいて、な~にが 「そんなんじゃない」 ですって!?
クマちゃんの気持ちを思い知れ!

「さっき、あたしのところに泣きながら来たの」
「クマが!? それで今は・・・!?」
「さぁね。しばらく1人になりたいって言ってたわよ。きっと、不誠実な男に絶望しちゃったのね、可哀想に」
「だから、誤解だって。どこに行くって言ってた?」
「知らないわよ。アンタとの思い出の地にでも行って、全て忘れてサッパリしようと思ってるんじゃないの~?」
「何で引き止めないんだよ!」
「うっるさいわねぇ~。自分が仕出かしたことでしょ。自分で何とかしなさいよ。あたし忙しいの。じゃあね!」

あたしはただ、そう言っただけよ。
ウソはついちゃったけど、ぴよはサンドに来るって思ってたの。
だって、もしも本当にクマちゃんが1人でどこかに行こうとしてたとして、それをあたしが止めないはずないじゃない!
あたしがクマちゃんを匿っておいてそう言ってるだけだって、ぴよならわかるはずだって思っていたんだもの。
だけど・・・。

「どうしよう! ぴよ君とかぼちゃんを助けに行かなくちゃ!」
「お待ちになって! モグ、この情報は、どこからですの?」

今にも飛び出して行きそうなクマちゃんを、チリちゃんが引き止めてくれたの。

「梅さんのとこのモグから聞いたクポ。梅さんは二人を追ってベドーに行ったクポよ。それから、クルクさんとバルファルさんも向かうように頼んだみたいクポ」
「それでしたら、兄様たちにお任せした方がいいですわ」
「・・・アタシも、地下には降りれないから、行くだけ迷惑になっちゃうよね。だけど、誰かがアタシはここにいるって伝えないと・・・」
「それにしても、どうしてベドーへ探しになんて行ったのでしょう?」

それって、あたしのせいってことになっちゃうの?
でも、あたしはベドーだなんて言ってないわ。
ぴよが勝手に、そう思い込んだだけよ!


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ここにいるクマさんを探しに、ベドーへと行ってしまったぴよさんとかぼすさん。
兄様は二人を追い、クルクさんとバルファルさんもベドーへ向かっているとしたら・・・。
いったい誰が、クマさんはここにいると連絡出来るのでしょう?

「ぴよってば、バカじゃないの!」
「うずらちゃん?」
「あたし、クマちゃんはサンドリアにいるって伝えてくるわ」
「ベドーへ?」
「キケンですわ! でしたら、私も行きますわ」
「アタシも!」
「ダァ~メよ! あたしの俊足を知らないの~? それに、オイルとパウダーさえあれば、どうってことないわ」

うずらちゃんは支度を済ませると、「行ってくるわねぇ~」 と、まるでお使いに行くような気軽さでモグハを出て行ってしまいました。
残された私たちは、さてどうしましょうか・・・。

「ご主人さま、責任を感じているのかもしれないクポ」

ポツリとモグが呟きました。

「責任って?」
「どういうことですの?」
「実は、ぴよさんから連絡があったクポ。それでご主人さまは・・・」

尋ねた私たちに、モグはぴよさんとの会話を教えてくれたのです。

「アタシのせいだわ。アタシがヤキモチなんか妬かなけりゃ・・・」
「いいえ、それは違いますわ。クマさんがヤキモチを妬く原因を作ったのは、ぴよさんですもの」
「だけど・・・もしぴよ君やかぼちゃんに何かあったら、あたし・・・」
「えぇ。私も、兄様やうずらちゃんが心配ですわ」
「モグも心配クポ。ベドーの地下には、見破りがいるクポ」

・・・なんですって!?
うずらちゃんは、それを知っているのでしょうか?

私とクマさんは一瞬顔を見合わせ、そして同時にモグハを飛び出したのです。


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ベドーの地上にいるクゥダフは一々絡んできて面倒くさいけど、俺に倒せない敵じゃありません。
あちこち移動して探してみたけれど、クマの姿はどこにも見当たりませんでした。
丘から水路に降りると、隣を歩いていたかぼすがジュースを飲みながら俺に聞いてきました。

「何が原因でケンカしたのさ?」
「お前には関係ない」
「どうせまた、余計なお節介で女の子に優しくしたりしてたんでしょ」
「・・・・・・」
「図星~? あ、コッチに来るよ」
「次から次へとっ! ・・・目の前で助けを求めてるのに、ムシ出来ないだろっ」
「ボクは出来るよ」
「おい! ジュースなんか飲んでないで、ポイゾナしてくれよ!」
「毒消しでも飲んで、ハイ」

放り投げてよこした薬草臭い液体を飲み下し、俺は顔をしかめてかぼすに文句を言いました。

「お前、魔導士だろ。見てないで、魔法で敵を一掃出来ないのかよ」
「ムリって、さっきから言ってるじゃない」

辺りにカメがいないことを確認して、俺はその場に腰を下ろしました。
さっきから戦っているのは俺ばっかりで、かぼすはたまに俺に回復魔法をかける程度です。
今もカバンからポーションを取り出し、「これも飲んでおけば」 って俺に手渡してきます。

「ポーションかよ」
「今はそれで十分でしょ。いざって時のために、残しておかなくちゃならないからね」
「お前の魔法も、いざって時のためにとっておいてるのか?」

少しイヤミ混じりに俺が言うと、かぼすはちょっと笑って肩をすくめて見せました。

「ぴよ君が思ってるより、ボクの魔法力は少ないと思うよ。こればかりは家系だから、どうしたって仕方ないんだけどね」
「そうなのか? だってお前、魔法ナントカの研究員だったって言ってたじゃないか。エリートしか入れないんだろう? あれ、ウソだったのか!?」
「それは本当。魔法力はともかく、実際にボクは優秀だったからね! ただ、研究員になったのは、院長の隠し子だって噂を広めて、裏から手を回したんだよ。アハハ」
「アハハじゃないだろ! 」
「うん、笑い事じゃないくらい、両親から袋叩きにされて、本気で死ぬかと思ったよ」
「ロクでもないな・・・」
「そういうことだから、ボクにおっきい魔法攻撃は期待しないでね。せいぜい、ぴよ君を守ってあげるくらいだから」
「恩着せがましいぞ。俺だって、お前を守ってやってるってこと忘れるなよ」
「へぇ、そうだったの? 気づかなかったな」

珍しく自分のことを語ったと思ったら、いつもと変わらない減らず口に、俺は苦笑して立ち上がりました。
いつもなら腹立たしくもなる口調も、今だけは緊張を和らげてくれているような気がしていました。

「それじゃ、行くか」
「リンクに気をつけてよね」
「お前こそ、ボケーっとして敵に見つかるなよ」
「そっくりそのままお返しするよ」

俺たちは地下へと続く穴を見つめ、そして足を踏み出しました。


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カメは嫌いだ。
あまり見慣れていないせいか、どうも調子が狂う。
クゥダフから奪った剣も、手に馴染まずに使いにくい。
ウィンダスで暮らすようになって帯剣する習慣がなくなったせいか、気づいたら俺は丸腰でベドーにいたのだ。
こんなこと、口が裂けてもサンラーには言えん。

地上は一通り見て回ったが、クマはもちろん、ぴよとかぼすの姿は見当たらなかった。
行き違いということはあるだろうか。
行き違いであれば、それで構わない。
いや、むしろそうであってくれればいい。
とにかく、地下へと降りて行って見て回らなくては。

「・・・ん?」

今、誰かに呼ばれたような気がしたが、空耳だろうか?
そういえば、おかしな装置があったから、そのせいかもしれない。

それにしても・・・。
俺は地下へ向かいながら、もっといい剣はないものかと考えていた。


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「梅ちゃぁぁぁ~ん!」

遠くに見えた人影が、梅ちゃんだってことは、すぐにわかったわ。
だけど、あたしは姿を現わすことが出来なかった。
梅ちゃんの近くへ行くにはまだ距離があったし、あたしと梅ちゃんの間にはクゥダフが何匹もいたんだもの。
あたしはパウダーで姿を消していて、オイルで消音もしていたんだけど、あんまり大声出すのもどうかと思ってね。
だって、敵に見つかったら一貫の終わりだもの。
そうこうしてるうちに、梅ちゃんは洞窟に入って行っちゃった。
あそこが地下への入り口なのね。

梅ちゃんが消えた地下へ続く洞窟の前に着くと、嫌な風が中から吹いて来ているように感じたわ。
重たく湿っていて、息苦しい。
まるで入ろうとする者を拒んでいるみたい。
あたしはブルッと震えてしまった。

「うずら、アンタは臆病者なんかじゃないはずよ!」

あたしは声に出して自分を叱咤してみた。
そうよ、思い出しなさい。
一か八かの賭けは、これが初めてじゃないわ。
オークの集団を誘き寄せて走った時も、捕まっていた牢から逃げ出した時も、情況は今の方がずっとマシ。
インス二の効果さえ切らさなければ、敵に襲われることはないんだもの。

あたしは持っていたパウダーとオイルの残りを確かめると、梅ちゃんの後を追って洞窟へと入って行ったの。


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魔晶石のある広間まで行ってみたが、クマもぴよもかぼすもいなかった。
ではやはり、もう一方の地下ということか。
途中にいたカメを倒してみたが、持っていた剣は使いにくそうだったので捨てておいた。

地上へと戻ると、至近距離から 「兄様!」 と声をかけられた。
声はリムに間違いないのだが、姿が見えない。
・・・と思ったら、突然目の前にリムとクマが姿を現した。
なぜこの二人がここにいるのだ?

「兄様! うずらちゃんはどこですか!?」
「うずら? どこにいるのだ?」
「クマさんは、サンドリアにいるんです。それを伝えに、うずらちゃんはベドーへ行ってしまって・・・」
「ちょっと待て。クマがサンドリアにいるだと? では、ここにいるクマは誰だ?」

あるいは、ここはサンドリアか?と思ったが、そんなわけがない。

「アタシも、うずらさんを追ってきちゃったんです。うずらさん、地下に見破りがいるって知らないと思うんです」
「兄様、うずらちゃんを見つけてください!」

クマはサンドリアにいただと?
今は目の前にいるが、まぁ、それはいいだろう。
探す手間が省けたからな。
それにしても、ぴよは何を勘違いしてベドーなんかに探しに来たのだ?
そして、クマの代わりにうずらを探さなくてはならないとなると、状況は何も変わっていない。

「うずらのことはわかった。お前たちはサンドリアへ戻っていろ。呪符はあるのか?」
「・・・あ、えっと・・・アタシ、持ってなかった」
「私も、慌てていたので・・・」

何をやっているのだと言ってやりたかったが、俺も剣を持ってくるのを忘れていたから人のことは言えん。

「・・・・・・ならば、入り口に戻れ」
「ぴよ君とかぼちゃんは・・・」
「連絡が行っていれば、じきにクルたんとバルファルが来るはずだ。いいか、絶対に入り口から動くな。これは命令だ」

リムとクマは頷き、共にオイルとパウダーを使い姿を消した。

「クゥダフに気をつけるだけなら、姿を隠す必要はない。オイルだけで大丈夫だぞ」
「まぁ!」
「知らなかった!」

どこからか、二人の声が聞こえてきた。
それにしても、ここで会って幸いというものだ。
あの二人なら、まず言うことは聞いているだろう。
問題は、あの跳ねっ返りの姫がどこをうろついているかということだ。
話に聞く限りでは、うずらもインス二をしているようだ。
ならば、見破りにさえ遭遇しなければ無事でいるということになる。
そういうことならば、見破りを消しておけばいいのだな。

見破りがどこにいたかという曖昧な記憶を頼りに、俺は大伽藍のある地下へ行く道を急いだ。


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地下へ降りて行ったボクたちは、カメに見つかっちゃったんだ。
地上にいたヤツなんかより、ずっと強いヤツ。
二人がかりで何とか倒すことは出来たけど、休む間もなく、その向こう側からこっちに向かってくるカメを見つけた。
咄嗟に、ボクはカメの気を引くためにディアを使った。
だけどぴよ君も、逃げる気はなかったみたいなの。
ボクはありったけのMPを、ぴよ君の回復に使ったんだ。
そしてMP切れになった時、走って来たカメの第一撃で、ボクは吹っ飛ばされちゃった。
運よくカバンがクッションになってくれたおかげで、ボクは気を失わずに済んだけど、カバンの中にあった容器が割れる音がした。

「かぼす! 逃げろ!」

ぴよ君の叫び声に顔を上げると、反対方向へカメを引き連れて走って行くぴよ君の後ろ姿が消えるところだった。
冗談ヤメテよ!
すぐにカバンの中を確認すると、二つだけ割れていないハイポの容器があったんだ。
カバンは捨てて、ボクはそれを両手に掴むと、ぴよ君の後を追いかけようと走り出したの。
ところが、カメがまた現れちゃった!
ボクのMPはゼロ。
腰には役に立たないロッドと、両手にはハイポの瓶。

ここでサヨナラするわけにはいかないんだ。
ほんのちょっとの可能性、ぴよ君も無事でいるということと、もしかしたらこっちにクマちゃんがいるかもしれないということ、ボクの持っているハイポが必要になるかもしれないということ。
それだけを希望に、ボクは踵を返して走り出した。
もちろん、後ろからはカメの足音が追って来る。
薄暗い洞窟は、どっちに行けばいいのかサッパリわからないよ。
あんなに一生懸命勉強したのに・・・。
あんなに研究を頑張っていたのに・・・。
今のボクには、何の役にも立っていない。

追って来ているカメが、剣を振り回したみたい。
その風圧を首筋に感じて、ボクはヒヤリとした。
かすりもしなかったけど、もし当たっていたら・・・そこまでだね。

「とぉぉぉ~う!」

その時、おかしな掛け声が聞こえて、横道から何かが飛び出してきたの。
そしてボクの後ろで、ドサリと何かが倒れる音がして・・・。
倒れたのは、ボクを追っていたカメで、飛び出してきたのは、両手棍を構えたクルたんだった。

「魔法はさぁ~、発動に時間がかかるから、やっぱり殴り倒すのがクルクはいいな」
「・・・ク、クルたん・・・」
「でも、魔法の方が見た目が派手でカッコイイよね? こんな感じに・・・むむむん・・・ファイアV~燃えちゃえ~♪」
「クルたん! ぴよ君を助けてよ!」
「あ、かぼすだ。バル~、かぼす見っけたよ~。・・・・・・うん。・・・・・・あいあいう~」
「クルたんてば!」

クルたんはシグナルパールでバル君と通話しているみたいで、ボクが話しかけてるのにちっとも聞いてくれないの。
だから掴んで揺すってみたら、「聞こえてるよ!」 って棍で殴られて気絶しそうになっちゃった。
その場にうずくまって頭を押さえて痛みに耐えてたら、クルたんがケアルをしてくれたよ。

「・・・クルたん、魔道士やってるの?」
「たまたまね~。殴る魔道士、クルたん参上! ところでクマちゃんは見っかった?」
「まだなんだ。それからぴよ君も―」
「ぴよなら、バルが保護したってさ。あ、そうだ。ケアルしに来いって言われたんだ。かぼすも一緒においで~」

タッタカ走るクルたんの後に続いて走りながら、ボクはちょっとした衝撃を受けてたよ。
クルたん、魔法使えるんだね・・・。
しかも、けっこう余裕あるみたい。
もしかしたら、ボクももっと魔法が使えるようになったりするのかな・・・。


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ウェイポイントでベドーに着いたオレとクルクは、真っ先に大伽藍まで進んで行ったんだ。
二人でくまなく調べて・・・っていうか、敵を片っ端から殲滅して行って、そこに誰もいないとわかったから、あとは別行動することにした。
シグナルパールは繋いだまま、クルクの独り言めいたおしゃべりを聞きながら、オレはベドーの地下を進んでいた。
聞こえて来るのは、遠くで何かが爆発したり砕かれたりする音。
同時に、パールからも同じ音が聞こえて来てたよ。
クルクが魔法を使ってるんだな。
ここには静寂と呪いの装置があるけど、対策はバッチリだ。

しばらく進んだ時、それまでとは違った音が聞こえて来たんだ。
剣がぶつかる音・・・?
音が聞こえた方へ走って行くと、行き止まりの壁を背に、ぴよさんが2匹のクゥダフと対峙してた。
攻撃を躱すことが出来ないで、受けるのが精一杯な様子だ。
それも、時間の問題だろう。
オレは担いでいた大剣を抜いて、駆け出しながら叫んだ。

「ぴよさん! もう少し持ちこたえてくれ!」
『え、ぴよいたの!? どこ? ヤバい感じ? クルクも行こうか? ねぇ、どこだよぉ!?』
「うるさいな」
『なんだとー!!』

そして、パールから聞こえて来ていたクルクの声が途切れた。
オレは気にせず、目の前で背を向けているカメに向かって剣を振り下ろしていた。
・・・と、再び耳元で、『とぉぉぉ~う!』 というクルクの掛け声が聞こえて来たんだ。
そして・・・・・・。

「ぴよ君!」
「やっぴー、クルク到着。ケアルな人はどこですか~」

しばらくしてやって来たクルクは、壁にもたれてへたり込んでいるぴよさんに、すぐにケアルをかけてくれた。
かぼすはらしからぬ表情で、心配そうにぴよさんを見ている。

「助かったよ、ありがとう。・・・かぼすも無事だったんだな」
「・・・あ、たりまえじゃん!・・・・・・」

ぴよさんとかぼすを少し休ませることにして、オレはその場に残り、クルクはまだ見回っていない場所を見てくると言って離れて行った。

「なぁ、本当にクマさんはベドーにいるのか?」
「んー・・・ここだと思ったんだけど・・・。いや、ここしか思い浮かばなかったっていうか・・・」

オレが尋ねると、ぴよさんはあやふやな口調で答えるじゃないか。
てことは、いないかもしれないってことだよな?

「あのさぁ、クマさんは、何の用があって出かけたんだ?」
「ぴよ君とケンカしたんだよ」
「え・・・。それで、出て行っちゃったってことか?」
「う・・・まぁ・・・そういうことになる・・・」
「ぴよ君が、他の女の子にお節介な親切をして、クマちゃんを怒らせちゃったんだよ」
「何をやってるんだよ、アンタたちは」

オレは呆れた。
痴話喧嘩かよ。

「だけどな、そのコは箱に閉じ込められてたんだぞ? シッポだけ見えてて、助けを呼んでたんだ」
「箱ぉ~? なんだい、そりゃ」
「この間の、うずらの事件を思い出してさ。すぐに箱から助け出したんだよ」
「まぁ、オレでもきっとそうするだろうな」
「だろ!? そしたらそのコ、なんかフラフラしててさ。いったいどうしたのかって聞いたんだ」

ぴよさんの話によると、そのミスラは薬を混ぜた飲み物を飲まされたらしい。
そして気付いたら、箱に詰められていたそうだ。
確かに、うずらさんの事件を思い出すな。

「だけど、ちょっとおかしなことを言ってたんだよ。バイトだって」
「バイト~? でも、助けを求めてたんだろ?」
「そうなんだ。何か事件に関わってるのかと思ってさ。通報するにも逃げられちゃ困るし、とりあえずモグハに連れて来て、クマが戻ったら銃士隊にでも連絡してみようかと思ってたんだけど・・・」
「戻って来たクマさんは、そんなこと知らないから、怒って出て行っちゃったってわけか」
「うん。そのミスラの前で、通報しに行くなんて言えないから、友達になってあげたら? みたいなこと言っちゃって、それが余計に怒らせたみたいなんだ」

聞けば聞いたで、なんだかなぁ~って感じもするけどな。
だけど、それがどうしてベドーに繋がるんだ?
それを聞こうとしたら、それまで黙っていたかぼすが 「そのミスラはどうしたの?」 って口を開いた。
あー、かぼすって、ミスラ好きなんだっけ?

「俺とクマが言い合いしてたら、いつの間にかいなくなってたよ」
「ふぅん・・・」

で、オレはまた、どうしてベドーなのかと聞こうとしていたら 『あ、梅だ。やっぴ~』 と、耳元でクルクの声がした。


---*---*---*---*---*---

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梅は、街中をブラリと歩くみたいに現れたよ。
抜き身の剣を手に下げてる人は、街では見かけないけどね。
クルクさぁ、梅がそんなに出来るとは、どうしても思えないんだよねぇ。
目の前で棍棒振り上げても、額でガツンと受けてそのまま仰向けに倒れちゃうような、そんなイメージなの。

「梅、どっか痛いとこない? クルク、ケアル出来るよ」
「ん? そうだな・・・今朝の食事中に、頬の内側を噛んでしまってな。それくらいか・・・」
「あ~、それってさ、一度噛むと、また噛んじゃうんだよね~」
「なぜだろうな?」
「バルは、慌てて食べるからだって言うけど、そんなんじゃないよね!?」
「違うな」
「ほら~、バル。梅も違うって言ってるよ」
『何の話をしてるんだよ!』

あぁ、そうだった。
クルクがかぼすとぴよは見つけたよって言うと、梅はクマちゃんも無事で、ベドーの入り口に待たせてるって教えてくれたの。

『梅兄っ! ありがとうっ!』
『クマちゃん無事だったんだね! よかったぁ!』
『うるせぇ! 耳元で怒鳴るな!』

二人はバルが付けてるシグナルパールに向かって叫んでるみたいで、クルクもうるさかったよ。
うるさいから、パールの通信を切っちゃった。

みんな無事に見つかったし、それじゃ合流して戻ろっかって言ったら、梅が 「それがなぁ」 って。

「うずらが来ているはずなのだ」
「うずらぁ~? 何でうずらまで来てるの?」

梅が、クマちゃんはサンドにいたってことと、それを知らせるためにうずらがベドーまで来たってことを教えてくれたの。

「で、うずらを心配して、チリちゃんとクマちゃんも来ちゃってるのね?」
「おまけに、呪符を持って来ていないらしい」
「あれまぁ。でもそれは、クルクがデジョンしてあげるよ。よかったね、今日のクルクが黒魔で」

とにかく、うずらを探さなくちゃならなくなっちゃった。
クルク達は大伽藍を見て来たし、こっち側の地下はほとんど見て回ったよ。
あ、待って。
大伽藍の先から地上に出る通路は、まだ見てなかったな。
でも、大伽藍を抜けるなんてこと、うずらには無理だと思うな。
梅は魔晶石の間がある方の地下を見て来たって言ってたの。
てことは、どこにいるんだろう?

「行き違いか、カメの餌食になったか・・・」
「縁起でもない! それにしても、うずらはいつもメンドーかけてくれるねぇ」
「悪気はないのだろうがな。とにかく俺はもう一週してくる。クルたんとバルファルは、ぴよとかぼすを―」
「クルクもうずらを探しに行くよ。あの二人のことは、バルに任せておけばいいし」

先にデジョンで送り返そうかと思ったけど、地上ならぴよとかぼすも大丈夫だろうから、バルと一緒にうずらがいないか探しながら入り口に向かってもらおうかな。
それで、クルクと梅も、とりあえず地下を一周したら入り口に戻ることって約束したよ。
切ってたシグナルパールを繋いでバルに計画を伝えたら、なんでうずらがいるんだって聞かれちゃった。
いつまでもココで立ち話してるわけにもいかないから、道々話してあげるとしようかの。

てことで、クルクは梅と別れてもう一度大伽藍へ進んでいったの。


---*---*---*---*---*---

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梅ちゃんの後を追って入った地下で、あたしは完全に迷子になってたの。
暗くて、息苦しくて、何だかもう右も左もよくわからないっていうか、戻ったつもりがさっきとは違う通路のような気もするし・・・。

ココの地下って、巨大迷路みたいになってるの?
梅ちゃんはどこに行ったのかしら?
クルたんやバルちゃんは、来ているの?
もしかして、もうみんなを見つけて戻っちゃったとか?

フラフラとした足取りで、たどり着いたのは何だか変な広場。
そこは妙に広い空間で、敵が1匹もいないの。
奥に進むと、怪しく光っている大きな岩があったわ。

もしかして、ココが大伽藍?
だけど、そこにはたくさんのクゥダフがいるって聞いていたけれど・・・。

「敵がいないなら、ココがどこだって構わないわ」

あたしは歩き疲れてヘトヘトで、見えないとわかっていてもやっぱり怖くて、気分は絶望的になっていたわ。
どうしてこんな所に来ちゃったのかしら。
ぴよもかぼちゃんも、あたしより全然レベルが上なんだから、ちょっとくらいムリしたってどうってことなかったのかも。
一番の失敗は、デジョンの呪符をもらい忘れて来たってことね。
だって、普段は使わないものだから、忘れてたって仕方ないわよね。
だからあたしは、自力でこの地下迷路から抜け出すか、誰かが助けに来てくれるのを待つしかないんだわ。

・・・そうね、助けに来てくれるなら、ステキな人がいいわね。
背が高くてハンサムで、紳士的で優しくて、だけどあたしを守ってくれる力もあって・・・。

フッと浮かんだ顔に、ちょっと浮上した気分が現実に戻されちゃったわ。

「あ~ぁあ・・・」

あたしは岩の端に腰を下ろして、大きなため息ついた。
あぁ、美味しい紅茶が飲みたいわ。
シナモンクッキーもあったら、言うことナシなんだけどな・・・。

この際だから、冒険者だってかまわないわ。
あたしをここから連れ出してくれないかしら。

お金持ちで、貴族で、大きなお屋敷に住んでいて、それから・・・・・・。
とにかく、ステキな人がどこかであたしを待ってるはずなのよ。
だからこんな所で、華の美貌を廃れさせるわけにはいかないの。
お店だって、まだ開店もしていないし・・・。
今日漬けたオレンジ酒、飲み頃はいつかしら・・・。
そうだわ、チリちゃんに頼みたいことが・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。

「よくもまぁ、こんな場所で居眠りが出来るものだな。さすが姫というところか」

笑いを含んだ声に目を開けると、顎に手を当てた梅ちゃんがあたしを見下ろしていたの。

「・・・あら? あたし・・・寝ちゃってたの?」
「そのようだな」
「っていうか、梅ちゃんじゃない! どうしたのよ!?」
「・・・いや、それはこちらのセリフなのだがな」
「そうだったわね。あっ! クマちゃんなら、サンドリアにいるのよ! それを伝えようと思って来たんだけど・・・その・・・」

急を要するから慌てて来たのに、まさか眠ってしまっていただなんて・・・!

「君を心配して追って来た、クマとリムに会った」
「なんですって!? 危ないからって言ったのに。それで二人は?」
「ベドーの入り口で待たせている。ぴよとかぼすも無事だ。今頃バルファルに連れられて、入り口に着いている頃だろう」
「そう・・・よかったわ・・・」

あたしは心からホッとしたわ。
結局、あたしは何の役にも立っていなかったみたいだけど、みんなが無事だったならそれでいいわ。

「・・・もう少し寝ていくか?」
「冗談でしょ、こんな場所」
「よく寝ていたようだったが」
「レディーの寝顔を見るなんて、紳士失格よ!」
「それは失礼」

笑いながら差し出された手に助けられ、あたしは腰を上げた。


---*---*---*---*---*---

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兄様に言われてベドーの入り口に戻った私とクマさんは、それから幾度となく立ったり座ったりを繰り返しておりました。
クマさんは、ちょっとその先まで見てくると言って、すぐに中へ行こうとするのです。

「入り口付近の敵だったら、アタシでも倒せるから大丈夫だよ」
「ですけれど、そうしているうちに、知らずに思っていたよりも先へ進んでしまうものですわ。ここは辛抱して待ちましょう」
「・・・そうだよね・・・」
「大丈夫ですわ。みなさん無事に戻ってきます」

こんな時に、リンクシェルがあったならと、私は思うのです。
うずらちゃんの誘拐事件の後、私はクルクさんに一度提案したことがありました。
ですけれど、あのような事件は稀だろうし、普段の連絡はモグ通信で事足りると、話はそれで終わってしまったのです。
もう一度、提案してみようかしら・・・。

「チリさん、あれって・・・」

クマさんが私の手を掴み、ベドーの奥へと視線を向けています。
ミスラの方は視力が優れているようで、私の目では人なのかクゥダフなのか、まだ確認することは出来ません。
やがてその影がハッキリとした輪郭を見せ始めると、クマさんは 「ぴよ君! かぼちゃん!」 と叫んで飛び出していってしまいました。
私もクマさんの後を追おうとしたのですが、すぐにクゥダフの姿に怖気てしまい、足が止まってしまいました。

クマさんはぴよさんに抱きつき、ぴよさんはクマさんをしっかりと抱きとめました。
あら、羨ましい。
・・・いえ・・・これでお二人も、仲直りする事が出来るでしょう。
そしてクマさんは膝をつくと、かぼすさんを抱きしめています。
二人を離そうとするぴよさんと、クマさんにしがみつくかぼすさん。
いつもの光景が戻ってきました。

「チリさん、うずらさんはクルクと梅兄さんが探してるよ」

バルファルさんが私の元へとやってきて、「すぐに見つかるよ」 と言ってくれました。
そしてその言葉通り、程なくして兄様とうずらちゃんの姿が見えたのです。
うずらちゃんは疲れているようで、足取りが重く感じられます。
ですけど、私を見て大きく手を振ってくれました。

「クルク、うずらさん見つかったぜ。梅兄さんと一緒だ。・・・あぁ・・・えぇ!? 何やってんだよ!・・・わかった、すぐに行くから待ってろよ」

ホッとしたのも束の間、シグナルパールでクルクさんに連絡をしていたバルファルさんの声に、私は胸騒ぎを覚えて見つめました。

「クルクさんに何かあったのですか?」
「いや、ちょっとそこまで迎えに行ってくる。・・・みんなはここにいてくれ」

寄り添ってこちらに来るぴよさんたちに声をかけて、兄様たちとすれ違う時に片手を上げて、バルファルさんは走って行ってしまいました。

「どうしたんだ?」
「兄様・・・うずらちゃん!」
「もぅ、チリちゃんたちは、なんでこんな所にいるのよ!?」
「うずらちゃん、見破りがいるって知らないで行ってしまったのではないかと思って、それで心配になって・・・無事でよかったですわ」
「見破りなんていなかったわよ」
「あそこは大伽藍ではないからな」
「え、そうだったの?」
「アネキは何しに来てるんだよ!」
「あんたたちの痴話喧嘩を見に来たのよ!」
「うずらさんたら・・・」

みなさんホッとしているのか、おしゃべりに余裕が出てきているようでした。
ですが私は、先ほどのバルファルさんの様子が気になっておりました。

「クルクさんはどうされたのでしょう?」
「そういえば、さっきバル君が走っていったよね」
「バルファルさんは、クルクさんを迎えに行くとおっしゃっていましたわ」
「クルたんに何かあったのかも」
「やだ、ぴよ君。クルたんに限ってそんな・・・」

その時、「お待たせ~」 と言いながらクルクさんがこちらに走って来ました。
いつも通りのクルクさんで、ケガをしているようにも見えません。
そして、両手に何かを抱えているようです。

「戦利品だよ。みんなそれぞれ持ち帰って、競売に出品すること! あ、梅はクリスタル持って帰ってね」

クルクさんは抱えていた物を、地面にバラバラと放り出しました。
見ればそれは、剣や魔法のスクロールや何かのカケラだったりします。

「おぉ~い・・・誰か・・・」

バルファルさんの声に顔を上げると、クゥダフの背甲をいくつも背負ったバルファルさんが、ヨロヨロとしながらこちらにやって来るところでした。

「バル君、いつからカメの子分になったのさ?」
「うるせー、かぼす! さっさと運ぶの手伝いに来い!」
「ボク、ロッドより重たいもの持たない主義なの」
「いいから、お前も来い!」

ぴよさんに襟首を掴まれて、かぼすさんはバルファルさんの方へと引きずられて行きました。


---*---*---*---*---*---

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ぴよ君とかぼちゃんが、バル君が背負っていた背甲を手分けして運び終えると、クルたんがみんなの顔を見回したの。

「えーっと、これで全員集合だね?」
「全員集合には、あと二人足りませーん。ウィンダスから、呼んでこないと」

ふざけたかぼちゃんの返事に、クルたんがゴツンと痛そうなゲンコツを落したの。
かぼちゃんが 「イタイ~」 ってアタシの方にきたから、頭を撫でてあげたんだ。
そしたらぴよ君がまた、かぼちゃんとケンカを始めちゃった。

「コクトーさんは、よくウィンダスに残ったな。バルファルについて行くと言わなかったのか?」
「そういえばそうだな。この前までは、ちょっとそこまで行くのにも、鬱陶しいくらいにくっついて来たのに」
「ようやく一人前と認めてもらえたのか」
「だといいんだけど・・・」

バル君と話している梅兄さんに、うずらさんが 「おたくの秘蔵っ子のお嬢さんは、お留守番しているの? よく一緒に行くっていわなかったわね」 って言ったの。
サンちゃんが行くって言っても、梅兄さんがサンちゃんをベドーに連れて来るなんて、そんなことするわけないよね。
第一、梅兄さんのところのモグが、それを許すはずないもん。

「うちのサンラーは、聡明で聞き分けがいいからな」
「ぬけぬけと! 憎らしいっ! そんなこと言ってられるのも、今のうちよ! うちの子に限ってなんて思ってたら、そのうちイケメンのタルタル君と仲良くなって、梅ちゃんなんか捨てられちゃうんだから!」
「・・・・・・」

うずらさん、あの梅兄さんをムッとさせるなんて、さすがです。
そうしたらクルたんがトコトコと梅兄さんの側までやって来て・・・。

「梅がヤキモチ妬いて失踪しても、クルクは探してあげないからね?」
「・・・つれないな」
「だってクルク、梅が行きそうな場所って思いつかないモン」
「では、失踪する前にモグに行先を告げておこう」
「なるべく近場にしてね」
「口の院の屋上ではどうだ?」
「だったら探しに行ってあげる」
「よろしく頼む」

前から思っていたけど、梅兄さんとクルたんの会話って、どこまで本気なんだろうね。
そしたら、バル君がツッコミ入れて来たよ。

「失踪するの前提かよ! っていうか、この場合は探しに行くのはサンラーで、クルクじゃないだろ」
「クルクだっていいじゃん」
「フッ・・・バルファル、ヤキモチか?」
「だーれーがーだーよーっ!! そんなことより、用は済んだんだから帰ろうぜ。あんまり遅いと、爺やとサンラーも来ちまうぜ」

クルたんの戦利品をそれぞれ抱えると、クルたんが 「それじゃ~デジョンするから一列に並んで~」 って号令をかけたの。

「え? みんな呪符持って来てないのか?」
「バルは持ってるの?」
「そんなの当たり前じゃないか。なかったら指輪もあるし」
「へぇ~、デジョンの指輪なんてあるのね」
「うずらさん、そんなことも知らないのかよ」
「だってあたしには、必要ない物だもの」
「アンタが一番必要なんじゃないのか」
「バルちゃん、覚えておきなさいよ~」

バル君以外は誰も呪符を持っていなかったようで、アタシたちはクルたんにデジョンしてもらったのでした。


---*---*---*---*---*---

i_mog.gif
ご主人さまがベドーに行ってしまってから、サンラーさんはずっとソワソワしていたクポ。
だけどコクトーさんが来てくれたおかげで、少しは気が紛れたみたいクポ。

サンラーさんは、「きっとみなさん、とっても疲れて戻って来るでしょうから、お食事の用意をしておいてあげましょう」 って言って、コクトーさんと一緒にゴハンの用意をはじめたクポ。
モグは、サンラーさんの優しさと心遣いに、ホントーに感激しちゃったのクポ。
いっそのこと、このモグハのご主人さまはサンラーさんってことに登録し直しちゃおうかと思ってしまったほどクポよ。
そうしたらご主人さまを追い出して、モグはサンラーさんのお世話だけが出来るクポ。
・・・あ、それは良い考えかもしれないクポね。
ちょっと計画を考えてみるクポよ。

サンラーさんは、たくさんの野菜とコカトリスの肉を煮込んだシチューと、白身魚を使ったシチューの2種類を作っているクポ。

「クマさんはお魚の方が好きでしょうし、お兄ちゃんもお魚が好きなのです。うずらさんとチリさんは、この前お肉が好きって言っていたし、お野菜がたくさん入っている方がいいと思って」
「この豆は入れないのかね?」
「入れようと思ったんですけど・・・。梅先生は、お豆が好きではないのです。お疲れで帰っていらっしゃるから、今日くらいはお豆のないシチューにしようと思います」

モグは、大量の豆シチューにしちゃえばいいと思うクポ。
コクトーさんは、パンを作っていたクポ。
そうして出来上がったお料理を、サンラーさんはそれぞれのモグハに送ってあげていたクポ。

「モグさんたち、皆さんが戻ったら、すぐにお料理を温めてくださいね。それから、熱いお風呂の用意もお願いいたします」
「坊ちゃまとクルクは、またどこかで食べて帰って来てしまうかもしれんな」
「それでしたら、翌日のゴハンにしてもらいましょう。シチューなら、冷めても温め直せば食べられますもの」

なんて至れり尽くせりクポ~。
モグは一生サンラーさんについて行くクポ!
・・・モグもサンラーさんを見習えって、今だれが言ったクポ!?


---*---*---*---*---*---

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着いたのは、バス港のゲート横にあるクリスタルでした。
そういえばクリスタルの位置が変わった時に、うっかり登録しちゃったんだっけ。
港と言えば・・・。
跳ね橋を通って帰ろうなんて思わなければ、こんなことにはならなかったんだよな・・・。
あのミスラがその後どうしたのか気にはなりましたが、せっかくクマと仲直りをしたのに、また機嫌を損ねることはしたくないと、俺はクリスタルでモグハ横まで移動しようと思ったのです。
ところが・・・。

「あ、アンタ! アタイをたすけてくれたヒトだよね!」
「あ・・・」

あのミスラが、俺を見つけて寄って来たのです。
俺はつい、周りを見回してクマがいないか確かめてしまいました。
別に、やましいことなんかしていないのに。
関わりになるな! ともう一人の俺が叫んでいたけれど、やっぱり見過ごすことは出来ない性分なのかもしれません。

「あのさ、何かおかしな仕事をさせられてたりしてるんじゃないか?」
「おかしは、よくできたトキにくれるのニャ。アタイは、ジッケンのバイトをしてるンだヨ」
「いや、お菓子じゃなくて・・・。実験のバイト?」
「ウン。えーと、ジカンがどのくらいできいてくるトカ、いつメがさめるトカ」
「・・・まさか、その実験の手伝いで、箱に入れられてたのか?」
「急用が出来て出かけなくちゃならなくなってね。そのまま放って行くことが出来なかったから、とりあえず箱に入れておいたんだ。思ったよりも効き目が薄かったみたいだね」
「あ、かぼすサマだ」
「・・・か・・・・・・」

ベドーから戻って来たかぼすが、クリスタルの横に立っていました。
っていうか、かぼすの仕業だったのか!?

「おまっ・・・何やってるんだよ!?」
「研究には実験が必要でしょ? 働き口がないって言うから、バイトに雇ったの」
「もっとマシな仕事、いくらでもあるだろ!」
「なら、ぴよ君が面倒見てあげたら~?」
「何で俺が! 頼まれたって断る!!」

冗談じゃない。
そんなことしたら、今度こそ俺はクマに嫌われる。

「かぼすサマ、ジッケンは?」
「また今度ね。ボク、疲れてるんだ」
「おつかれサマでした~」

スタスタとかぼすは去って行き、俺とバイトのミスラが残されました。
俺も疲れたから帰ろう・・・。

「ぴよクン、バイトのおカネください」
「何で俺が払うんだよ!」
「でもアタイ、おカネもらわないと、おなかへって・・・」

キュゥ~ギュルギュルという音が、バイトのミスラから聞こえて来ました。
ホントにもう、いい加減にしてくれ。

「これでも売って、何か食べろ」

俺は持っていたクゥダフの背甲を、ミスラに渡しました。
これだから、お人好しって言われるのかもしれません。
これ以上かかわらないように、走ってモグハに向かう俺の背に、「ぴよクン、またネー!」 というミスラの声が追いかけて来ました。
冗談じゃない!
二度と会いたくない!
本当に、これっきり! 金輪際!!


---* おしまい *---



いつも遊びに来てくれてありがちょん(・▽・)
ポチッと押してくれたら嬉しいな♪












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【2015/11/22 23:59】 | * クルク一家
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