2度目のヴァナディール ソロ活動中の妄想屋クルクと仲間達。
Klu4418.jpg

i_uzu.gif
こんにちは、うずらよ。

梅ちゃんが 「近日中に、アトルガンへ行く」 って言った時、あたしは 「何しに行くの?」 って普通に聞いたの。
それはもう本当に、「ロンフォールに行く」 と言われた時と同じくらいに何も考えず。
「ちょっとした野暮用だ」
そう答えた梅ちゃんに、あたしは少し笑いながら顔を見て、それから何を言おうとしたのかしら。
何か変だなって、違和感を感じたの。
だからもう一度、「何しに行くの?」 って口に出して言ってみた。
それに梅ちゃんは、答えなかった。

梅ちゃんは重度の船酔い体質で、よほどのことがない限り船には乗らない。
昔カザムへ行って死にそうになってから、絶対に乗らないと決めたんですって。
そんな梅ちゃんが自分の意志で飛空艇に乗ったのは、サンドリアからジュノ経由でウィンダスへ密航した時だけ。
機船に乗ったのは、サンちゃんを連れてウィンダスからサンドリアへ来た時だけ。
あとは、あたしが無理矢理・・・ね。
だから当然アトルガンへは行ったことがないはずだし、そうあたしは聞いていた。
その梅ちゃんが、「ちょっとした野暮用」 で船に乗るの?
えぇそうね、言葉通りじゃないことくらい、考えればすぐにわかることじゃない。
あたしがシグナルパールを鳴らしたのは、翌朝だった。

「あの、ご主人さま・・・」
モグがおずおずと、小さな両手をあたしの目の前で開いて見せた。
そこには、微かな信号音を発しているシグナルパールが乗っていた。
「え・・・?」
「預かったクポ」
「・・・なんで・・・?」
「梅さんからご主人さまに言伝クポ。『戻るまで預かっていてほしい』 クポ」
「なんで!?」
近日中って言ったじゃない。
そりゃ近日中かもしれないけど、普通はそう言わないわ。
それに、どうしてシグナルパールを?
あたしはモグの手からシグナルパールを奪うように掴み、モグハを飛び出した。

わからなかった。
どうして? とか、なんで? って、頭の中はそればっかりで、気持ちだけが焦っていた。
ウィンダスのモグハの階段を駆け上り、梅ちゃんのモグハに向かう。
両手で思い切りドアを叩きながら 「梅ちゃんいる!?」 って叫ぶと、すぐにドアが開いた。
あたしはモグを押し退けて中へ入ると、目を丸くしているサンちゃんに 「梅ちゃんは?」 って訊ねた。
「梅先生でしたら、昨日アトルガンへお出かけになりました」
「昨日・・・」
それじゃあたしと会った後、そのままアトルガンへ発ったってこと?
あたしはモグを振り返り、「いつ戻るの!?」 と訊いた。
するとモグは憎らしいくらいフワフワとして、「聞いてないクポ」 って。
「多分、しばらく戻らないクポ。だからモグは、サンラーさんとお留守番クポ」
そう言ってクルクル回ってから、モグは止まって再び口を開いた。
「でも、このままご主人さまが戻らなければ、モグのご主人さまはサンラーさんになるクポ」
「モグさん! 縁起でもないこと言わないでください! 梅先生はちょっとご用があってお出かけしただけですっ!」
頬を膨らませたサンちゃんにモグは 「冗談クポ」 と言ったけれど、視線はずっとあたしに向けられていた。
何か知っているけれど言わない、そんな顔。
「ど、どうして・・・モグハを移さないの?」
乱れそうになる呼吸を整えながらあたしが訊ねると、モグは当然のように 「サンラーさんと一緒にいるように、ご主人さまの命令クポ」 と答えた。
そしてモグは、「うずらさん」 とあたしに呼びかけてから、「アトルガンには多分、モモさんも行っているはずクポ」 と言った。
その言葉で、あたしにはわかった。
モグが言った言葉は、冗談なんかじゃないんだって。
ずっと考えないようにしていたことが、起こったんだって。

サンちゃんを心配させないように、あたしは大きく深呼吸してから 「急に来てごめんね~」 と言ってニコッと笑い、何でもないみたいに玄関に向かった。
サンちゃんがお茶に誘ってくれたけど、あたしは 「また今度」 ってモグハを出た。
その足で、クルたんのモグハに向かう。

クルたんのモグハに着くと、まるで待っていたかのようにドアが開いた。
「来ると思った」
「・・・クルたん・・・」
「ど~ぞ~」
トコトコと前を歩くクルたんに付いて部屋に入ると、模様替えをしたらしく、前に来た時と家具の配置が変わっていた。
でも相変わらず、物で溢れていたわ。
ヒョイと椅子に腰かけて、あたしにも座るように手で示し、それからクルたんは 「梅のことでしょ?」 と言った。
「クルたんは、梅ちゃんがアトルガンに行くことを知ってたの?」
「だってクルク、梅のボスだもん」
モグに 「お茶入れて~」 と言った後、クルたんがあたしを見て言った。
「梅ね、クルクの倉庫番辞めるって言ったの」
「え・・・どうして・・・」
「ん? うずらはわかってるんじゃないの?」
「・・・・・・」
「もちろんクルクは、ダメって言ったよ」
モグが運んで来てくれた冷たいお茶を一口飲んでから、クルたんが説明をしてくれた。
「この前さ、梅がももんがと来たんだよ」
二人は騎士団時代の落とし前をつけたいと、そのためにアトルガンへ行くとクルたんに言ったそう。

梅ちゃんにとっては部下であり、モモちゃんにとっては同僚だったヴォルフィは、家のために仲間を裏切り、あまつさえ殺人まで犯していた。
「ももんがはいきさつを話さなかったんだけど、ボルビーの家を潰して乗っ取ろうとしてた親玉がわかったって言ってたの」
けれどそれは、氷山のほんの一角の更に一欠けらに過ぎず、背景にはもっと大きな組織が目的のために動いていて、その黒幕には一介の冒険者では手出しが出来ない高位の者が隠れているらしく、古の東王派が絡んでいるとかいないとか。
そこらへんはあたしにはわからないし、クルたんも 「よくわかんない」 って言っていた。
だとしても、仲間を失った者達にしてみれば、些細な事件で済ますことなど出来るはずもないわよね。
それに、梅ちゃんは普段はあんなだけど、ずっと自責し続けていることをあたしは知っている。
仲間を守れなかったこと、裏切りを見抜けずにいたこと、死なせてしまったこと・・・。
それはきっと、モモちゃんも同じだと思うわ。
多分、護衛の仕事で各地を回りながら、それとなく探っていたんじゃないかってクルたんは言った。
それから、梅ちゃんにも情報屋がいるみたいだって。
それはあたしも、そんな気がしていたわ。
最近、やけに梅ちゃんが外出するようになったもの。
モモちゃんが仕事の合間にやって来ては梅ちゃんのモグハに入り浸っているのも、サンちゃん目当てと、食事をたかるのと、そして情報の交換だったんじゃないかしら。
今思えば思い当たることがたくさんあるわ。
そうよ、クルたんの言う通り、あたしは頭のどこかでわかっていたんだわ。

「その親玉っていうのが、アトルガンにいるの?」
「そうらしいね」
「それで、二人でアトルガンに行ったの?」
「ももんがは先に行ってるらしいから、一緒じゃないよ」
「そういうことじゃなくて! ねぇ、それって危険なんじゃないの!? 二人でどうにかなるもんなの!?」
危険に決まってる。
親玉がいるなら、子分だっているでしょうよ。
それに、梅ちゃんの素性がバレる可能性だってあるわ。
そうなった時にクルたんに迷惑がかからないように、倉庫番を辞めるって言ったんじゃないの?
だから、モグハの移動もさせず、まるで遺言みたいなことをモグに言い遺して、シグナルパールを置いて、あたしを置いて行ったんじゃないの?
あ・・・そっか・・・。
あたし・・・梅ちゃんに置いて行かれちゃったんだ・・・。
手の中にある、それまでずっと握り締めていたシグナルパールを見下ろして、あたしは悔しくて唇を噛んだ。

「バルが一緒に行ったよ」
「え・・・?」
曇った視界の中、クルたんがあたしを見て言ったの。
「バルはちっさい頃、ウィンダスからアトルガンに行って、あっちで暮らしてたんだよ」
「・・・バルちゃんが?」
「バルはモグハをあっちに移動させるって言ってたよ。きっと梅は、バルのモグハに寝泊まりするはず。バルのモグは、梅んとこのモグみたいに口うるさくないからね~」
アハハって気楽そうな顔をして笑うクルたんを見ていると、少しづつ気持ちが落ち着いて来たわ。
それにバルちゃんが一緒なら、きっと大丈夫な気がするの。
あたしたちが絶対的に信頼しているクルたんは、なんだかんだ言いつつバルちゃんを絶対的に信頼している。
それに梅ちゃんとバルちゃんって、気が合うみたいだもの。

それからクルたんはお茶を飲み干すと、「クルクはこれから、アトルガンに行くんだよ」 と言ったの。
「クジラが見たいから、船で行くんだ~」
クルたんはあたしが来るってわかってたから出発を遅らせたと言って、「エスパークルたん」 って自分をほめていたわ。
「ねえ、あたしも連れてって!」
クルたんがこれから行くなら、あたしも一緒にアトルガンに行くわ!
行ったところで、あたしに何が出来るってわけじゃないけど、でも・・・。
そしたらクルたんは両腕を交差させて、「ブブーッ」 って唇を尖らせた。
「ダ~メ。それに、うずらは渡航免状持ってないでしょ?」
アトルガン行きの渡航免状は、裏で天晶堂が発行してるから、今のあたしじゃもらえないってクルたんが首を振った。
そう・・・。
わかったわ。
あたしはクルたんに、くれぐれも梅ちゃんをお願いねって頼んで、モグハを出た。

・・・天晶堂ね。
あたしはクリスタルのホームポイントに飛び込んだ。
行き先は、二度と戻らないはずだった、バストゥーク。
人目に付かないように、すぐにモグハのゲートをくぐり、ぴよのモグハへ向かう。
ノックもしないでドアを開けようとガタガタやっていたら、「いったい誰クポ!?」 ってモグが怒って出て来たわ。
「ぴよはいる!?」
「うずらさんクポ!?」
「アトルガン行きの渡航免状がほしいの。天晶堂が仕切っているんでしょ? だったらあんた、手に入れられるわよね?」
驚いているモグを無視して中へ入ると、あたしは何の前触れもなく要件を言った。
ぴよはテーブル上のカップに手を伸ばしながら、「無理」 と言ってあたしを見た。
「アトルガン行きの渡航免状は、本店に行かないと手に入れられないんだ」
理由も聞かず、やけに冷静に答えるぴよに、あたしは腹が立ったわ。
「だったら行ってよ!」 と言うと、「俺、今バスから出られないんだ」 と返って来た。
眉を寄せたあたしに、ぴよは肩を竦めて苦笑した。
「ゲオルが死んだよ。釣り人がグスタの岸壁で、刺し傷のある死体を釣っちゃったんだ」
「え・・・」
「あいつ、バスに戻って来てたんだよ。それで、昔自分を銃士隊に売った奴に礼をするとか、酒場で息巻いてたらしい」
「それでぴよが疑われてるの?」
「いや、疑われてるってほどじゃないけど。でも、しばらく大人しくしてようかなって」
「そう・・・」

ゲオルという男は小悪党で、親のいない子供達を集めて、盗みをさせていたの。
まだ子供の頃、治安は今ほどよくなくて、あたしは盗みの何が悪いのかさえ考えなかった。
それほど飢えていたし、あの頃は体が弱かった弟を守らなくちゃって思っていたから。
あたしは髪も短くて男の子みたいだったし、すばしっこくて盗みも上手かった。
だけど一度、うっかり銃士隊の懐に手を入れちゃって、捕まったことがあったの。
その時は厳重に注意されて、食べ物を与えられたわ。
それがゲオルに知られて、あたしは体中にアザが出来るほど殴られた。
で、つい 「アイツを殺してやる」 ってぴよに言っちゃったの。
もちろん、そんなこと出来っこない。
だけどぴよは、あたしに殺しをさせないために、アイツを罠にかけて銃士隊に捕まえさせた。
子供の罠にかかるような頭の悪いヤツだったからね、あたしとぴよの見分けもつかなかったのよ。
銃士隊に連行されながら、ぴよではなくあたしを睨んでいたっけ。
物凄い目つきでね、「覚えとけ」 って叫んでいたわ。
それが、あたしがバスに戻らない理由の一つではあった。
そして、ぴよがバスに残った理由でもある。
だけど・・・そう、死んだのね・・・よかったわ。

「それはそうと、アネキはいつから男を追う女になったんだ?」
「なんですって!?」
「アネキがアトルガンに行ったら、梅兄は気が散って仕方ないと思うけどな」
「・・・あんた、知ってるの?」
「それにアネキが行ったって、足手まといにしかならないよ」
「・・・・・・まさか・・・あんたが梅ちゃんの情報屋じゃないでしょうね!?」
あたしの問いに、ぴよは 「さぁ? 何のこと?」 と口角を上げて笑った。
しらばっくれて!
だけど、渡航免状が手に入らなければ、どうすることも出来ないわ。
密航ってことも考えたけど、バレたらクルたんに迷惑がかかるし、そしたらあたしも倉庫番を辞めなくちゃってことになっちゃうわね。
チリちゃんはアトルガンにいたこともあるから、持ってないかしら?
それをぴよに細工してもらえば・・・。
あぁ、でも、チリちゃんを心配させることは出来ないわよね。

あたしが悶々と考え込んでいると、テーブルに頬杖をついたぴよが 「なぁ」 って声をかけてきたの。
「クルたんとバル君が一緒なんだろ? それにシグナルパールがあるんだから、大人しくこっちで待ってればいいじゃないか」
「梅ちゃんのシグナルパールなら、ここにあるわよ」
あたしが手のひらを広げて見せると、ぴよは 「はは~ん、うずらは捨てられたんだな」 ってニヤニヤ笑うの。
ふっざけんじゃないわ!
そんなこと、あってたまるもんですか!
あたしは捨てる女で、捨てられる女なんかじゃないわよ!
「ちょっと、アトルガン行きって、何時に出航よ?」
「これからだと、正午だよ」
壁にかかっている時計を見ると、もう1時間もないじゃない!
踵を返したあたしに、ぴよが 「無理だって!」 と声をあげる。
「クルたんの見送りよ!」

マウラのクリスタルから飛び出すと、機船が停泊しているのが見えた。
あたしは船着き場へ走り、大声でクルたんを呼んだ。
すると、ヒョイっとクルたんが船から降りて来た。
「どしたの?」
乗り場の柵越しに、あたしは握った手を差し出した。
「これ、梅ちゃんに渡して。あたしからは、絶対に呼ばないわ。だから・・・」
「ん。お守りに持ってな~って、言っておくね」
クルたんの小さな手のひらに、あたしはシグナルパールを乗せた。
「それと、たまには連絡してあげなねって、言っておこうか?」
「あら、そんなのいいわよ。あたしはステキな人を見つけて、デートを楽しんでるから!」
「アハハ、じゃあ、そう伝えておく」
それからクルたんは、「あ、そうだ」 って思い出したように 「ぴよに伝言」 と言った。
「ももんがが、『私は何も見ていない』 って伝えてくれって。そう言えばぴよはわかるはずだってさ」
「・・・伝えておくわ」
間もなく出航のアナウンスが流れ、クルたんは走って船に乗り込んだ。

ゆっくりと離岸する機船の甲板に、クルたんが姿を現した。
「お留守番、よろしくね~!」
ぴょんぴょん跳ねて手を振るクルたんに、あたしも手を振り返しながら 「早く帰ってきてねーっ!」 って叫んだ。
すると・・・。
「伝えておく~!」
もう!
クルたんてば、それは余計な返事だわ!
だからあたしは、聞こえるかどうかわからないけど・・・。
「あんまり遅いと、捨てちゃうわよーって言っといて!!」
クルたんに言伝を託した。






いつも遊びに来てくれてありがちょん(・▽・)
ポチッと押してくれたら嬉しいな♪



関連記事
スポンサーサイト

【2017/08/27 23:59】 | * クルク一家
トラックバック(0) |
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿
URL:

Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック