2度目のヴァナディール ソロ活動中の妄想屋クルクと仲間達。
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私はモモンジーナだ。
呼びにくければ、モモでいい。

先日、サンドリアでヨックと会った。
ヨックはタルタルの男で、一応冒険者だ。
私がヨックと知り合ったきっかけは、ロンフォールのミミズだった。
冒険者になりたてのヨックは、ミミズ相手に苦戦していた。
ヨックの剣を振るうフォームはひどく、見かねた私が剣の持ち方や踏み込み方などを指南してやったのがきっかけだ。
ヨックは、よく言えば人を疑うことを知らない、素直で純真な子だった。
悪く言えば、「どんくさい」 の一言に尽きる。
そのヨックと、モグハウス前でバッタリと会ったのだ。

私は 『獅子の泉』 で寝起きの一杯を飲もうとモグハを出た所で、モグハに戻って来たタルタルとぶつかりそうになった。
「すまない」 「ごめんなさい」 とお互い譲り合い、顔を見ればそれがヨックだったというわけだ。
だが、「久しぶりですね」 と私を見上げたヨックの顔がげっそりとしていて、私はビックリしてしまった。
どうしたのかと聞くと、このところ体調が悪いのだとヨックが言う。
「心配はいりませんよ」 と笑う頬にも力はなく、屈んで顔をよく見れば、目の下にはクマも出来ている。
じゃあ、と行こうとするヨックの足取りがヨロヨロしていて、私は飲みに行くのを取り止めて、ヨックをモグハへ送ることにした。

備え付けのガレーキッチンと、簡素なベッド。
ヨックのモグハには、それだけしか家具がなかった。
自他共に認めるドケチの私ですら、テーブルやイスくらいは持っているというのに。
「ずいぶんとび・・・ストイックな生活をしているんだな」
貧乏くさいという言葉を飲み込んで、私はガランとした部屋を見回した。
「お金がなくって、全部売ってしまったんです」
ヨックはそう言いながら、肩に掛けていた重そうなカバンを床に下ろした。
するとモグが、カバンに詰め込まれていた小瓶を取り出しながら、「クポォ」 とため息をついた。
突然、ヨックは 「ぁうっ!」 と声を出し、お腹を押さえながら 「ちょっとトイレに・・・」 と言って、奥へ駆け込んでしまった。

「ねぇ、ヨックはどうしたの?」
ただ事ではないヨックの様子に、私はモグに尋ねた。
モグはカバンの中から取り出した小瓶を一つ、私の足元に置いた。
「きっと、このポーションのせいクポ。このポーションを使うようになってから、ご主人様のお腹はピーピーになってしまったクポ」
「ポーション?」
私は床に腰を下ろし、床に置かれた小瓶を手に取って見た。
ビンのラベルには 『超高級ポーション』 と、手書きのラベルが貼ってある。
少し緑がかった濁った液体に、キラキラとしたものが混じっている。
一般に出回っているポーションとは、少し違っていた。
「天の塔の聖水で作った、特別なポーションらしいクポ」
「コレ、どうしたんだ?」
「アイテム屋さんで買ったらしいクポ。でもこのポーションには、本来の効能が全くないクポ。絶対におかしいクポ。モグは何度もそう言っているのに、ご主人様は特別なポーションだって信じ切っているクポ。このままじゃ、ご主人様が死んじゃうクポ」
助けてほしいクポと懇願された私は、試しに手の中にある特別なポーションとやらを飲んでみることにした。

栓を開けて匂いを嗅いでみると、生臭いような臭いがした。
少し口に含むと、鼻から腐臭が抜けて行く。
私は立ち上がり、キッチンの流しに吐き出した。
この味を、私は知っている。
「だ、大丈夫クポ?」
モグが私の顔を覗き込んでいる。
私はうがいをして頷くと、小瓶を自分のカバンにしまった。
こんなものを飲んでいたら、そりゃ腹だって壊すだろう。
そして飲み続けていたら、モグの言う通り死んでしまう。
「ヨックは、なんでこんなものを買ってくるんだ?」
「売りつけられるクポ。無理やりカバンに押し込まれて、代金を請求されるらしいクポ。お金がないと、持っているアイテムや装備や武器を持って行っちゃうクポ」
ヨックはいらないと言うが、相手に押し切られてしまうらしい。
家具も売り尽くして無一文になってしまい、ギルを稼ぐために狩りに出て、そこでポーションを飲んでいたのだろう。
狩りで貯まったギルをまた奪われ、ポーションを飲み、腹を壊して・・・間違いなく、これは死ぬな。

私が 「どこのアイテム屋だ?」 と聞くと、モグはタルタルの男が売り歩いていると言う。
やはりそうか、と私はひとりごちた。
「これはポーションなんかじゃないよ。これ以上飲み続けたら、本当に死ぬかもしれない」
「ど、どうしたらいいクポ?」
「とりあえず、ここにある超高級ポーションとやらは、全部処分した方がいいね」
「そうするクポ」
「それから、薬と何か食べ物を・・・」
キッチンに目を向けたが、食料らしきものは見当たらない。
「お金がないから、薬も食べ物も買えないクポ」
「そうか・・・」
といって、私が買ってやるというのは、ちょっと・・・なぁ。
「とにかく、キレイな水以外飲ませるんじゃないよ。薬と食べ物は、私が調達してきてやるよ」
「ありがとうございますクポ」

トイレにこもったまま、ヨックは出て来ない。
サンドリアにいる知り合いと考えて、すぐに浮かんだのはうずらとチリだ。
どっちにしようか考えた末、私はチリのモグハを訪ねることにした。
彼女なら貸し借りなしで、弱っている者を放ってはおけないだろうと思ったからだ。
そして案の定、友人が腹を壊して死にそうだと相談に来た私に、自分に出来ることなら何でも手伝うと言ってくれた。
「ミルク粥を作ってさしあげますわ。それから、お腹のお薬も必要ですわね」
「悪いね、助かるよ。感謝する」
礼を言うだけならタダである。
私のケチ根性など気づきもせず、チリは女神のように微笑んだ。


あれは、私が神殿騎士団の特別隊に配属されてすぐの頃だ。
隊長からもらったポーションを飲んで、えらい目に遭ったことがある。
スリを追い掛けて捕り押さえた後だったし、喉が乾いていたこともあり、私はそれを一気に飲みほしてしまったのだ。
たいした量ではなかったが、その直後、口の中に広がった腐敗臭たるや、想像を絶するものだった。
胃から込み上げてくるものを必死に堪えたのは、その前に食べた昼飯が勿体無かったからに他ならない。
すぐに隊長に文句を言いに行くと、逆にバカかと言われてしまった。
「冒険者に扮して、これと同じものを売っている者を捕まえろと言ったのに、飲んでどうする」
その日の朝私は、時間をかけて清書した書類を隊長に提出したのだが、それを一瞥しただけで字が汚いと言われ、ショックと腹立ちでイライラしていたため、話をよく聞いていなかったのだ。
神殿の聖水で作った特別製のポーションだという物を、冒険者相手に高額で売り歩いているタルタルの商人がいるという。
私が受け取ったポーションは、被害者からの証拠品であり、別に私にくれたわけではなかったのだ。
そしてその中身はポーションなどではなく、腐った水だった。
悪質極まりない犯罪に、私たちは犯人を捜した。
だが結局、私が三日三晩腹痛と闘う羽目になっただけで、犯人は捕まらなかったのだ。

あれから何年経っただろうか?
再びサンドリアに現れたのならば、今度こそ捕まえてやろうと私は鼻息を荒くした。
あの時の犯人の情報をもう一度詳しく聞くために、私は隊長に会いに行くことにした。


ウィンダスにある隊長のモグハを訪ねると、残念なことにサンラーはいなかった。
用があるのは隊長だが、会いたいのはサンラーなのだ。
どこへ行ったのかとモグに聞くと、目の院に本を借りに出掛けていると言う。
仕方がないので、サンラーが戻るのを待つ間に、私は隊長から話を聞くことにした。

隊長はテーブルに頬杖をついて、手にしているフォークで皿の上の豆を転がしていた。
目の前に腰を下ろした私を不機嫌そうな目つきでチラリと見ただけで、何をしているのか聞いても答えない。
「サンラーさんに叱られたクポ」
代わりにモグが教えてくれた。
「いつもいつも豆を残しているから、きちんと食べ終わるまで席を立ったらダメって言われているクポ」
隊長は、豆が嫌いだ。
理由は 「なんとなく」 だと言っていた。
なんとなく嫌いなだけで食べ物を残すなど、食うことに困ったことのない坊ちゃん育ちめ!
おまけに、サンラーに叱られるなど、羨ましすぎるっ!
私も叱られたい!
サンラーに叱ってもらうには、何をすればいいだろうか?
おだんごを突っついてみるか?
それとも、ローブを捲ってみるか?
だが、そんなことをして嫌われないだろうか?
叱られたいが、嫌われたくはない。
クソッ、どうすればいいんだッ!?

「何の用だ?」
「は?・・・あぁ」
一瞬ここへ来た目的を忘れた私だが、「これを見てくれ」 とテーブルの上に 『超高級ポーション』 とラベルが貼られたビンを置いた。
「見覚えない?」
「これがどうした?」
興味なさそうに豆を転がしている隊長に、私は友人が被害に遭ったと話をした。
「同じ犯人だと思うの。あの時の犯人の情報、知っていることを教えてほしい」
私が言うと、隊長は 「情報?」 と顔を上げた。
そして、思い出すように視線を宙に彷徨わせた後、豆の乗った皿を私の方へと押しやった。
教えて欲しければ、食えということか。
「ったく、豆の何が嫌だっていうの」
私は腰を浮かせて隊長の手からフォークを引ったくり、皿を持って口に当てると、掻き込むように豆を頬張った。
柔らかく煮てある豆は、程よい塩加減で美味かった。
「クポーッ! ご主人さまは、ズルをしたクポ! サンラーさんに言いつけるクポ!」
「俺のせいじゃない。こいつが勝手に食ったんだ」
「なに見え透いたウソを言ってるクポ! モモさんも、食べるならテーブルマナーを守るクポ! 行儀が悪いクポ!」
お代わりはないか聞いてみようと思ったが、モグがうるさく説教を始めたので諦めた。
何だって隊長のところのモグは、こんなにガミガミと口やかましいのだろう。
小言を言い続けるモグを残し、隊長と私はモグハを出た。

「で、情報を聞きたいんだが」
水の区へ出る階段を降りた所で、私は足を止めて隊長を見た。
すると隊長は 「あぁ」 と顎を上げて、「タルタルの男だ」 とだけ言う。
「そのくらいは知っている」
「以上だ」
「・・・は?」
「それしかわからんから、犯人が接触してくるように、冒険者を装えと言ったんだ」
「他に、何か入手した情報はないの?」
「あったら言っている。極秘にする意味がわからん」
つまり、手掛かりなど何もないってことか。
「チッ! 無駄足だった」
私が舌打ちすると、隊長は腕組みをした姿勢で私を見下ろした。
「サンラーの豆が食えたんだから、ありがたく思え」
「私が食ってやったんだから、ありがたく思え」

こうなったらヨックを囮にして、再び偽ポーション屋が現れた所を捕まえるしかない。
私はあの時の恨みを、忘れてはいないのだ!
あのポーションを飲んだせいで、私は腹痛を起こした。
おかげで、隊長のおごりだという飲み会に行けなかったのだ。
タダで飲み食いできる機会を、一度失ったんだ。
必ず捕まえて、騎士団に引き渡してやる!

と、その時、バタバタと慌ただしい足音が聞こえた。
顔を向けると、1人のタルタルが走って来る所だった。
そして階段の下に立っている私に気が付き、両手をブンブンと振り回して近づいて来た。
「おお、君は護衛屋のモモ君じゃないか。いいところで会った!」
そのタルタルは、私が何度かラバオで護衛の依頼を受けたことのある客だった。
「オットーさん、慌ててどうしたの?」
「今すぐ頼む、おいらを安全な所まで護衛しておくれ」
「安全な所って・・・何があったの?」
「おいらの商売を邪魔する奴に、追われているんだ。捕まったらヒドイ目に遭わされる」
オットーさんは、各地を回ってアイテムの売り買いをしている雑貨屋だ。
支払いに気前がいいので、彼は私の優遇リストに載っている。
そんな彼の依頼なら、何を置いても受けるに決まっている。
「とりあえず、私のモグハに匿ってあげるよ。それから落ち着き先を検討しよう」
「助かる!」
偽ポーション屋のことは、オットーさんを無事に逃がしてから考えよう。
それまでにはきっと、ヨックの体調もマシになっているはずだ。
ヨックのことは、チリに任せておけばいいだろう。
私は 「それじゃ」 と隊長に挨拶をして、オットーさんを連れてクリスタルに飛び込んだ。

そのすぐ後、切れたロープを手にしたクルクが 「逃げられた!」 と言いながら走って来たことを、私は知らない。






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【2017/05/08 23:59】 | * クルク一家
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