2度目のヴァナディール ソロ活動中の妄想屋クルクと仲間達。
2014.12.23 「シークレット」 のコメントにいただいた、コウさんの小説です。





今日は朝から快晴だった。ユファは朝食の後片付けを済ますと、リビングのテーブルの椅子に腰掛けて、好みのウィンダスティーをポットからカップに注ぐと、一息ついた。

ここはジュノ下層、冒険者コウの家だった。競売所から南西に少し行った所にある小さな一軒家で、ジュノの街自体がヘヴンズブリッジ上に建設されている事から、コウの家からも東側の窓からは、ジュノ海峡が見える。

ユファは朝食の時にコウから頼まれたことを考えていた。ちなみにコウは朝食後直ぐに、アトルガン皇国に用があるとの事で、旅立っていた。
頼まれ事とは、年末には宝くじを買う事を恒例にしているので、自分の代わりに買ってきて欲しいというものだ。つまりお使いである。この頼み自体には特に問題はない。問題は買う場所である。昨年コウの仲間が1等を当てたらしく、あやかって1等が出た売り場で買ってきて欲しいと頼まれたのである。売り場の場所はウィンダス港になる。

ユファは数ヶ月前に生家を飛び出し、ひょんなことからコウと知り合い、冒険の手伝いをする事になった。そういった訳で、生家のある国には行きたくなかった。つまりウィンダスには。
そんな思いを知ってか知らずか、コウは、「僕はギャンブルはやらないけど、宝くじだけは別だね〜。で、やっぱり買うからには当たって欲しいな〜。まあ当たらなくても、当たったらどうしようって考えるのが楽しいんだけどね。」
などと楽しそうに語り、ユファが断るタイミングを探している内に皇国に旅立ってしまった。ギルは預かっているので、クリスタルを使ってウィンダスに飛び、買って帰ってくるだけである。
ユファはテーブルの上のお菓子入れから、ジンジャークッキーを一つ取り、クッキーを齧りながら考えた。
(売り場は、ウィンダス側のクリスタルから歩いて数分の場所だった筈。買って直ぐ帰ってくれば問題ないよね。)
生家はユファを連れ戻したい筈で、生家の人間に見つかると厄介な事になる。使用人の中には腕の立つ者もいるのだ。
(考えてもしょうがないなー。引き受けた以上やるしかないか。)
ユファは茶器を片ずけ、出掛ける準備をした。

クリスタルを使い、淡い青色の光を抜けると、そこはウィンダスだった。
・・・だが、何かが違う。
「・・・こっ、ここ森の区じゃない!」とユファは叫んだ。行きたいのはウィンダス港なのである。クリスタルの周りにいた何人かの人々が、ユファを振り返る。
ユファは焦って、下を向き足早にクリスタルを後にした。
よく考えれば、1回間違えても、到着したクリスタルからもう一度目的地にワープすれば良かったのだが、焦ったユファは、それを思いつかなかった。
下を向いて、足早に歩き続けていると。不意に広場に出た。
ボミンゴ広場だ。広場の中心には噴水と、今は星芒祭の最中なので、巨大なクリスマスツリーが飾られている。
ウィンダス国内において、身を隠したいユファには、1番居てはいけない場所であるが、ツリーを見ると、自然に足が向いていた。
ツリーの周りには、魔法の雪が降り注いでいる。ユファは去年の星芒祭を思い出していた。ユファの父親は貿易商で、1代で富を築いた人物だ。更に事業を拡大したいと思った彼は、ウィンダスの有力者との結びつきを欲した。そこでユファを有力者の息子と縁組しようとしたのだ。
全くそんな事は望んでいなかったユファは、当時好意を寄せていた、生家の護衛隊長の男に連れて逃げるように頼んだのだった。だが待ち合わせのボミンゴ広場に来たのは、部下の男達だった。
生家に連れ戻されたユファは、数ヶ月軟禁状態になったが、隙をみてウィンダスを脱出して、現在に至る。

(やな事思い出しちゃったな・・・)
ユファはツリーをぼんやり眺めながら、1年前を思い出していた。
(あの時、サモンリタンが来てくれてたらな・・・)
そこまで考えた時、
「お嬢様!?」
と、後ろから大声で呼びかけられた。
ビクゥッ。驚いてユファが振り返ると、そこには見覚えのある、生家の使用人の男が立ち竦んでおり、目をまん丸にしてこちらを見ていた。
(ヤバイ)
ユファは、男と正反対の方へ、全力で走りだした。

どれだけ走っただろう。気がつくと何かにぶつかって、仰向けに倒れていた。
「あいたた・・・」ユファが息を切らしながら立ち上がると、ぶつかったのは初老のガルガだった。
「大丈夫かね。」ガルガはユファに話しかけた。ガルガとタルタルでは体格が違う。
吹き飛ばされたのは、ぶつかったユファの方で、ガルガには怪我はないようだった。
「す、すいません。」ユファは息を切らしながら謝った。
「物凄い勢いで走ってきたが、前を見ないと危ないぞ。どうかしたのかね。」
質問された事に全く気付かず、ユファは性急に尋ねた。
「ここっ。ここはどこですか?」
ガルガは面食らった様に、ユファを見つめ、やがて答えた。
「ウィンダス港じゃよ。」
「やった!」思わず喜びの声を上げるユファに、ガルガは重ねて尋ねた。
「どうかしたのかね?」
ユファは改めて、ガルガを見た。髪は真っ白になっていたが、姿勢はしっかりしている。声はずっしりと重いが、優しげな声色である。
「ごめんなさい。宝くじを買いに来たんですけど、道に迷っちゃって。」
ユファが答えると、ガルガは、
「それなら直ぐそこじゃよ。よければ案内してやろう。」と言った。
ユファはそれを聞いて躊躇した。落ち着いて周りを見れば、確かにウィンダス港である。売り場までの道も分かりそうだ。だが1人で行くより、連れがいた方が生家の人間に見つかりにくい気がする。
若干の罪悪感を覚えながら、ユファは答えた。
「お願いします。あ、あたしユファと言います。」
ガルガはにこりと笑って答えた。
「私はコクトーと言う。」

道すがら、コクトーは色々話しかけてきた。
自分は以前、冒険者をしていたが、引退してウィンダスへ戻って来た事。今は知り合いの倉庫番をしている事。優しげな声色と、ゆっくりとした話し方に安心感を覚え、ユファも自分の事を話した。今は冒険者見習いをしている事、相方がゲンを担いだので、ウィンダスまで宝くじを買いに来たこと。
ウィンダス出身である事と、生家に追われている事は伏せておいた。

やがて売り場へたどり着いた。売り子のモグにボナンザマーブルを5個売って貰う。
「当たるといいクポ〜」という声に見送られ、ユファ達は売り場を後にした。
「コクトーさん、どうもありがとう。ここからは1人で帰ります。」とユファは言った。
「そうか。無事に買えて何よりじゃ・・・」
コクトーが言い終わる前に横合いから声がかかった。
「お嬢様。ようやく見つけましたよ。」
見ると、生家の護衛団の男が3人立っていた。
(ここまで来て・・・)
ユファはじりじりと後ずさる。それを見越して、男達が2人を取り囲む。
「お探ししました。さあご実家へ戻りましょう。」
男の1人が口を開いた。間髪入れずにユファは叫んだ。
「お断りよっ!」
そして腰に手をやったが・・・剣は持って来ていなかった。
それを見た先程の男は、薄く笑いを浮かべて、「さあ」と促した。
黙って様子を見ていたコクトーだったが、ここで口を開いた。
「女と老人を脅すとは、男の風上にも置けぬな。見れば私兵の様子。お前達にこの様なこの様な事をする権利はないはずだが。」
巨躯のガルガに言われ、タルタルの男達はたじろいだが、コクトーが老齢である事と、丸腰である事から、無視をする事にしたようだ。無論男達は帯刀している。
膠着状態に陥った所に、ユファの後ろから声がした。
「爺や、なにしてるんだ?」
その場の全員が、護衛の主を見た。声の主は髪を後ろに束ねた、どことなく幼い感じがするタルタルだった。
コクトーが慌てた様に、叫んだ。
「ぼっ、坊っちゃま!危ないですから下がっていて下さい!」
コクトーの知り合いらしい。
男達もこれ以上、加勢が増えると厄介だと思ったらしい。揶揄する様な口調で、
「おい坊っちゃま。下がってろよ。」と言って、すらりと剣を抜いた。
坊っちゃまと呼ばれたタルタルは、
「オレにはバルファルという名前がある!バカにするな!」とまなじりを吊り上げて叫んだ。
「ナメんなよ!」再度言い、バルファルは、するすると剣を持った男に近づくと手刀で、男の手を打った。男が剣を取り落とすと、バルファルは叫んだ。
「爺や!早く!」
コクトーは正面のタルタルに体当たりをかますと、タルタルは堪らず吹き飛んだ。
「さあ、ユファさん急いで!」
コクトーに急かされたユファは、「はい!」と返事をし、3人は走りだしていた。

しばらく走った後、3人は足を止めた。コクトーとユファは肩で息をしている。コクトーは年齢の為、ユファは先程も全力で走ったせいだ。1人平気なバルファルが口を開いた。「なんだよ爺や、なにやってんだ?」
コクトーは息を整えると、言った。
「いや、爺にもよく分かりません。このお嬢さんが追われているようですが。」
「ふーん。」バルファルはユファをじっと見た。
ユファは慌てて、「ご、ごめんなさい。」と言い。かいつまんで事情を説明した。
「なるほど。政略結婚をさせられそうになったので、逃げたのだが、見つかってしまったと。」とコクトー。
「でも、そのコウってヤツ、バカじゃないの?アンタがウィンダスへ戻ってきたら、見つかるにきまってんじゃん。」
とバルファルが言った。
「いえ・・・コウには家を出ることになった、詳しい事情は話してないので・・・。」
とユファが答えた。
「ふーん。」バルファルは不満そうだ。
「まあ、とにかく。クリスタルはすぐそこですので、ジュノに帰れば取り敢えずは、追っ手は巻けますな。」
とコクトーは言った。
「御二人にはご迷惑をおかけして、大変申し訳ありません。」とユファは心から謝った。
「まあいいや。剣さえあれば、さっきの奴らなんてオレがちょちょいと・・・」
「坊っちゃま。」コクトーがバルファルを遮って言った。
「ユファさん。気を付けていきなされ。今度ウィンダスへ来る時は、気を付けて来るんですぞ。」
ユファが再度礼を言おうとした時、逃げてきた方向から、複数の足音が響いた。
「!」ユファは一瞬後ろにあるクリスタルに飛び込もうかと思った。だが自分だけ逃げては、残った2人に迷惑をかけてしまう。
その躊躇が命とりになった。迷っている間に再び3人は取り囲まれてしまった。そしてユファの正面に立ったのは・・・
「サモン!?」ユファが呟く様に言った。1年前にユファとの約束を違えた男だった。
サモンリタンは口を開いた。
「お嬢様、お久しぶりでございます。さあ、お父上がお待ちでございます。お屋敷にお戻りになられますよう。」
サモンリタンは銀色の髪を持つタルタルで、僅かに細い青い色の眼が、どことなく冷たい印象を与える。帯刀をし、刺繍入りの上着を着ていた。
他に帯刀した男達が5人いる。内2人がクリスタルの前に立ち塞がっており、クリスタルを使用する事はできない。おまけにユファ達3人は丸腰だ。
(ここまでかなー)
ユファは観念した。だが1つだけ確かめたかった。
「サモン。貴方は1年前に私をウィンダスから連れ出してくれると約束してくれました。何故破ったの?」ユファの口調が昔の口調に戻っていた。
サモンリタンは答えた。
「元々私は約束を守るつもりはありませんでした。お父上に「家から連れ出す約束をして、それが破られれば気落ちしていう事を聞くだろう」と命令されて、それに従ったまでです。」
「何てこと・・・」父親もグルだったのだ。
がっくりとしたユファに向かって、サモンは言った。
「さあ、お嬢様も世間と言うものが分かったでしょう。大人しくお屋敷に帰りなさい。」
「おい!そんな事が通るか!オレが相手をしてやる!」バルファルが叫んで、サモンと睨み合いになる。
2人に迷惑はかけられない。とユファは思った。宝くじを買いに来ただけだったのに、とんだことになったものだ。
「分かったわ。2人には・・・」
ユファが言いかけた時、クリスタルが淡く光った、同時に立ち塞がっていた、2人の男達が崩れ落ちる。現れたのは・・・
「コウ!」ユファは叫んだ。安堵で身体の力が抜ける。
「ごめんごめん。シグナルパールで様子は聞いてたんだけど、来るのが遅くなった。」
とコウは言った。
「遅いよ!」とユファは言った。金切声に近かった。
「いや〜。皇国でサラヒム・センチネルっていう会社に入る事になったんだけど、ここの社長が無茶苦茶で・・・」
「コウ・・・」ユファは静かに言った。
コウは何かを察したらしく、手短に言った。
「悪い。え〜とサモンさんだっけ。ユファは1月前にウィンダスで成人と認められる年齢に達している。実の父親の命令とはいえ、強制的に連れ帰る事はできんよ。」
「なんだと・・・」とサモンが唸った。
「なるほど。連邦評議会に訴えても言い訳だな。」
コクトーが納得したように頷いた。
サモンは歯を噛み、叫んだ。
「大体、貴様はなんだ!何の関係がある!」
ユファはじっとコウを見た。
「現在のパートナーだ。関係はあるさ。」
とコウは言った。
サモンは、怒髪天をつく程の怒りを込めて、「手ぶらでは帰れん。それでは貴様、お嬢様を賭けて勝負をしろ!私が負けたら引き上げてやる!」
と言った。
コウはにやりと笑い。
「いや、ユファ自身に自分を賭けて勝負してもらおう。いいかな?」
と言った。
「ぇえ〜!そこはコウがやってくれるんじゃ・・・。」
叫ぶユファを尻目に、サモンは頷いた。
「いいだろう。二言はないな?」
「ただ・・」とコウが言った。
「何だ」
「ユファは剣を持ってない。僕の剣を貸してやってもいいか?」
「そんな事か、いいだろう。」サモンは自信たっぷりに頷いた。
横ではバルファルが何か言いたげに、コウの剣を見ていた。

勝負は呆気なくついた。自信なさげに剣を構えるユファに対して、サモンは無造作に剣を打ち込んだ。だがユファはそれに軽々と躱すと、サモンの剣に自分の剣を叩きつけたのである。
サモンの剣は彼方に吹っ飛び、そこで勝負は終了だった。
サモン達が罵詈雑言を吐きながら引き上げた後、コウ達4人が残された。
ユファが「夢みたい。サモンはあたしの剣の師匠だったのよ。今まで剣がかすったこともなかったのに・・・」
と言った。
「その剣だろ。」とバルファルが言った。
「うむ。何かのオーラを感じますな。」とコクトー。
「こいつは、アレンドシフルーレと言って、ヴェルク族という蛮族の王が持っていた剣さ。現存する名剣の内の1本だな。」
とコウが答えた。
バルファルが尋ねた。
「そういう剣っていうのは、使い手を選ぶんじゃないのか?少なくとも、オレやこの子じゃ無理だ。」
「そうだね。まあ、魔法で調整してあるんだよ。」とコウが答える。
「じゃあ、剣のお陰か・・・。」とユファが言った。
「いや。」コウはユファの方を見て言った。
「確かに1撃で勝てたのは、剣の所為かも知れない。だが普通の剣でも恐らく、あの男に勝てただろう。この剣は保険さ。君はもうちょっと自分に自信を持っていい。」
「うん。ありがとう。御二人もありがとうございました。」
とユファは全員に礼を言った。
「あ〜あ、オレもクルたんに勝てるようになりたいなー。」
とバルファルが呟いた。
「クルたんって誰ですか?」
話し込み始める2人を尻目に、コクトーはコウに小声で尋ねた。
「コウ殿、剣の事だが・・・調整と言っても非常に手間がかかるはず。今回の件、貴殿はユファさんに経験を積ませる為に?」
コウは話し込んでいる2人を横目で見て、やはり小声で答えた。
「そうですね。御二人を巻き込んだのは、大変申し訳ありませんでしたが、ユファをウィンダスに行かせたら、大体こんな感じになるかなあとは思ってました。まあ、ウィンダスの土を一生踏まない訳にもいかないので・・・。」
コクトーは、はっはっはと笑った。それは何処か晴れ晴れとした笑いだった。
その笑い声で、話し込んでいた2人は顔を上げた。
「じゃあ、ユファ、そろそろ帰るよ。」
コウがユファに言った。
「うん。」
「ユファ、またウィンダスへ来いよ。オレが剣を教えてやるよ。」
「ありがとう。バルファルさん。」
「バルでいいぜ。」
「ありがとう。バル。」

4人は最後の挨拶を交わすと、家路についた。





第1弾は、らぶりぃさんのブログ 「ひとりで出来るかな?」
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【2014/12/26 01:01】 | # コウさんの小説
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