2度目のヴァナディール ソロ活動中の妄想屋クルクと仲間達。
やっぴ~、クルクです(・▽・)ノ

ここんとこ毎日ちびっとプロMをやって来ていたけど、今日はお休み~。
でね、毎日ちびっとのプロMの他に、何をやっていたかと言うと、梅のレベル上げw
と言っても、メインはもう99にしてあるから、その他のジョブをね。
何を思いついたのか、突然レベル50キャンペーンが始まりましたwww
50までって、あっという間に上がるから、やってて楽しいんだよね~。
ならクルクでやれって話だけど、それとこれは別なのだ★
次は、そうだなぁ~、まずは暗黒でも取って来るかな。

で、さぁ、レベル上げにはたいていMPが減らないトットII を呼び出してるんだけど、カブト虫虫相手にとんでもないのねw

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連続して撃ってるんだね(^▽^;)
今まで知らなかったw
あの凶悪そうな見た目は、伊達じゃなかったということですね。

ここんとこはそんな感じの毎日だったから、引きこもりが代名詞だった梅がモグハにいないんだよね。
そうなると・・・と考えて、これはどういうことだ・・・と妄想しながら遊んでます★



・・・*・・・・・・*・・・・・・*・・・・・・*・・・・・・*・・・

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こんにちは、うずらよ。

今日はね、美味しいデルフラントペアが手に入ったから、ジャムを作ってみたの。
素材の甘さを生かして、コクがあるけど甘すぎず、サッパリとした後味。
う~ん、我ながら美味しく出来たと思うのよね。
それでね、サンちゃんにおすそ分けしようと思ってね、わざわざウィンダスまで持ってきたのよ。
それなのに・・・。

「ご主人さまは留守クポ」
「最近、いないこと多いわね」
「サンラーさんはいるクポよ」
「もちろん、あたしはサンちゃんに会いに来たのよ!」

モグに通された居間は、前に来た時と変わらない。
可愛らしい置き物やカラフルな魚が泳ぐ水槽が低い棚の上に並んでいて、床にはピンク色のクッションが置かれている。
初めて来た人ならば、まさかエルヴァーンの男のモグハだとは思わないでしょうね。
だけどその中に、1つだけ大きなソファーが置いてある。
タルタルならば、6人は軽く座れちゃう大きさよ。
そのソファーに座ると、サンちゃんが冷たいウィンダスティーを淹れて来てくれた。
ウィンダスティーもサンドリアで主流の紅茶も、ほとんどがサルタバルタ原産の同じウィンダス茶葉なのに、非発酵茶である緑茶と発酵させた紅茶で、全く味が違うのが不思議だわ。
あたしは紅茶ばっかり飲んでいたけど、緑茶も仄かな甘みと僅かな渋みが絶妙で美味しいわね。
買い置きしておこうかしら。

「美味しそうなジャムですね。梅先生はペアが好きですから、きっと喜びますよ」
「あら、あたしはサンちゃんに持って来たのよ」
「うふふ。ありがとうございます」
「・・・ところで、梅ちゃんはどこ行ったの?」

ジャムの入った瓶を見て笑っているサンちゃんをちょっと睨んでから、あたしは聞いてみた。
するとサンちゃんは、可愛らしく小首を傾げてから教えてくれたわ。

「モモさんがいらして、ちょっと出て来るとおっしゃって・・・」
「モモちゃん?」
「またサンラーさんに絡みながら食事をタカリに来たのかと思ったら、今日はそうじゃなかったクポ」
「梅先生もモモさんに用があったみたいで、ちょうど良かったとおっしゃって出て行かれたんです」

サンちゃんとモグが言うには、梅ちゃんは朝早くから出かけていて、戻って来たところにモモちゃんが訪ねて来たんですって。

「どこに行くとか言ってなかったの?」
「いいえ。何だか急いでいたようですので、聞かなかったんです」

梅ちゃんはここのところ、留守にしていることが多いのよ。
ちょっと前までは、モグハの外に一歩も出ない引きこもりだったくせにね。

「うずらさん、シグナルパールを持っているクポ? どこにいるのか聞いてみるといいクポ」
「イヤよ。だって、別に用事はないもの」
「いつもモグ通信してくるのは、用事があるクポ?」
「な、なによっ。 用がなくちゃ通信しちゃいけないわけ!?」
「なら、用がなくてもシグナルパールで聞いてもいいクポ」
「うるっさいわね」

そう言いながら、あたしはポケットから出したシグナルパールを右耳に装着して、呼び出しのコールをしてみた。
だって、モグがうるさいんだもの。
それほどの間も無く、梅ちゃんの声が聞こえてきた。

『どうした?』
「どうもしないけど、どこにいるの?」
『ウィンダスにいるぞ』
「あら、あたし今、サンちゃんとお茶してるのよ」
『クルたんのモグハにいる』

クルたん~?
何でクルたんとこに行ってるのかしら?

「・・・モモちゃんと一緒なんでしょ?」
『モモもいるが・・・』

と、ゴソゴソ音がして 『やっぴ~、クルクだよ』 って、クルたんの声が聞こえてきたの。

『なになに~? うずらは梅とももんがが一緒で、心配しちゃってるの~?』
「ちがっ」
『大丈夫だよ~、ここはちゃんとクルクのモグハだし、二人のことはクルクが見張ってるからね~』
「違うってばっ! そんなんじゃないわよ!」
『待ってね、梅に返すから』
「別にいいわよ! それより、帰りにウィンダスティーを買ってきてちょうだいって伝えてくれる?」
『ウィンダスティーか? わかった』
「じゃ、じゃぁねっ」

梅ちゃんの返事を聞かず、あたしはパールを外した。
まったくもぅ!
クルたんてば、変なこと言うんだから!
それにしても・・・。
サンちゃんとモグに、梅ちゃんはクルたんの所にいると伝えると、2人はなんだ~って感じで、それ以上は何も言わなかった。
だけどあたしは・・・。
まぁいいわ。
今度、本人に問いただしてみることにするから。
それからしばらくサンちゃんと遊んでいたけど、梅ちゃんは戻って来そうもないから、あたしは自分のモグハに帰ったの。
ウィンダスティーはただの出まかせだったんだけど、もし買ってきてくれたら宅配で送ってもらうように、サンちゃんにお願いしておいたわ。
なのに・・・。
あたしがモグハに帰ってしばらくした頃、梅ちゃんが届けに来てくれた。






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【2017/07/03 23:59】 | * クルク一家
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こんにちは、うずらよ。
呼びにくかったら 「姫」 でいいわ。

すっかり忘れていたけど、うちにもモグガーデンがあったのよね。
久しぶりに行ってみたら、マネキンのパーツが流れ着いていたわ。
そう言えば、金庫の中にもいくつか入っていたっけ。
前にクルたんが、パーツを集めてマネキンを作ってもらっていたから、あたしも作ってもらおうかしら。
確か、マウラにいる彫金師に依頼をしたとか、セルビナに行ってカタログをもらったとかって言っていたわよね。
マウラとセルビナねぇ・・・。
女の子の一人旅は危険よね。
っていうことで、護衛を連れて行くことにしたわ。


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 断る。

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 何よ!
 あたしがモンスターや野盗に襲われてもいいって言うの!?

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 クリスタルで移動すれば一瞬だ。
 土産は気にするな。
 気をつけて行って来たまえ。

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 ご主人さまも、マネキンのパーツが揃っているクポ。
 ついでに、マネキンを作ってもらって来るといいクポ。

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 おい、余計なことは言うな!

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 あら、だったらちょうどいいじゃない。
 一緒に行きましょうよ。

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 さっさと行くクポ。
 ご主人さまが留守の間、モグはサンラーさんと仲良くお留守番しているクポよ。


ブツブツ文句を言う梅ちゃんを引っ立てて、あたしたちはクリスタルでマウラへ移動したわ。
最初にカタログをもらいにセルビナに行けばいいのにって思うけど、この手の依頼は手順てものがあるのよね。
まずは話を通してからじゃないと、断られちゃったり、相手にしてもらえなかったりするみたい。
マウラにいる彫金師のミスラを訪ねると、マネキンについてあれこれ教えてくれたわ。
あたしはそんな話どうだっていいんだけどね。
でもまぁ、機嫌を損ねちゃいけないから、礼儀正しく聞いていたわ。

それからセルビナにある織工ギルドに向かうんだけど、あたしは船で行きたかったの。
だって、船に乗ることなんて滅多にないんだもの。
でも梅ちゃんは、絶対にイヤだって言うの。
わかってるわよ、船酔いするからでしょ。
でも、前にサンちゃんと乗ったじゃない!
サンちゃんとは一緒に乗れて、あたしとは乗れないとは言わせないわよ!


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 あの時は昏睡薬を―

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 何言ってるのよ。
 あ、ほら、もう時間よ!
 急がないと、船が出ちゃうわ!
 今乗らないと、次は夜中よ!

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 だから昏睡薬を―

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 急いで、急いで!

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 昏睡薬・・・


グズグズ言ってる梅ちゃんを引っ張って、あたしたちはセルビナ行の機船に乗った。
夕方で、ちょうど暮れて行く空がキレイだわ。

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 ねぇ、梅ちゃん見て、星の大樹よ!

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 ・・・・・・。

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 ちょっ、ヤダ、どうしたのよ!?


梅ちゃんてば、真っ青な顔をして甲板の隅っこにうずくまってるの。
出航して何分よ?


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 下向かない方がいいわよ。
 遠くを見て、遠く。

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 ・・・は・・・なし・・・かけ・・・・・・ぅ・・・


ウソでしょ。
こんなにヒドイなら、どうして言わないのよ。
まぁ、無視して無理矢理乗せたのはあたしだけど。
夜の船旅だなんてロマンチックだわ~、なんてもんじゃないわ。
セルビナに着くまで、あたしには退屈な、梅ちゃんにとっては拷問にも等しい6時間だったってわけ。

機船がセルビナに着くと、乗船カウンターの向こう側で、クマちゃんが手を振ってくれていた。
マウラで、あたしがぴよに連絡をしておいたの。
ほら、セルビナの宿屋 『羊飼いの溜まり場』 って、料理がとっても美味しいんでしょ?
だから予約しておいてもらおうと思ってね。
はぁ~、もう、お腹ペコペコよ。


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 お疲れさま~。

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 クマちゃん、ありがとね。
 ぴよは?

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 いるよ。
 あれ? 梅兄は?

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 それがねぇ~。
 アンタ、ちょっと頼むわ。


動けない梅ちゃんを、何とか船から引きずり下ろすことは出来たけど、もうそれ以上はムリ。
桟橋の上で立つことすら出来ずにいる梅ちゃんを、あたしはぴよに任せることにしたわ。
そうしてクマちゃんに案内してもらった宿屋で、ヴァルゲールさんの自慢料理をお酒と一緒にたっぷりと堪能したの。
梅ちゃんはベッドから起き上がることも出来なくて、朝になっても血の気の失せた顔色で、朝食すら食べられなかったのよ。
美味しいお料理なのに、残念よねぇ。


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 織工ギルドは向かいの建物だよ。
 梅兄は大丈夫?

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 ・・・・・・(コックリ)

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 あんまり大丈夫そうでもないけど・・・。

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 平気よ平気、心配ないわ。
 クマちゃん、ぴよ、ありがとね~。
 さあ、カタログをもらいに行きましょう。


干物を買いに行くと言う二人と別れて、あたしは梅ちゃんを連れて織工ギルドに入って行った。
そしてマネキンについて知っているおばあさんからカタログをもらい、サンドリアの木工ギルドで作り方を聞けとアドバイスをされたわ。
作り方なら、もうマウラのミスラは知っているんじゃないの?
それとも、マネキン一体一体に何か違いがあるのかしら?
死んだ目をしてフラフラと揺れている梅ちゃんの腕を掴んで、あたしはレンタルチョコボ屋へと向かった。
そうよ、サンドリアにはチョコボで行くの。
梅ちゃんは、船酔いはしてもチョコボでは酔わないんだから、平気よね?


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 頼む・・・クリスタルにしてくれ。

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 えぇ~、イヤよ。
 せっかくの旅行なのに、クリスタルじゃ一瞬でつまらないわ。
 そのうち気分もよくなるわよ。
 さ、行きましょ!

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 ・・・悪魔め。


真っ白な砂丘は眩しくて、途中で何度かチョコボが砂に滑るのが楽しかったわ。
ラテーヌはちょっと風が強かったけど、白いフワフワしたタネが谷から舞い上がって来てキレイだった。
ホラの岩近くを通った時、雨上がりには虹が見れることがあるって、梅ちゃんが教えてくれたの。
今回は見れなかったけど、いつか見てみたいわ。
それからね、ちょっと横道に逸れて、池のほとりを通ったのよ。
モンスターさえいなければ、ピクニックに来たいわね。


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 オルデール鍾乳洞には行ったことがあるか?

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 まだないわ。

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 ならば今度、連れて行って置き去りにしてやろう。

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 それってどういうこと!?


ロンフォールは霧が出ていて視界が悪かったけど、梅ちゃんはだいぶ回復していたみたい。
急にチョコボから降りるからどうしたのかと思ったら、すぐそこがサンドリアのゲートだったの。
元々馴染みのある土地だものね。
それから、あたしはチョコボスーツに着替えた梅ちゃんと、北サンドにある木工ギルドへ行ったわ。

ギルドマスターのシュピルドーさんとは、たまに前を通ると挨拶をするの。
マネキンのことを聞いたら、歴史も詳しく教えてくれたわ。
それで、マネキンの関節部分の繋ぎ方が描かれた絵図をくれたの。
これを彫金師に見せればわかるだろうって。
あたしもさすがに疲れちゃったから、マウラへはクリスタルで行ったの。
彫金師のミスラに絵図とマネキンのパーツを渡したら、さっそく制作に取り掛かるって言ってくれたわ。
でもね、「オニーサンはいいの?」 って梅ちゃんに聞いたのよ。

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 なんだと・・・。


つまり、マネキン一体に対して、絵図は一つ必要ってことらしいのよ。
絵図をもらうにはカタログをもらわなくちゃならなくて、セルビナでフラフラしていた梅ちゃんはカタログをもらっていないから、またもらいに行かなくちゃならないってことなのね!?


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 俺は行かないぞ。
 絶対に行かないからな。
 マネキンなんていらん!


マウラからセルビナへ、何だか変なトラウマになっちゃったみたい。
マネキンが出来るまで少し時間がかかるって言うし、チリちゃんに干物のお土産も買いたいわ。


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 クリスタルで行けばいいじゃない。
 一瞬よ、一瞬。
 付いて行ってあげるから、ね!?


あたしは嫌がる梅ちゃんを引っ張って、クリスタルでセルビナに向かったのでした。


出来上がったマネキンはコレよ!

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 どっちが本物だ?

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 ・・・刺されたいの?


梅ちゃんのマネキンは、黒チョコボになってるみたい。

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【2017/06/12 23:59】 | * クルク一家
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『 ループ 』


無造作に伸びた、少し長めの金髪。
腰をかがめて覗き込む、青い目。
「いい子で待ってるんだぞ」
そう言って、ワシャワシャと髪をかき混ぜていた大きな手が頭から離れ、背中を向ける。

「行かないでっ!!」

自分の声に驚いて、ボクは目を覚ます。
幾度となく見る、夢。
頭に置かれた手の重さや、それが離れた時のフッと軽くなる感触は、今でもハッキリと覚えている。
ふぅ・・・と息を吐き出して、額に手を当てれば、うっすらと汗ばんでいた。


昨日、シャントット博士の留守中に、ボクはまたあの禁書を盗み読みしちゃったんだ。
タイトルは、『次元移動の考察と、その運用』
博士の家にある他の本は、全て自由に見ることが許されている。
ただし、のんびり読んでいるヒマがあるならね。
けれどあの本だけは、閲覧禁止と言い渡されていた。
理由は、ボクがそのことにばかり気を向けてしまうから。
博士は本に施した魔法錠のキーワードを変更したと言っていた。
いつものポーズで 「残念ですこと」 とか言いながら、高笑いをしていたっけ。
でもボクは、それをまた解錠してしまったんだ。
自分でもちょっと驚いちゃったけどね。
一度開けてしまった魔法錠は、魔法をかけ直さないと鍵がかからない。
ボクがかけ直してもいいけど、そんなの博士には絶対にバレちゃう。
つまりボクは、博士が帰ってくる前に、魔法防御を上げておかないと、命が危険極まりないってこと。
だけどそんなことは、本を読み始めてしまったら、頭の中からすっかりと抜け落ちてしまったんだ。
言いつけられた仕事も、用意しておくように言われたアイテムを揃えておくことも。
何度も何度も繰り返し読み、時間を忘れて考えに耽って、いつの間にか床で寝てしまっていたらしい。


身体を起こしたボクは、ふと違和感を感じた。
見回せば、そこは間違いなく博士の家にある一室で、乱雑に積み上げられた本の山や、実験途中のアレやコレやが並べられている。
だけど、何かがおかしい。
そう、例えば・・・目の前の壁に貼られている、魔法陣が描かれた羊皮紙。
ずっと前からそこにあるのは知っている。
でも・・・これって何の陣?
魔法陣を形成する方式も、そこに記されている文字も、ボクの知らないものだった。
「・・・んん?」
首を傾げて見つめていたら、部屋の扉が開いて 「ここにいましてよ」 と、シャントット博士の声がした。
ヤバいっ!!
もう帰って来ていたの?
予定では、もう2~3日かかるはずじゃなかったっけ?
咄嗟に立ち上がり振り向いたボクは、絶妙なバランスを保って積まれていた本にぶつかり、崩れ落ちてきたそれらに埋まってしまった。
「あらあらあら」
「もーう! 何やってるの! うろちょろしないで、大人しくしてる約束だったでしょ!?」
ボクの上に乗っていた本を退かしてくれたのは・・・か、母さん!?

ボクが元いた未来の世界において、ボクはクルクの子供として生まれた。
サンラーと一緒に飛ばされた今いる世界は、ボクが元いた世界よりも過去ではあるけれど、果たして繋がっている世界なのかどうかは確定していない。
本来ならばサンラーだけが飛ばされてしまうはずだったのに、ボクもくっついて来てしまったことで、繋がっていたはずの世界が枝分かれしてしまったのかもしれない。
だから、クルたんは母さんの昔の姿かもしれないけれど、これから先の未来で、ボクを生むとは限らない。
そして、ボクたちが元いた世界に戻る術がない今(戻りたいとは思わないけど)、ここに母さんがいるはずがない。
それからもう一つ、ボクは自分の母親とクルたんを間違えたりはしない。
だけど、だとしたら、これは一体・・・。

「あ、あの、ボク・・・」
「ちゃんと謝りなさい」
「え、あ、ゴメンなさい」
腰に手を当てて仁王立ちをしている母さんの怒った顔を見て、ボクは反射的に謝った。
この世で唯一ボクが怖いもの、それは怒った母さんだ。
素直に頭を下げて謝ったボクに、シャントット博士は 「ホホホ」 と軽い笑い声を上げた。
「よろしくてよ。それよりもクルク、その子にきちんと魔法を覚えさせなさいな」
「魔法学校には行かせてるけど、ロークラスだよ」
「ばかちんですのね」

確かにボクは、魔法学校ではロークラスだった。
実技が苦手で、いつも居残り練習をさせられていた。
だけど、魔法の仕組みや原理はクラスの中で一番理解できていた。
つまり優秀な頭脳を持つボクは、この不可解な現状と会話を聞いていてピンと来ないわけがない。
そして、見下ろした自分の小さな手を見て確信した。
どういう訳だかわからないけど、ボクは子供の頃に戻ってしまっているんだ。
そう、ここは、ボクが元いた世界の過去だ。


ボクの家は、水の区の北側にある。
古いし立派ではないけど、そこそこ大きな家だった。
見慣れた玄関の扉を開けて中に入ると、懐かしい匂い。
そして、おぼつかない足取りで奥から走って来たのは、妹のサンラーだ。
その後ろから、爺やよろしく頭にサソリを乗せた梅先生が付いて来る。
相変わらず、変な帽子を被っているね。
ところで、ボクがここにいるってことは、この世界のボクはどこに行ったんだろう?

「あ、かぼちゃん帰って来たのね」
ドキン、と心臓が跳ね上がった。
「お~い、かぼちゃ、クッキーあるぞ~」
ボクをそう呼ぶのは、たった一人しかいない。
「クマちゃん、ぴよくんがまたボクのことかぼちゃっていうの。おこって~」
そう言いながら、ボクは二人の腕の中に飛び込んで行く。

あぁ、そうか、わかった。
この世界のボクは、ここにいるんだ。
つまりボクは、ただの意識。
あぐらをかいて座ったぴよ君の膝の上に、それが当然のようにボクは座る。
おやつのクッキ―を食べた手を、クマちゃんが拭いてくれる。
会いたくて、会いたくて、会いたくて・・・。
何を犠牲にしたって構わないと思っていた、会いたかった二人がここにいる。
嬉しくて、幸せで、きっとボクは泣いている。
だけどこの世界のボクは、当たり前みたいに笑ってる。


「クマちゃん、今日バスに行くんだっけ?」
朝食の席で、母さんが言った。
「うん。仕事の話を聞いて来るだけだから、すぐに戻るよ」
「ボクもいきたいなぁ~」
そう言うと、ぴよ君が 「かぼすは俺と留守番な」 ってボクの頭に手を置いた。
ボクはその手を掴んで、「ねぇねぇ」 とぴよ君の顔を見る。
「ボクもぴよくんみたいなかみにしたい」
すると父さんが、「せっかく一つに結べるようになって、父さんとお揃いになったのに」 と言った。
でもボクは、「ヤダ! ボクはぴよくんとおなじほうがいい」 と言い張った。
ガッカリしている父さんを見て、母さんが苦笑いしている。
「じゃあ、クマちゃんがバスから帰ってきたら、切ってもらいなよ」
「うん!」

ザワっとした。
何だろう?
小さなボクは 「やったー、やったー」 と喜んでいる。
そう言えば、ぴよ君と同じ髪型にしたくって、切ってもらったんだっけ。
思い出して、ふふっと笑いが浮かぶ。
それなのに、お腹がザワザワするのはどうしてだろう?

クマちゃんがバスから戻って来たのは、その日の夜だった。
思ったよりも遅くなったのは、久しぶりに会った知人と話し込んでしまったからだと言う。
「仕事の依頼主が、偶然にも知り合いだったの。ずいぶん前にエラジア大陸に移って、それから一度も会ってなかったからビックリしちゃった」
その話を、ボクはぴよ君の膝の上でウトウトしつつ聞いていた。
「その子ね、モンスターの生態研究をしているんだって。で、クゥダフのことを調べたいって言うの」
「あぁ、エラジアにはいないもんなぁ」
「それで、ベドーに行きたいんだって」

ベドー!!
その瞬間ボクは、お腹の中でザワザワしていたものに、心臓をギュッと掴まれた気がした。

「道中はチョコボで移動するから危険はないし、ベドーまで案内したら帰っていいんだって」
「そっか。出発はいつ?」
「早い方がいいって言うし、明後日に決めて来た。明日はかぼちゃんの髪の毛を切ってあげなくちゃ。今日、遅くなっちゃったからね」

ベドーはダメだ!
その仕事は、クマちゃんじゃなくたっていいじゃないか!
母さんや父さんに、代わりに行ってもらってよ!
ベドーに行ったらダメだ!
そう叫びたいのに、ボクはボーっとしたまま動かない。
クマちゃんが髪を切ってくれるって、その言葉が嬉しくて、早く明日にならないかなぁって、今にも眠ってしまいそうだ。
ダメだ!
ダメだ!
ダメだ・・・!


クマちゃんは、料理が上手だ。
魚を捌くのも手慣れているし、野菜の皮は魔法みたいにスルスルと剥く。
だけど髪の毛を切るのは、あんまり上手じゃなかった。
「あれ~、おかしいなぁ」
「もうちょっと、こっちを短くじゃないか?」
「ん~、こんな感じ?」
「あっ、そうじゃなくて・・・」
「えー!」
チョキチョキと頭上でハサミが鳴る度、黄色いボクの髪がパラパラと落ちてくる。
「よし! これでカンペキ!」
クマちゃんはそう言って満足そうに頷いた。
ボクはワクワクして鏡を見たけれど、そこに映っていたのは、ぴよ君とは全然違う髪型のボクだった。
「なんかさー、みじかいよ」
「そんなことないよ! これでもうちょっと伸びたら、ぴよ君とお揃いになるから大丈夫」
やっぱり短いんじゃん、と思っていると、ぴよ君がボクの頭に手を当てて、髪をワシャワシャってかき混ぜた。
「お、かぼちゃの頭、気持ちいいぞ」
「かぼちゃじゃないってば~!」
それだけで、もうボクはこの髪型が気に入ってしまった。


クマちゃんが、テーブルに地図を広げている。
ベドーまでのルートを下調べしているんだ。
出発は明朝、バスへはクリスタルで移動して、グスタからコンシュタットを通ってパシュハウ沼に出てベドーへ。
ボクは見てもわからない地図を、一緒になって覗き込んでいる。
「ボクもバスにいきたいよ」
「じゃあ、クマが帰ってきたら連れてってやるか」
「ホント!?」
「クルたん、いいよね?」
「い~よ~」
「やったぁ~!!」

そうじゃない!
そんな話はしなくていい。
あぁ、誰か、クマちゃんを止めて!
父さん母さん、ベドーに用事はないの!?
お願いだから、行かないで!!


朝、眠い目をこすりながら「いってらっしゃ~い」 と、ぴよ君に抱えられたボクがクマちゃんに手を振る。
今すぐ、クマちゃんに飛びついて引き止めたいのに!
それからボクは、バスに行く時に持って行く物を、まだ早いでしょと言う母さんにせがんで、カバンに詰めてもらう。
このカバンがどうなったか、ボクは覚えていない。


そして・・・。
「クマを迎えに行って来るな」
ぴよ君がボクの顔を覗き込みながら、「いい子で待ってるんだぞ」 と言って、ボクの髪をワシャワシャとかき混ぜる。
その大きな手がボクの頭から離れ、背中を向ける。
イヤだ・・・。

「行かないでっ!!」

ボクは、自分の声に驚いて目が覚めた。
あぁ、またこの夢だ。
ここは・・・そう、シャントット博士の家の一室。
ボクは昨日、シャントット博士から閲覧禁止と言い渡されていた本の魔法錠を開錠してしまい、言いつけられていた全てのことを忘れて読み耽り、そのまま床で眠ってしまったらしい。

・・・あれ?
体を起こしたボクは、妙な違和感を感じて部屋を見回した。
目の前に貼ってある魔法陣の描かれた羊皮紙、あれは何の陣だっけ?
何度も同じものを見た覚えがある。
もっとよく見ようと立ち上がろうとした時、パンッと鼓膜を震わせる音がした。
部屋の扉が開いて 「ここにいましてよ」 と、シャントット博士の声がした。
驚いたボクは、振り向いた拍子に積んであった本にぶつかり、崩れた本の下敷きになってしまった。
きっとこの後、母さんが助けてくれる。
どうしてそう思ったのか、わからない。
だけど実際、 「もーう! 何やってるの! うろちょろしないで、大人しくしてる約束だったでしょ!?」 と母さんの声がして、本の中に埋まっているボクを助け出してくれた。
いや、そんなはずはない。
だってここは・・・ここは・・・?
見下ろせば、小さなボクの手。
あぁ、そうか、またボクは同じ夢を見ているんだ。
・・・同じ夢?
どこからどこまでが、夢なんだ?
夢?
これは夢なのかな?
ボクの記憶じゃない?
記憶を反芻しているの?
それにしては、今のボクの思考が混じっているよね。
こんな風に考えている間にも、小さなボクは母さんと水の区にある自宅へ向かって歩いている。
ああ、家に帰れば、大好きな二人がボクを待っている。
だから、夢でも記憶でも構わない。
ボクの側にはぴよ君とクマちゃんがいる。
それこそが、ボクが何よりも望んでいること。
だけど、クマちゃんは仕事でベドーに行くと言う。

行かないで!行かないで!
お願いだから、行かないで!!
どんなにそう願っても、小さなボクはクマちゃんに手を振っている。
一日、いや数時間、あるいは数分、クマちゃんの出発が遅れていたら、あんなことになからなかったかもしれない。


クマちゃんからシグナルパールで連絡があったと、ぴよ君が母さんに話していた。
依頼主が、大伽藍まで案内してほしいと言い出したとか。
だけどクマちゃんは、それを断ったとぴよ君は言っている。
それでも一人になれば地下に入ってしまうかもしれないからと、クマちゃんは依頼主を地下へ行かせないために、帰るまで付き添うことにしたらしい。
そんなクマちゃんを心配して、ぴよ君はベドーまで行って来ると母さんに告げていた。
「クルクも行こうか?」
「地上なら絡まれることもないし、大丈夫ですよ。クマたちはベドーの入り口で野宿するって言っていたし、護衛がてら迎えに行って来ます」
「そう?」
「それにクルたんは、天の塔から呼び出しがかかっていたでしょう?」
「あ~、忘れるとこだった」

この時ぴよ君が、何でもいいからとにかく今すぐ戻って来るようにってクマちゃんに言っていたら・・・。
母さんが天の塔からの呼び出しよりも、クマちゃんを優先にしてくれていたら・・・。
この日アドゥリンへ行った父さんが、まずはぴよ君と一緒にベドーまで行ってくれていたら・・・。
全ては、結果を知っているボクの願望。
知っているのに、今、ぴよ君がボクに 「いい子で待ってるんだぞ」 って言いながら、昨日クマちゃんが切ってくれた髪をワシャワシャとかき回しているのに、ボクはその手を掴むことすら出来ないんだ。

行かないで!
お願いだから、ボクを置いて行かないで!!

「行かないで!!」

ボクはまた、自分の声で目を覚ました。
そして思った。
これからボクは、ぴよ君とクマちゃんが待つ家に帰るんだ。
失ってしまった幸せな時間を、繰り返し過ごせるんだ。
その後には、永遠の別れの瞬間がやって来る。
だけどまた、ボクは二人に会えるじゃない。
それで、いいんじゃないの?
何度でも二人に会えるなら、あの瞬間さえ別れとは言えなくなる。
時間を切り取って、その中でだけ繰り返そう。
そうすればもう、会いたくて焦がれて苦しい涙を我慢する必要さえなくなるよ。
あぁ、それがいいよ。
優しい二人に甘えて、最後の数日間を永遠に過ごそう。

きっと、忘れられる。
「何の連絡もないなんておかしいよね」 って言う、母さんの不安そうな顔も。
「クルクはもうベドーに行ったのか?」 って、アドゥリンから戻って来た父さんの慌てた声も。
「二人を頼むぞ」 って、サンドから飛んできたうずらちゃんと入れ違いに、駆けて出て行く梅先生の後ろ姿も。
「大丈夫よ、絶対に戻って来るわ」 って、自分に言い聞かせるようにボクとサンを抱きしめた、うずらちゃんの震えていた腕も。
「どうしてぴよくんとクマちゃんはもどってこないの?」 って、毎日泣いていたボクのことも。

そしてきっと、ボクは忘れる。
あの時に戻って、二人を必ず取り戻すと誓ったことを。
そのために、寝る間も惜しんで勉強したことを。
サンと一緒に飛ばされた世界で、あの二人に会ったことを。
二度と失いたくない、あの二人のことを!

誰が忘れるもんか!!


「見つけましてよ」
シャントット博士の声がした。


「おい、かぼちゃ!」
「・・・ボクは・・・かぼちゃじゃない・・・ってば・・・」
青い目が、ボクを覗き込んでいた。
「・・・ボク・・・いい子で・・・待ってたよ・・・」
「お前がいい子なわけないだろ!」
ぴよ君が、ボクの髪をワシャワシャとかき回しながら言った。
「かぼちゃん! あぁ、目を覚ました! よかった!」
ぴよ君を押し退けたクマちゃんが、ボクをぎゅっと抱きしめた。
・・・あれ?
重たい瞼を何度か瞬きさせると、真上からシャントット博士がボクの顔を見下ろしていた。
そして 「わたくしの言いつけを何一つ守っていないとは、子鼠の分際でいい度胸ですこと」 と、魔法の詠唱を始めた。
・・・え? え?
「待ってください!」 と言う、ぴよ君の叫び声。
クマちゃんは悲鳴を上げながら、横になったままのボクに覆いかぶさった。
何がどうなっているの?
えっと・・・母さんは?

「・・・よござんす。訳もわからぬまま消し炭にするより、怯えた消し炭にする方がお仕置きのし甲斐がありますものね」
詠唱を止めた博士が物騒なことを言っているけど、まだボクには状況が理解できていなかった。
「あの・・・?」
体を起こすと頭がフラフラとして、クマちゃんが背中を支えてくれた。
「かぼちゃん、倒れたままずっと意識がなかったのよ」
聞くところによると、ぴよ君とクマちゃんはボクを訪ねてシャントット博士の家に来たと言う。
けれど、ボクを呼びに行ったキングから、返事がないし部屋の扉も開かないと言われたらしい。
それはおかしいと二人が中に入ろうとしたところ、キングに阻止された。
押し問答の末、玄関先でちょっとしたバトルになったそうだ。
もちろん、勝敗は言わずもがな。
懲りずに二度目の攻防戦をしている所に、シャントット博士が帰って来たのだと言う。
そして開かない扉を開けてくれて部屋の中に入ってみると、ボクが意識をなくして床に倒れていたってことらしい。
つまり、今は、本当に本当の現実ってこと?

シャントット博士は床に落ちていた 『次元移動の考察と、その運用』 とタイトルされた本を拾い上げた。
「この本を棚から抜くと、部屋の扉が施錠されるように、わたくしが魔法をかけておいたのですわ。また、持って逃げられると困りますからね」
ホホホ・・・と軽く笑い、そして目を眇めてボクを睨みつけた。
「確か、わたくしはこの本を閲覧禁止と言いましたわよね?」
「・・・目につく所にあったので、つい・・・」
「わたくしの言いつけを破って、 『つい』 では言い訳になりませんことよ」
そして博士はぴよ君とクマちゃんに向かって、出て行けと手振りをして見せた。
だけどクマちゃんは、ボクをギュッと抱きしめたまま、フルフルと首を振っている。
「ぶっ殺したりはしませんわよ、まだ」
博士がキングを呼び、二人を強制的に退室させてしまった。
「放せ!」 とか 「かぼちゃん!」 という二人の声が聞こえなくなると、博士は 「さて・・・」 とボクを見下ろした。
「では子鼠、何があったのか話しなさい」
ボクは頭をフラフラさせながら床に座ったまま、自分の声で目を覚ましたところから話を始めた。
所々、自分でもよくわからないことがあったりもしたけれど、その時の自分の感情は一切排除して、体験したことを客観的に語った。
「あのまま繰り返していたら、ボクはどうなっていたんですか?」
「オホホ、わかりきったことを聞くのですね」
たいして面白くもなさそうに博士は笑うと、持っていた本から一枚の羊皮紙を抜き取り、ボクの目の前の床に置いた。
そこには、 魔法陣が描かれていた。
それを見たボクは、ハッとして壁を見上げた。
が、壁には何も貼られてなどいない。
そう・・・そうだよ。
魔法陣なんて、普通は壁に貼っておくものじゃない。
それに、ボクはこの陣を知っている。
だってこれは、ボクが描き写したものだもの!

魔法錠を解いたボクは、博士が記したページの中に、新しく加えられていた魔法陣を見つけた。
その陣はまだ未完で、完成させるために必要ないくつかのパーツが、ページの下に記されていた。
見たことのない方式で、ボクはそれを読み解くのにしばらく時間を費やした。
けれどそれがわかった瞬間、ボクは試してみようとかそんなことを考えるよりも先に、その陣を羊皮紙に描き写していたんだ。
欠けた場所に、必要な記号を埋めていく。
そうして、何の迷いも躊躇もなく、ボクは陣を完成させた。
シャントット博士が仕掛けた小さな罠、外して描かなければならなかった記号 『閉じられた輪』 の意味にも気付かずに。

「わたくしがどれほど禁じようと、目の前にこの本があれば、あなたは必ず開くでしょう。どんなに複雑な魔法錠をかけたとしても、知識を得たいという欲求の前には鍵など無に等しいことを、わたくしは知っています」
シャントット博士が言った。
だから、餌を撒いたんだ。
ボクが作業する部屋にある棚にあの本を置き、わざわざ魔法錠をかけ直したと言ってけしかける。
ボクはまんまと釣られ、博士の実験台になったわけだ。
もしもボクが閉じられた輪の記号に気づいて、それを消して陣を完成させていたら?
そう尋ねると、博士は 「いずれにしても、意識だけしか飛べないのなら、これは失敗ですわ」 と言って薄く笑い、パチンと指を鳴らした。
ボクの目の前で、魔法陣の描かれた羊皮紙が燃え上がった。
羊皮紙が灰になって行く様を見つめながら、ボクは閉じられた輪の意味をボンヤリと考えていた。
あのままあの世界にいたとしても、それはそれでボクには幸せだったかもしれない。
だけどボクは、あの輪から抜け出した。
それを選んだのは、ボク自身だ。
その意味を・・・。

パンパン、とシャントット博士が手を叩いた。
「ところで子鼠、いつまでボケっと座っているつもりなのかしら? わたくしが言い付けたアイテムは、もちろん揃っているのでしょうね?」
「・・・エッ!?」
「今日中に揃わなかったら、次に灰になるのは子鼠ですわね」
「ヒェッ!」
ボクは跳ねるように立ち上がり、部屋を飛び出した。

ぴよ君とクマちゃんの二人は、部屋の外でボクを待っていてくれた。
クマちゃんは 「大丈夫!?」 とボクに駆け寄り、ぴよ君は 「いったい何だったんだよ」 と文句を言いながら心配そうにボクを見ている。
またこの二人に会えたことが、ボクは嬉しかった。
あの過去を二度と繰り返さないためにも、ボクは絶対に諦めない。
そのために、ボクはこの世界にいるんだから。
「ぴよ君、クマちゃん、アイテム揃えるの手伝って! 消し炭にされちゃうよ~!」
玄関に向かって走り出したボクに、クマちゃんが 「待って~!」 と後に続く。
そしてぴよ君は、「お前なんか、かぼちゃの消し炭にされちまえ!」 と叫びながら、やっぱりボクの後から走り出した。
そんなボクらの背後から、シャントット博士の高笑いが追いかけて来た。



---*---*---*---*---*---

やっぴ、クルクです(・▽・)ノ

ずっと前に、もう一年以上前になるかな? コウさんから 「元の世界にいた時のぴよクマとかぼす」 はどんなだったのか? っていうコメをいただいていたのです。
で、そのことをフと思い出したのが、精神状態が暗黒になる一歩手前の時期だったために、何かこんな感じのを書きらしてたのねw
そのまましばらく放ったらかしてたんだけど、暗黒抜けたのでチャチャッと書き直して仕上げてみました。

生きていれば、それが長くなればなるほど、誰でも何かしら大切なものを失うと思うのです。
シャントット博士にも、理性ではなく感情で、もう一度会いたい人はいると思うんだ。
知的好奇心と欲求を満たすためだけではなく、ほんの少しでもその感情が混じっていればいいなぁ・・・と。
あとは、失うだけではなく、得るものだってあるよ~ってことですよね★

お付き合い、ありがとうございました。






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【2017/06/11 23:59】 | * クルク一家
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おひさしぶりです。
コウ
クルクさん。こんにちは〜。
おひさしぶりです。お元気だったでしょうか。

今回のお話は、元の世界のかぼす君の子供の頃のお話ですね。書いてくださってありがとうございます。
子供の頃のかぼす君は、ぴよ君とクマさんに愛されてますね〜。だからベドーで事故が起こった事が、かぼす君のトラウマになってるんですよね。
で、意識が過去に戻るこの現象は、シャントット博士のトラップだったと。ループの記号を見落として、書き写してよかったですね。でなければ、かぼす君の意識は過去世界に行ったきりになったかも・・・その場合でも、シャントット博士が何とかしたんでしょうが。
かぼす君は自力でループを抜けだした。今この世界のぴよ君とクマさんを助けたいからですよね。きっと上手くいきますよ。

面白かったです。
ループするとことか、リゼロの影響があったのかな〜と何となく思いました。クルクさんリゼロ読まれましたか?最近更新がまた再開されてます。作者の方がアニメ化とかの仕事がひと段落したんでしょうかね。

クルクさん、精神状態が暗黒だったのですか!ご自愛されますよう。僕も夜勤が続くと気分的にいらいらしてくるのを感じます。。やっぱり人間は、朝起きて夜寝るようできてますよね〜。
まあ寝不足が原因ではないんでしょうが、何か気分転換できるといいですね。体を動かすといいかもです。もうすぐ夏になっちゃいますが、まだ今の内は外でランニングとかでも気持ちいいですよ。

話は変わりますが、僕のff11の近況としては、ようやくイオニックウェポンを1つ作る事ができました。ちなみに槍です。トリシューラってやつですね。そしてもうすぐ2個目(片手刀)ができそうです。
クルクさんは今プロマシアやられてるんでしたよね。僕もプリッシュ好きなんですが、ストーリー的にはあまり面白さを感じませんでした。
ミッションやられるんでしたら、アドゥリンの方が面白いと思います。IL119装備でも、BF戦が割と歯ごたえがあるので、楽しめるかと。クリア後に遊べるコンテンツもありますし、星唄も進められるかもしれませんね。
プロマシアに飽きたんでしたら、アドゥリンをやってみるのも1つの手かもしれません。ご一考下さい。

自分で書いてる懸賞小説が110000字を超えても終わりませんー。その割に面白くないような気がするし・・・これが終ったら、またff11のお話を書こうかな。

これから暑くなるので、健康に気をつけて下さいねー。
それでは〜。

Re: おひさしぶりです。
クルク
コウさん、おひさしぶりで~す(・▽・)ノ

かぼすはコウさんのおかげで、シャントット博士にお世話になっておりますw

いなくなってしまった二人の夢(主に悪夢的な感じ)は、かぼすは日常的に見ていると思います。
死体でも残っていればお別れ出来たかもしれないけど、行方不明のままなので、いつまで経っても癒えない傷になっているんでしょう。
今いる世界の二人を同じ運命にさせないようにっていうのは、自分のためだと思います。
自己中の子だから、自分がこれ以上苦しまないようにって。
だけどそう考えると、可哀想な子ですよね(自分で書いててアレですがw)

シャントット博士の仕掛けは、かぼすに対するテストみたいなものだったのかもです。
ループから自分で抜け出せなければ、それを選んだのはかぼすだし、そんな子には博士は用は無いと思うのです。
もしかしたら、ループの記号は必ず組み込まれていたもので、外していたら発動しないようになっていたとか・・・。
後になって、そうかも!って考えただけですけどww

リゼロのことは、頭をよぎりましたw
あっちは繰り返してやり直す世界だけど、こっちはやり直せないからマネっこにならないかな~とか。
リゼロは、途中で止まったままなんです。
時代小説にハマってしまって、そっち系ばっかり読んでいましたw
また再開されたのですね~。
読まなくては追いつかない(^_^;)

イオニックウェポンて、用語辞典調べたけど理解できませんでしたwww
まずは、ビーズって何!?ってとこからですw
でも、トリシューラも丙子椒林剣もカッコいいですね!
ぜひとも次のお話に登場させてほしいです♪

110000字って、原稿用紙275枚!!( ̄□ ̄)
大作じゃないですか!
頑張って完結目指してください★

暑かったり涼しかったりジメジメしたりしますから、コウさんも身体に気をつけてくださいね~(・▽・)ノ


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よろれいひ~、オットーだよ(・∀・)ノ

この前はクルクに捕まりそうになってヒヤッとしたけど、護衛屋のおかげでまんまと逃げおおせたよ。
しばらくは大人しく、拾ったアイテムでも売ることにした。

ジュノでインゴットを売った客に、ゴブリンシチュー880 はないかって聞かれたんだ。
そんなもん持っていたら、売らずにオイラがカバン拡張に使うよ。
そういえば、モグガーデンで売りに出ているって言ってたっけ。
オイラは早速バルファルのモグハに連絡をしたよ。

『おじさん、クルクが怒り狂ってたぞ』
「よお、チビスケ。お前、モグガーデンに行けるだろ? ゴブリンシチュー880を買って来てくれ」
『は? 何でオレが?』
「クルクにゃ頼めんだろ」
『1個10万ギルもするぞ』
「じゃ、10個買って来てくれ」
『重いから、1個しか持てねぇよ』
「じゃ、1個づつ買って来てくれ」
『えぇ~・・・いいけど、金は?』
「最後に渡すよ」
『バックレないだろうな? そんなことしたら、クルクに言うからな』
「お~け~お~け~、じゃ、ジュノで待ってるから」


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そんな感じで、1個づつ送ってもらって、オイラのカバンは拡張完了さ。
ところがバルのやつ、10個目のシチューは送らずにジュノまで持って来やがったんだ。
おまけに、一緒にカバン屋ゴブの所まで付いて来た。
オイラが立替え金を踏み倒すとでも思ってるのか、けしからん!

「おじさん、全部で100万ギルだよ」
「計算くらい出来るわ、ボケが」
「じゃ、返してくれ」
「しょうがない、クルクをくれてやる」
「は?」
「ゴブ箱から出て来た景品だけど、仕方ないからオマエにやろう」
「なっ、何言ってるんだよ! クルクはいいから100万くれよ!」
「いらないのか? クルクだぞ?」
「いや、それは・・・っつーか、この前はボナンザの景品だったって言ってたじゃないか!」
「そうか? まあ、どっちでもいいさ、似たようなもんだ。で、いるのかいらないのか?」
「娘を身売りするな! クルクに言いつけるぞ!」
「オマエも同罪だ~」
「なんでオレが!? あ、こら! 金返せ~っ!!」


バルのおかげでカバンも大きくなったし、せっかくセルビナに飛んできたから、無賃乗船でノーグまでぶらりと行ってみようかな。
面白そうな拾い物があるかもしれないよね。
そしたらまた、サンドリアの小僧に売りつけてやろうっと。






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【2017/05/31 23:59】 | * クルク一家
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私はモモンジーナだ。
呼びにくければ、モモでいい。

先日、サンドリアでヨックと会った。
ヨックはタルタルの男で、一応冒険者だ。
私がヨックと知り合ったきっかけは、ロンフォールのミミズだった。
冒険者になりたてのヨックは、ミミズ相手に苦戦していた。
ヨックの剣を振るうフォームはひどく、見かねた私が剣の持ち方や踏み込み方などを指南してやったのがきっかけだ。
ヨックは、よく言えば人を疑うことを知らない、素直で純真な子だった。
悪く言えば、「どんくさい」 の一言に尽きる。
そのヨックと、モグハウス前でバッタリと会ったのだ。

私は 『獅子の泉』 で寝起きの一杯を飲もうとモグハを出た所で、モグハに戻って来たタルタルとぶつかりそうになった。
「すまない」 「ごめんなさい」 とお互い譲り合い、顔を見ればそれがヨックだったというわけだ。
だが、「久しぶりですね」 と私を見上げたヨックの顔がげっそりとしていて、私はビックリしてしまった。
どうしたのかと聞くと、このところ体調が悪いのだとヨックが言う。
「心配はいりませんよ」 と笑う頬にも力はなく、屈んで顔をよく見れば、目の下にはクマも出来ている。
じゃあ、と行こうとするヨックの足取りがヨロヨロしていて、私は飲みに行くのを取り止めて、ヨックをモグハへ送ることにした。

備え付けのガレーキッチンと、簡素なベッド。
ヨックのモグハには、それだけしか家具がなかった。
自他共に認めるドケチの私ですら、テーブルやイスくらいは持っているというのに。
「ずいぶんとび・・・ストイックな生活をしているんだな」
貧乏くさいという言葉を飲み込んで、私はガランとした部屋を見回した。
「お金がなくって、全部売ってしまったんです」
ヨックはそう言いながら、肩に掛けていた重そうなカバンを床に下ろした。
するとモグが、カバンに詰め込まれていた小瓶を取り出しながら、「クポォ」 とため息をついた。
突然、ヨックは 「ぁうっ!」 と声を出し、お腹を押さえながら 「ちょっとトイレに・・・」 と言って、奥へ駆け込んでしまった。

「ねぇ、ヨックはどうしたの?」
ただ事ではないヨックの様子に、私はモグに尋ねた。
モグはカバンの中から取り出した小瓶を一つ、私の足元に置いた。
「きっと、このポーションのせいクポ。このポーションを使うようになってから、ご主人様のお腹はピーピーになってしまったクポ」
「ポーション?」
私は床に腰を下ろし、床に置かれた小瓶を手に取って見た。
ビンのラベルには 『超高級ポーション』 と、手書きのラベルが貼ってある。
少し緑がかった濁った液体に、キラキラとしたものが混じっている。
一般に出回っているポーションとは、少し違っていた。
「天の塔の聖水で作った、特別なポーションらしいクポ」
「コレ、どうしたんだ?」
「アイテム屋さんで買ったらしいクポ。でもこのポーションには、本来の効能が全くないクポ。絶対におかしいクポ。モグは何度もそう言っているのに、ご主人様は特別なポーションだって信じ切っているクポ。このままじゃ、ご主人様が死んじゃうクポ」
助けてほしいクポと懇願された私は、試しに手の中にある特別なポーションとやらを飲んでみることにした。

栓を開けて匂いを嗅いでみると、生臭いような臭いがした。
少し口に含むと、鼻から腐臭が抜けて行く。
私は立ち上がり、キッチンの流しに吐き出した。
この味を、私は知っている。
「だ、大丈夫クポ?」
モグが私の顔を覗き込んでいる。
私はうがいをして頷くと、小瓶を自分のカバンにしまった。
こんなものを飲んでいたら、そりゃ腹だって壊すだろう。
そして飲み続けていたら、モグの言う通り死んでしまう。
「ヨックは、なんでこんなものを買ってくるんだ?」
「売りつけられるクポ。無理やりカバンに押し込まれて、代金を請求されるらしいクポ。お金がないと、持っているアイテムや装備や武器を持って行っちゃうクポ」
ヨックはいらないと言うが、相手に押し切られてしまうらしい。
家具も売り尽くして無一文になってしまい、ギルを稼ぐために狩りに出て、そこでポーションを飲んでいたのだろう。
狩りで貯まったギルをまた奪われ、ポーションを飲み、腹を壊して・・・間違いなく、これは死ぬな。

私が 「どこのアイテム屋だ?」 と聞くと、モグはタルタルの男が売り歩いていると言う。
やはりそうか、と私はひとりごちた。
「これはポーションなんかじゃないよ。これ以上飲み続けたら、本当に死ぬかもしれない」
「ど、どうしたらいいクポ?」
「とりあえず、ここにある超高級ポーションとやらは、全部処分した方がいいね」
「そうするクポ」
「それから、薬と何か食べ物を・・・」
キッチンに目を向けたが、食料らしきものは見当たらない。
「お金がないから、薬も食べ物も買えないクポ」
「そうか・・・」
といって、私が買ってやるというのは、ちょっと・・・なぁ。
「とにかく、キレイな水以外飲ませるんじゃないよ。薬と食べ物は、私が調達してきてやるよ」
「ありがとうございますクポ」

トイレにこもったまま、ヨックは出て来ない。
サンドリアにいる知り合いと考えて、すぐに浮かんだのはうずらとチリだ。
どっちにしようか考えた末、私はチリのモグハを訪ねることにした。
彼女なら貸し借りなしで、弱っている者を放ってはおけないだろうと思ったからだ。
そして案の定、友人が腹を壊して死にそうだと相談に来た私に、自分に出来ることなら何でも手伝うと言ってくれた。
「ミルク粥を作ってさしあげますわ。それから、お腹のお薬も必要ですわね」
「悪いね、助かるよ。感謝する」
礼を言うだけならタダである。
私のケチ根性など気づきもせず、チリは女神のように微笑んだ。


あれは、私が神殿騎士団の特別隊に配属されてすぐの頃だ。
隊長からもらったポーションを飲んで、えらい目に遭ったことがある。
スリを追い掛けて捕り押さえた後だったし、喉が乾いていたこともあり、私はそれを一気に飲みほしてしまったのだ。
たいした量ではなかったが、その直後、口の中に広がった腐敗臭たるや、想像を絶するものだった。
胃から込み上げてくるものを必死に堪えたのは、その前に食べた昼飯が勿体無かったからに他ならない。
すぐに隊長に文句を言いに行くと、逆にバカかと言われてしまった。
「冒険者に扮して、これと同じものを売っている者を捕まえろと言ったのに、飲んでどうする」
その日の朝私は、時間をかけて清書した書類を隊長に提出したのだが、それを一瞥しただけで字が汚いと言われ、ショックと腹立ちでイライラしていたため、話をよく聞いていなかったのだ。
神殿の聖水で作った特別製のポーションだという物を、冒険者相手に高額で売り歩いているタルタルの商人がいるという。
私が受け取ったポーションは、被害者からの証拠品であり、別に私にくれたわけではなかったのだ。
そしてその中身はポーションなどではなく、腐った水だった。
悪質極まりない犯罪に、私たちは犯人を捜した。
だが結局、私が三日三晩腹痛と闘う羽目になっただけで、犯人は捕まらなかったのだ。

あれから何年経っただろうか?
再びサンドリアに現れたのならば、今度こそ捕まえてやろうと私は鼻息を荒くした。
あの時の犯人の情報をもう一度詳しく聞くために、私は隊長に会いに行くことにした。


ウィンダスにある隊長のモグハを訪ねると、残念なことにサンラーはいなかった。
用があるのは隊長だが、会いたいのはサンラーなのだ。
どこへ行ったのかとモグに聞くと、目の院に本を借りに出掛けていると言う。
仕方がないので、サンラーが戻るのを待つ間に、私は隊長から話を聞くことにした。

隊長はテーブルに頬杖をついて、手にしているフォークで皿の上の豆を転がしていた。
目の前に腰を下ろした私を不機嫌そうな目つきでチラリと見ただけで、何をしているのか聞いても答えない。
「サンラーさんに叱られたクポ」
代わりにモグが教えてくれた。
「いつもいつも豆を残しているから、きちんと食べ終わるまで席を立ったらダメって言われているクポ」
隊長は、豆が嫌いだ。
理由は 「なんとなく」 だと言っていた。
なんとなく嫌いなだけで食べ物を残すなど、食うことに困ったことのない坊ちゃん育ちめ!
おまけに、サンラーに叱られるなど、羨ましすぎるっ!
私も叱られたい!
サンラーに叱ってもらうには、何をすればいいだろうか?
おだんごを突っついてみるか?
それとも、ローブを捲ってみるか?
だが、そんなことをして嫌われないだろうか?
叱られたいが、嫌われたくはない。
クソッ、どうすればいいんだッ!?

「何の用だ?」
「は?・・・あぁ」
一瞬ここへ来た目的を忘れた私だが、「これを見てくれ」 とテーブルの上に 『超高級ポーション』 とラベルが貼られたビンを置いた。
「見覚えない?」
「これがどうした?」
興味なさそうに豆を転がしている隊長に、私は友人が被害に遭ったと話をした。
「同じ犯人だと思うの。あの時の犯人の情報、知っていることを教えてほしい」
私が言うと、隊長は 「情報?」 と顔を上げた。
そして、思い出すように視線を宙に彷徨わせた後、豆の乗った皿を私の方へと押しやった。
教えて欲しければ、食えということか。
「ったく、豆の何が嫌だっていうの」
私は腰を浮かせて隊長の手からフォークを引ったくり、皿を持って口に当てると、掻き込むように豆を頬張った。
柔らかく煮てある豆は、程よい塩加減で美味かった。
「クポーッ! ご主人さまは、ズルをしたクポ! サンラーさんに言いつけるクポ!」
「俺のせいじゃない。こいつが勝手に食ったんだ」
「なに見え透いたウソを言ってるクポ! モモさんも、食べるならテーブルマナーを守るクポ! 行儀が悪いクポ!」
お代わりはないか聞いてみようと思ったが、モグがうるさく説教を始めたので諦めた。
何だって隊長のところのモグは、こんなにガミガミと口やかましいのだろう。
小言を言い続けるモグを残し、隊長と私はモグハを出た。

「で、情報を聞きたいんだが」
水の区へ出る階段を降りた所で、私は足を止めて隊長を見た。
すると隊長は 「あぁ」 と顎を上げて、「タルタルの男だ」 とだけ言う。
「そのくらいは知っている」
「以上だ」
「・・・は?」
「それしかわからんから、犯人が接触してくるように、冒険者を装えと言ったんだ」
「他に、何か入手した情報はないの?」
「あったら言っている。極秘にする意味がわからん」
つまり、手掛かりなど何もないってことか。
「チッ! 無駄足だった」
私が舌打ちすると、隊長は腕組みをした姿勢で私を見下ろした。
「サンラーの豆が食えたんだから、ありがたく思え」
「私が食ってやったんだから、ありがたく思え」

こうなったらヨックを囮にして、再び偽ポーション屋が現れた所を捕まえるしかない。
私はあの時の恨みを、忘れてはいないのだ!
あのポーションを飲んだせいで、私は腹痛を起こした。
おかげで、隊長のおごりだという飲み会に行けなかったのだ。
タダで飲み食いできる機会を、一度失ったんだ。
必ず捕まえて、騎士団に引き渡してやる!

と、その時、バタバタと慌ただしい足音が聞こえた。
顔を向けると、1人のタルタルが走って来る所だった。
そして階段の下に立っている私に気が付き、両手をブンブンと振り回して近づいて来た。
「おお、君は護衛屋のモモ君じゃないか。いいところで会った!」
そのタルタルは、私が何度かラバオで護衛の依頼を受けたことのある客だった。
「オットーさん、慌ててどうしたの?」
「今すぐ頼む、おいらを安全な所まで護衛しておくれ」
「安全な所って・・・何があったの?」
「おいらの商売を邪魔する奴に、追われているんだ。捕まったらヒドイ目に遭わされる」
オットーさんは、各地を回ってアイテムの売り買いをしている雑貨屋だ。
支払いに気前がいいので、彼は私の優遇リストに載っている。
そんな彼の依頼なら、何を置いても受けるに決まっている。
「とりあえず、私のモグハに匿ってあげるよ。それから落ち着き先を検討しよう」
「助かる!」
偽ポーション屋のことは、オットーさんを無事に逃がしてから考えよう。
それまでにはきっと、ヨックの体調もマシになっているはずだ。
ヨックのことは、チリに任せておけばいいだろう。
私は 「それじゃ」 と隊長に挨拶をして、オットーさんを連れてクリスタルに飛び込んだ。

そのすぐ後、切れたロープを手にしたクルクが 「逃げられた!」 と言いながら走って来たことを、私は知らない。






いつも遊びに来てくれてありがちょん(・▽・)
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【2017/05/08 23:59】 | * クルク一家
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