2度目のヴァナディール ソロ活動中の妄想屋クルクと仲間達。
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こんにちは、うずらよ。
呼びにくかったら姫でいいわ。
それはともかく、ココはどこかしら?

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チリちゃんとモモちゃんはどこ?
確か3人で、ジュノで飲んでいたはずよ。
それでアトルガンの話になって、チリちゃんは何年か滞在していたことがあるし、モモちゃんはこの間帰って来たばかり。
あたしは行ったことがなくて、行きたいわって話していたんだっけ。
前にぴよが、アトルガンへの渡航免状発行は天晶堂が裏で仕切ってるって言っていたから、あたしたちは酔っぱらった勢いで天晶堂に行ってみたんだわ。
免状の発行には、アイテムかお金が必要って言われたんだっけ。
それでたまたまお金を持っていたあたしは、ポーンと気前よく支払ったのよね。
そうしたら、0時過ぎにもう一度来いって言われて・・・。
時間までお店で飲み直していたんだけど、チリちゃんとモモちゃんは酔いつぶれちゃったのよね。
だからあたしは2人を置いて、天晶堂に行ってみたんだわ。
それから・・・?

おかしなことはされていないみたいだし、持ち物に地図が入っていたわ。
地図には 「ワジャーム樹林」 って書いてある。
ワジャーム?
それってどこ?
シグナルパールで梅ちゃんに聞こうと思ったけど、こんなわけのわからないいきさつを話したら、絶対に怒るに決まってるわ。
地図をよく見ていたら、右の方に 「アトルガン白門」 って書いてあるから、きっとここはアトルガンね!
っていうか、何なのよ?
ギルを払うと、転送サービスしてくれるわけ?
地図付きで、こんな変な場所に!?
どうして街中じゃないのよ!?
全くもう、帰ったらクレームつけてやらなくちゃ!
まあいいわ。
側にチョコボサービスもあるし、危険はないはず。
たまにはこんな冒険もいいじゃない?

段差で登りにくい場所や草むらでわかりにくい道はあったけど、地図を見ながら、なんとかあたしは町へ辿り着いたわ。
たぶん、白門っていうところよ。
白門の地図がないからどこがどうなっているのかよくわからなくて、ウロウロしていたらシャララトっていうお茶を飲ませてくれるお店があったの。
あたしはチャイをいただいて、やっと一息つけたわ。
チリちゃんとモモちゃんはどうしているかしら?

地図屋の場所を聞いて向かっている途中、クリスタルがあったから登録しておいたわ。
これであたしも、いつでもアトルガンに来れるわね。
あ、そうだわ。
取りあえずジュノに戻って、チリちゃんとモモちゃんに知らせなくっちゃ。
それからチリちゃんはアトルガンの地理にも詳しいでしょうから、一緒に来てもらって地図を買ったりモグハの位置を教えてもらったりしましょ~っと。



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目が覚めたら、うずらがいなくなっていた。
モグハかと思ったが、戻っていない。
そういえば夕べ、アトルガンに行きたいとか行くとか言って、天晶堂へ行ったっけ。
半泣きでオロオロしているチリを連れて、私は天晶堂へ行ってみた。

「あぁ~、あのお嬢さんなら、今頃アトルガンに着いてるだろ」
天晶堂のエルヴァーンが、顎に手を当ててニヤニヤしながら言った。
アトルガンのワジャーム樹林には、強い磁力を発している場所があって、そこへテレポさせたとかなんとか。
「地図をカバンに入れておいてやったから、迷子になることはないだろうよ」
「モンスターに襲われたらどうしますのッ!?」
「近くにチョコボ屋がいるから大丈夫だろ~? まぁ、目が覚めてパニックにならなけりゃ、モンスターに襲われて死ぬこたぁないと思うぜ」
「そ、そんな、そんないい加減な!もしもうずらちゃんの身になにかありましたら、私許しませんわよ!!」
泣きながら怒るチリをなだめながら天晶堂から連れ出し、私たちはさてどうするか話し合った。
2人とも、すぐにアトルガンへ行くという意見は一致したが・・・。
「行き違いになるといけないから、チリは白門で待っていて。私はワジャームへ探しに行く」
「そんな、じっと待っているだけなんて。私がうずらちゃんを探しに行きますわ」
「地図があると言っても初めての土地だ。もし迷っていて、チョコボの騎乗時間を過ぎてしまっていたらどうする?」
モンスターに見つからない場所に隠れていればいいが、もしも襲われているところに運よく出くわしたとしても、チリでは戦えない。
そう言うと、チリは素直に頷いた。

「モモさん、アトルガンへ戻っても大丈夫ですの?」
クリスタルの前に着いた時、チリが訊ねた。
今はアトルガンにいた時のバカげた髪型ではないし、武器も違う。
それに、うずらを見つけたら長居をするつもりもないからな。
アトルガンにいた時のことを思い出した私は、もう一つ思い出したことがあった。
「ヤバい。うずら、シグナルパール持っていたよね?」
いきなりどこだかわからない場所に飛ばされて、隊長に助けを求めないだろうか?
酒に酔って天晶堂に行き、アトルガンへテレポしてもらったはいいが、ココはどこだかわからないなんて連絡されたりしたら、いくら隊長でも怒るに決まってる。
そしたら当然、一緒に酒を飲んでいた私たちにとばっちりが来る。
それだけならまだしも、もしもうずらに何かあってみろ、今度は殴られるだけじゃ済まないぞ。
するとチリも、息を飲んで両手を口に当てた。
「もしも万が一うずらちゃんが怪我でもしたら、私・・・死んで兄様にお詫びをしなければっ」
「・・・ちょ、ちょっと、それはオーバーじゃない? だって、チリのせいじゃないし」
「いいえ! うずらちゃんと一緒にいながら、酔い潰れてうずらちゃんを危険に晒してしまうことになったのですもの!」
チリはうずらの身をただひたすら心配しているが、もちろん私だって無事でいろと祈っているが、自分の身だって案じているんだ。
何はともあれ、とにかくアトルガンへと、私たちはクリスタルに消えた。
その時点ですれ違っていたとも思わずに・・・。



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やっぴ~、クルクだよ~(・▽・)ノ

うずらをアトルガンデビューさせたよ★
目的はもちろん、コルセアアタイアを着させたいからねw
そのために、限界突破もさせたし。

んで、サックリと用を済ませて帰って来ましたwww

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じゃ~ん♪
帽子はいりません。
実は、ヤズゴワのコンビに負けたのww

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これさ、も~ぅちょっと太ももが見えてたらいいのにね!
ズボン、も少し短くしてくれたらいいのになって思わない?
上着って、前でリボン結んでるだけじゃん?
リボンがほどけたら、エッチいよね?(*´▽`*)

上位の青いヤツは色がキレイだけど、首回りをガードしすぎ。
デザインはこっちの方が好きだなぁ~。

満足~♪
梅と並べたSS作りたかったけど、大変だから誰か作ってww





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【2017/11/19 23:59】 | * クルク一家
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やっぴ~、クルクだよ(・▽・)ノ

11日から、ボナンザが始まるね★
今回のボナンザ、ハズレがボナンザボールじゃなくって 【ダイヤルキー#ANV】 なんだよね!
こりゃまた大変だw

うちのみんな、お金持ってるのかなぁ?
たまにはボスっぽいこともしてあげようかな~。
ってなわけで、うずらのお店に集まってもらったよ(・▽・)ノ

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みなさーん、明日からボナンザが始まりまーす。
そこで、みなさんにはボナンザを10個ずつ買ってもらうことにします。

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ボナンザって、1個2000ギルですよね?
今回は、ハズレてもゴブ箱のカギだっけ。

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物によっては、ボナンザボールの方が良かったってこともあるよ。

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でも、二度楽しめるよね。

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でね、当選発表は来年だし、今はちょっと早くて中途半端な時期だけど、一年間お疲れ様ってことで、クルクがみんなにボナンザをプレゼントしようと思いまーす!

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すげぇ、太っ腹じゃんか!

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当たったアイテムはもらってもいいの?

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もちろんだよ~。
換金して回収とかないから。

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嬉しいですけど、クルクさんが全てを負担って、大変じゃありませんか?

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心配ない、クルたんは金持ちだ。

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梅ほどじゃないよ。
クルク知ってるんだから。
梅はクルクの倍お金持ちなんだよ。

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あら、そうなの!?

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ヤベェ、うずらさんの目が光ったぞ。

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サンラーとリムが嫁に行く時の持参金だ。

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え!?

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私もですの!?

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ただし、俺に勝てない男には嫁にやれんがな。

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それでエスカでレベル上げしてたのかよ。

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それは別口だ。

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チリさんはともかく、サンちゃんはまだまだ先でしょ。

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わからないよ?
愛に年齢は関係ないもん♪
手に手を取って逃避行とか、ロマンチック~。

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・・・クマ・・・。

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あーっ、ゴメン梅兄!
クマはそういうつもりで言ったんじゃないよ!

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へ?

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ぴよ、お前もだ。
リムはともかく、だと?

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こ、言葉の綾だって!
お嫁に行かせたくないなら、なんでお嫁入りの持参金なんか貯めてるんだよ。

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私のことよりも、兄様はご自分の・・・。

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いいわねぇッ! 羨ましいことッ!
あたしにはお嫁入りの持参金を用意してくれる人がいないから、いつまで経ってもお嫁に行けないのかしらッ!!

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おや?
確か君は、俺がアトルガンに行っている間に、宝石商だという富豪に見染められただの、どこぞの貴族に口説かれただの、アドゥリンから来た実業家に求婚されただのと言っていなかったか?
まとめて面倒をみてもらいたまえ。

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何ですって!?
ちょっと梅ちゃん、あなたアトルガンから帰った後、また行方不明になってたわよねッ?
何で行き先を言わないの!?
連絡もつかないし!

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エスカはシグナルパール通じないもんな。

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その前に、アビセアにも行かせてたんだよね。
あっちもシグナルパール、繋がらなかったっけ。

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あの、あの・・・(オロオロ)

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兄様ったら・・・うずらちゃんも・・・(オロオロ)

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サンラーとチリよ、犬も食わん痴話喧嘩だ、放っておけ。
それよりも、今回の当たりアイテムのリストがあるぞ。

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クルクさぁ、見ても何だかよくわかんないんだよねぇ~。

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アタシは、持ってないコスチューム装備が欲しいな。
だから、えっと、5等だといいな・・・エヘヘ。

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だったら、下一桁を連番にすれば確実だよ。

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運試しだもん、それじゃつまらないよ~。
運が良ければ、何個も当たっちゃう♪

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わたしはどれがいいかなぁ。

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考えなくたって、サンは全部ハズレに決まってる。

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イーだ!
お兄ちゃんこそ、ボナンザは全部ハズレて、ゴブさんの宝箱も骨くずしか出ないわよ。

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ボクもサルサにボナンザ買わせようかな。

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でもどうせ、景品の交換はお前が指示するんだろ?

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当然じゃない、ボナンザを買うっていうバイトだもん。

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ももんがも呼ぼうと思ったんだけど、連絡付かなかったんだよねぇ。

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お仕事で、お出かけになっていらっしゃるのかしら。

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あら、だったらお金だけ送ってあげたら?

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やめた方がいい。
どうせ酒代に消える。

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痴話喧嘩はもう終わったの?
まぁ、ももんがは梅の関係者だから、梅が買ってあげた方がいいかもね。

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お断りだ。

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クルクは明日買いに行く予定だけど、一緒に行く人いる?
それ以外の人には、ここでお金渡すよ。

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オレ行く。
爺やも来いよ。

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かしこまりました。

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サンラーも一緒に行くか?

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はい!

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ボクも、バスに戻る前に買って行く。

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ぴよくん、アタシたちもウィンダスに行かない?

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そうだな、売り場が変われば、ツキも変わるかもしれないし。

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うずらちゃん、私たちもご一緒させてもらいましょうよ。

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そうね、そうしましょうか。

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じゃあ、明日の正午に、ウィンダスの港に集合ね!

結局、みんなウィンダスで買うことになったよ。
いっぱい当たるといいね★(・▽・)

その頃・・・。


---*---*---*---

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おなかすいたのニャ。
かぼすさま、きょうもかえってこないのニャ。
あいにいったら、またおこられちゃうニャ?


---*---*---*---

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明日からボナンザが発売か。
1個2000ギル・・・。
当たるとわかっていれば買うんだけどな。
買わなくちゃ当たらないしィ。
隊長買ってくれないかなぁ。
明日、昼メシのついでにタカリに行ってみるか!


---*---*---*---

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やあ、いいところで会ったね!

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こ、こんにちは。
今日は何でしょう?

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うん、明日からボナンザが発売なのは知ってるよね?

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はい、ボクも3口くらい買う予定です。

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3口しか買わないの?

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お金があまりないので。

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実はここだけの話、明日からの発売に先駆けて、特売をやってるんだよ。
限られた人にしか声をかけないんだけど、日頃の感謝を込めて、今ならボナンザボール10個セットで18000ギル!
と言いたいところだけど、キミはお得意様中のお得意様だからね、17000ギルでどう!?

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そ、それは!
でもボク、16000ギルしか持ってなくて・・・。

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あー、そうかぁ、残念だなぁ。
だったら、16000ギルと持ち合わせてるアイテムでもいいよ。

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本当ですか!?
えっと、土のクリスタルが2つと風のクリスタルが1つ、それからコウモリの羽根が2つ。

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オーケー、それでいいよ。
じゃあ、ハイ。
落とさないようにね。

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ありがとうございました。
・・・わぁ、10個も買っちゃった( *´ ー ` *)
スゴイや、当たるといいな♪
でも今回は、ハズレてもゴブ箱のカギだから・・・。
あれ? 番号が書いてない・・・?
どうして?
だって、ボナンザボール・・・え、ボナンザボール!?
ボ、ボナンザボールって、ハズレの景品で、投げてスッキリするっていう、あれ!?
クジはボナンザボールじゃなくて、ボナンザマーブルだった!!
しゃ、社長さん!! やっぱりボク・・・いない・・・。
うぅぅ・・・。





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【2017/11/10 23:59】 | * クルク一家
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視界がクリアになる。
目の前に、扉の取っ手がある。
私はそっと、それに手を伸ばした。
ゆっくりと、時間をかけて、少しづつ、回す。
気の短い私だが、こればかりは堪えどころだ。
もしも部屋の窓が開いていたら、わずかでも扉が開くことで、空気の流れが変わってしまう。
でも、人払いをするほどだから、それはないだろうと予想する。
ノブを回しきった私は、一度深呼吸をして、ドアを引こうと指先に力を込めた。
その時・・・。
「モモガー! どこにいるのー!?」
リエッタの私を呼ぶ声が、裏口の方から聞こえてきた。
チッ、あのバカ娘!!
そして部屋の中からは、椅子を引く音と 「娘ですわ」 というマジュリの声が聞こえた。
私はとっさにドアノブを離し、身を翻して自分の部屋へ駆け戻ると、開けたままの窓から外へと飛び出した。
そうしながら、ドアノブから手を離した瞬間、回したノブが戻る 「チャッ」 という音を確かに聞いた自分に、激しく舌打ちをした。
「モモガー、出てらっしゃい! いつまで私を待たせるの!?」
裏口の前で叫んでいるリエッタを無視して、私は一度ゴゼー商会から離れた。
そして、息を整えてから、何食わぬ顔をして、リエッタの後ろから 「ここにいるよぉ~」 と姿を見せた。
「もう! 何やってるのよ!」
「何って、だぁってさぁ~、外に出てろって言われたのにぃ、戻るわけにはいかないでしょぉ~?」
その時、裏口の扉が開き、マジュリが現れた。
「二人共、ここで何をしているの!?」
「あ、ママ。モモガーがね、私をシャララトに置き去りにしたのよ」
はぁ!?
ふざけんな、このバカ娘!
「リエッタの方が、先にここに着いてたじゃなーい。ワタシはそこの屋台でぇ」
「お黙りなさい」
「・・・・・・」
マジュリの後ろから、黒いフードを真深く被り、口元を布で覆った男が出て来た。
唯一見えるだろう目元は、フードの影になっていてこちらからは見えない。
その傍に、全身を黒い鎧に包んだ男が立っている。
兜から見える顔立ちや体つきで、ヒュームだとわかった。
男は腰に携えたロングソードに手をかけて、こちらを見ていた。
かなりの使い手だ。
フードの男が 「では、また後日」 と呟くように言うと、マジュリは大袈裟なほど深い貴婦人の礼をして見送った。
黒い鎧の男もフードの男と一緒に行くのかと思っていたら、男はマジュリの耳元で何か囁いた。
マジュリは頷き、「モモガー」 と私を呼んだ。
「あなたはこの人を送って行きなさい」
「え・・・ど、どこへ~?」
嫌な予感しかしなかった。
だって、どこに行くにしろ、この男は私よりも強く、送って行く理由などないように思えたからだ。
マジュリは男に頷き、リエッタの肩を抱えるようにして裏口から中へ入ってしまった。

「付いて来い」
男は低く掠れたような声で私に言うと、歩き始めた。
「あのぉ、どこへ行くんですかぁ?」
男の後を追いながら私が尋ねると、男は立ち止まり私を見つめた。
その視線が、つ・・・と足元を見る。
そして再び私の顔を見た。
なに?
そう思った瞬間、私は重大なミスを犯していたことに気づいた。
スニークがかかったままだ!
足音を確認するために、私を歩かせたのか?
表情を変えないようにしたつもりだったが、おそらく私の焦りは見抜かれていただろう。
「来い」
男が私の腕を掴み、引っ立てるように歩き始めた。
鼓動が速くなる。
どうしよう!
考えても、最悪の場面しか浮かんでこない。
私はきっと、殺される。
肝心なことは、何一つ聞いちゃいないってのに!
素早く辺りに視線を巡らせたけれど、誰も私を見ていなかった。
いや、ただ一人、窓を鏡代わりにして帽子をかぶり直している男と、窓ガラス越しに目が合った。
ぴよ!
ここで暴れて騒ぎを起こすか?
そう思ったが、ぴよはフイッと体の向きを変えて、反対方向へと歩いて行ってしまった。
隊長に連絡してくれるだろうか?
でも、ぴよにとって私は、助ける価値のある者だろうか?
協力してくれているが、それは隊長が頼んだからだろうし、そもそも隊長は、私が言い出さなければアトルガンになど来なかったはずだ。
そうしている間にも、私は男に引かれるように連れ去られようとしている。
暴れるなら今か?
「無駄なことはするな」
ボソリと男が言った。
「う、腕・・・痛いんだけどぉ。放して・・・イタッ」
男は腕を掴む手に、更に力を加えた。
「逃げたりしないから、力を緩めてよ」
「・・・・・・」
無駄のようだ。
そして、白門の港へやって来たと思ったら、バフラウへ出る通路に入って行く。
外に出てから殺されるのか。
そりゃ、街中では殺せないもんな。
だけど、大人しく殺されたりするもんか。
精一杯抵抗して、隙があれば逃げてやる。

が、出来なかった。
バフラウ段丘に出た途端、男は掴んでいた私の腕をねじ上げて地面に膝をつかせると、私の顔を蹴り上げた。
火が点いたように熱い痛み。
そして地面に生えた草の上に、ポタリと赤い雫が落ちた。
チクショウ!
涙が浮かんだのは、痛みのせいだ。
片手で鼻を押さえたが、骨は折れていなさそうで安心した。
これでも一応女なんでね、曲がった鼻で一生を過ごすなんてゴメンだからさ。
その一生も、もうすぐ終わりにならなけりゃ、だけどね。
「逃げようとしたら、その場で殺す」
そう言ってから、男は取り出した笛を吹いた。
すると、どこで待機していたのか、チョコボがやって来た。
この男、冒険者か?
いや、冒険者でなくても、チョコボホイッスルを持っている者はいるか・・・。
男はチョコボに取り付けられていたカバンの中からロープを取り出し、私の両手をきつく縛った。
そしてチョコボに跨り 「走れ」 と短く言った。
グンッと縛られた両手を引かれ、私が前のめりに倒れてしまうと、男は一度チョコボの足を止め、「引きずられたいのか?」 と私を振り返った。
「・・・どこに、行くの・・・?」
立ち上がりながら尋ねてみたが、もちろん答えてはくれない。
鼻血は止まっているようだけど、ジンジンとした痛みは続いていた。

私はチョコボに引かれて、どこかわからない場所へと走らされていた。
チョコボの速度は、私が追いつけないくらいに早く、転倒しない程度に緩やかだった。
体力には多少の自信はあった。
けれど、あちこちに段差があって、石や枯れ枝が落ちている足場の悪い道で、私は何度もつまづき、その度に数メートル引きずられて止まった。
そしてまた走らされるという繰り返し。
流れ落ちる汗が目に入り、それをぬぐうことも出来ない。
何度目かにつまづいた時、「少し休ませて」 と頼んだが、チョコボ上から私を一瞥しただけで、再びチョコボを走らせた。
もうどのくらい走り続けているのか・・・。
息は上がり、呼吸はあえぐように酸素を求める。
顎を伝って落ちる雫に赤いものが混じりだし、止まっていた鼻血がまた出ているのだとわかる。
何度もつまづいたせいで、膝が痛かった。
縛られている手首も、ロープで擦れて血が滲んでいる。
しかし、それらの痛みや苦しみが、私から気力を奪うことはない。
目の前で私に背を向けているこの男を、必ず殺してやる。
私の背中には、まだ槍があった。

移動中、一度だけ冒険者を見かけた。
彼らは3人で、樹人と戦っていた。
その中の誰一人として、通り過ぎる我らに目を向けた者はいなかった。

やがて、ぽっかりと空いた洞穴に辿り着いた。
チョコボが立ち止まった時、私は崩れるように膝をついた。
洞窟から、熱を帯びた風が吹いてくる。
この先は、ハルブーンか!?
男はチョコボから降りると、私の手首に繋がっているロープを握り、「立て」 と言った。
「み、水・・・」
「じきに死ぬんだ、必要ない」
「・・・ところで、ワタシは・・・どぉ~して、殺される、のかなぁ?」
時間を少しでもかせぐために、喘ぎながら訊いてみた。
すると男は、「心当たりがないとでも言うのか?」 と私を見下ろした。
「・・・ない、なぁ・・・」
「それならそれでいい。立て」
ロープを引っ張られ、私は力の入らない足でヨロヨロと立ち上がった。
しかし、すぐにグシャリと倒れてしまった。
男の手が、腰の剣に伸びた。
私は 「立つよ、立つから、ちょっと待って」 と、力を振り絞った。
ふくらはぎが攣りそうだ。
何とか立ち上がった私は、「前を歩け」 と男に言われ、足を引きずるようにして洞窟へと入って行った。

「ここってハルブーン?」
「あんたの名前は?」
「ワタシが殺される理由が知りたいんだけどぉ?」
そう、何度か話しかけてみたけれど、男は一度も答えなかった。
コウモリやイモムシがウロウロしていたけど、襲って来る気配はない。
しかし、とにかく暑い。
赤くひび割れた岩肌から蒸気が出ていて、視界が陽炎のように揺らいでいる。
「ねぇ、そんな鎧着てて、暑くない?」
振り返って訊ねると、男は少しだけ口角を上げたように見えた。
そして・・・。
「女」
「・・・ワタシのことぉ? モモガーって名前があるんですけどねぇ~」
「お前の知っていることを話せ」
「知ってることぉ? え~? 何についてぇ?」
「とぼけるな。盗み聞きをしていただろう」
「いつぅ~? 何かさぁ~、勘違いしてないぃ~?」
私は立ち止まり、男を正面から見た。
「リエッタとシャララトにいたんだけどぉ、ワタシ、あの子キライなのよぉ。だからぁ、先に戻るねってシャララトから出たんだけどぉ、お客さんが来るからぁ、外に出てろって言われたじゃない~? それでぇ、屋台とか見てブラブラしてたらぁ、リエッタが呼ぶからさぁ。後ろから脅かしてやろぉ~って思って、サイレントオイルで足音を忍ばせて近づいたらぁ、何か知らないけどぉ、酷い目に遭って殺されそうになっちゃってるわけよぉ~」
精一杯間延びした口調でしゃべる私を、男は無表情で眺めていたが、私が口を閉じると 「前を向いて歩け」 と言った。
何なんだよ。
舌打ちしたい気持ちをグッと抑え、私は 「早く帰ってお風呂に入りたぁい」 と言った。
本当は、風呂よりも酒が飲みたかった。
そう言えば、最後に酒を飲んだのはいつだったか?
用心棒の仕事に就いてから、一度も酒を飲んでいない。
チクショウ、もしも本当に殺されるんだったら、その前にうずらの店で、最高に美味い酒が飲みたいよ。

不意に、肩を掴まれて私はビクッと足を止めた。
何をされるのかと思っていたら、背中に担いだままだった槍を取られてしまった。
男はその槍を見て、「たいして使っていないな」 と見抜いた。
「そぉ~よぉ~。新しくしたばっかりだも~ん」
「フン」
私の返事を鼻で笑い、男は槍を捨てると 「歩け」 と私の肩を押した。
「ちょっとぉ~!」
あれがなかったら、お前を串刺しに出来ないじゃないか!

少し開けた場所に出たと思ったら、そこは火の海だった。
いや、溶岩が踊る池の上を、岩の橋が向こう側へと伸びている。
向こうに誰かがいる。
そう思ったが目をこらして見れば、それはトロールだった。
男は私を橋の上まで進ませると、「飛び降りろ」 とこともなげに言った。
は?
飛び降りる?
冗談じゃない!
私は振り返り、「こんな所から飛び降りたら死んじゃうじゃな~い」 と言おうとした。
そう、私は振り返った。
その瞬間、男もまた後ろを振り返りながら、私を突き飛ばしたのだ。
私はよろめき、体が大きく傾いた。
このまま倒れたら、下は溶岩だ。
そう認識するよりも先に、何もなかったはずの空間に剣の切っ先が現れ、男の頭上へと振り下ろされるのが視界に入った。
それとほぼ同時に、ガキンという剣と剣がぶつかり合う音がした。
そして、おそらくはそれとも同時に、私の足は地面を離れた。
死んじゃう!!
ぎゅっと目を瞑ったのと、手首に激しい衝撃が走ったのも、また同時だった。
痛いなんてものではなく、関節が外れたかと思ったほどだ。
私はうめき声を上げ、目を開けた。
目の前には、何もない。
下を見れば、足の下方でボコボコと溶岩が泡立っている。
私は、両腕で橋から吊るされていた。
そして、少しずつロープが引き上げられている。
耳にはまだ、剣戟の音が聞こえてきている。
見上げている視界に、金髪が見えてきた。
そして、「間に合ってよかった」 とぴよが言った。

バフラウを走らされている間、どうにかしてロープを緩められないかと手首を動かしていたが、ロープは手首に食い込む一方で、これっぽちも緩みはしなかった。
今となっては、それがありがたかった。
私には、何も掴まるものがない。
私の体を落下から支えているのは、手首にきつく巻かれたロープだけなのだ。
「もうちょっと、我慢してくださいね」
ぴよがロープを引き上げながら、私に言った。
「あいつは・・・?」
「梅兄と応戦中です。・・・大丈夫かなぁ」
チラリと後ろに視線を向け、すぐに戻した。
ぴよの額には汗が浮かんでいる。
いくらぴよでも、人一人を引き上げるのは力がいるだろう。
おまけに、私はミスラと違って軽くはない。
それでも、橋の岩肌に指先が触れた時は、もっと早くと思ったりもした。
思ったりもしたが、「早く上げろ!」 と口に出た。
ぴよの横に、トロールの姿が見えたからだ。
トロールが近づき、棍棒のようなものを振り上げた。
「ぴよ!」
それでもぴよは意に介さず、歯を食いしばって全身で私を引き上げ続けている。
トロールの腕が振り下ろされた。
が・・・空振り?
「あと、3回・・・までっ」
空蝉か?
岩肌に手が擦れているが、そんなのは全く気にならなかった。
早く・・・あと2回・・・早く!
私が橋に上がれば、未だ続いている戦いに加われる。
指先が、橋の上に出た!
振り下ろされる棍棒の、空を切るブンという音が聞こえた。
あと1回!
ぴよは一度大きく深呼吸すると、「せいっ!」 と掛け声をかけて私の体を持ち上げた。
肘がかかった!
ぴよの 「せーの!」 という掛け声に合わせて、私も肘に力を入れて懸垂をする。
顔が橋の上に出たと同時に、棍棒の風圧を頬に感じた。
最後の空蝉が消えた。
そして目の前には、片膝をついて肩で息をしている隊長がいた。
鎧の男も足を大きく広げてはいるが、立っている。
剣を構え、男が踏み出す。
その瞬間、トロールの棍棒がぴよを弾き飛ばした。
引っ張られていた力がなくなり、私は肘と顎で橋の端に引っかかっているだけに過ぎない。
持たない・・・っ!
起き上がろうとしたぴよを、トロールがもう一撃加えると、ぴよは倒れて動かなくなった。
トロールは興味をなくしたのか、ブラブラと棍棒を揺らしながら橋を渡って行った。

隊長は、男の攻撃を受けるだけで精一杯のようだ。
けれどそれも、数回に一度は受け損ねている。
そして私も、そろそろ限界だった。
こればかりは、どうしようもない。
だけど、だけど・・・っ!!
ドォーンという音がして、橋を渡ったトロールが倒れた。
「ヒーローは、必ず遅れてやって来る! クルたん参上!」
飛び跳ねるように、クルクが走ってやって来た。
クルクの小さな姿が、これほど頼もしく思えたことはない。
ホッとしてしまった。
自分の状況も忘れて、安心してしまったのだ。
引っかかっていた顎がずり落ち、肘に全体重の負荷がかかる。
それでも自力で懸垂を試みる。
しかし、それまでさんざん引っ張られ、転んで打ち付けられてきた腕では、自分の体重さえ支えることが難しい。
歯を食いしばり、唸り声を上げても、顎は橋の上に出ることはない。
クルクが男の懐に飛び込むのを見て、それから5秒後。
声は出ず、肺から空気を絞り出すような音が口から洩れ、そして視界が沈んだ。

再び、手首に衝撃が走った。
私の真上に、隊長の顔があった。
橋の上に腹這いになり、私の手首を掴んでいた。
「た・・・いちょ・・・」
隊長の頬には数ヵ所切り傷が出来ていて、血が顎から滴り落ちていた。
そして、腕にも傷があるようで、私の手首を掴んでいる右手からも、血が流れて伝っている。
「ぴよは?」
私が訊ねると隊長は顔を向けて、「気を失っているだけだろう」 と言った。
「私が連れて行かれるのを、ぴよが見ていたんだ」
「ああ、連絡があった」
そう話している間も、隊長の体勢は変わらない。
多分、私を引き上げるだけの力が入らないのだろう。
だとしたら、いずれは・・・。
私の手首を掴む力はそのままで、隊長は目を閉じて「ふぅ・・・」 とため息をついた。
寄せた眉からも、そうとう辛いのだとわかる。
クルクはまだ男と戦っているのだろう。
もしもクルクが負けるようなことになったら、私たちは全滅だ。
ならば今のうち、隊長がクルクに加勢するのがいいだろう。
それには・・・。
「隊長・・・・・・手を・・・」
その先が言えなかった。
私は今まで、何度も死にそうになっている。
騎士団の任務中も、護衛の仕事を始めてからも、そして今回も。
それでも私は、恐怖を感じたことはない。
後になって体が震えて止まらなかったということはあるが、死に直面しているその時には、私は怖いと思ったことがない。
けれど今、私は死ぬのが怖かった。
こんな溶岩の中に落ちたら、熱いと感じる間もなく死ぬだろう。
私が今感じているのは、そういう怖さではない。
人は誰でも死ぬ。
それが遅いか早いかだ。
そう言い聞かせてみても、私はまだ死にたくなかった。
「・・・隊長・・・・・・」
「大丈夫だ」
何がどう大丈夫なのか、何の根拠もない言葉だけど、私は 「うん」 と言って頷いた。

「遅い!!」
クルクが叫んだ。
と、「悪ぃ、剣を取りに行ってたんだ」 とバルファルの声が聞こえた。
「なんだ? クルク、手こずってるのかよ?」
「バルが来るまで、手加減してやってたんだよぅ」
「ぬかせっ!」
「んじゃ、やっつけちまおうぜ!」
バルファルの声からは、余裕すら感じられた。

二人の掛け声と、武器がぶつかり合う音。
そして大技を繰り出す時に生じる光。
じきに終ると思っていた戦いは、なかなか終わらない。
時折後ろを振り返っていた隊長が、「奴は相当な手練れだ」 と言った。
その証拠に、クルクの 「コンニャロメ~!」 という声は息が上がっていて、バルファルの 「しぶといな!」 という声には最初の余裕がなくなっている。
隊長がわずかに体を動かした。
左手で何をやっているのかは、ぶら下がっている私の位置からでは見えない。
「モモ、落ちたらスマン」
「え?」
私の手首を握る右手に、力が加わった。
そして、隊長が上体をずらし後方へ顔を向け・・・。
数秒後、ガンッという発砲音が洞窟内に響き、その衝撃で不安定だった隊長の体が前のめりに橋の上から大きくずれた。
「隊長っ!」
私は自分がその先にいることを忘れ、橋から落ちそうになっている隊長に悲鳴を上げた。
「だっ・・・大丈、夫・・・だ・・・っ」
ギリギリで堪えているのだろうが、最早それも時間の問題に思えた。
と、男のものと思われるうめき声と、「地獄に落ちろー!」 というクルクの声が聞こえ、そして 「大丈夫か!?」 と血で染まった顔をバルファルが覗かせた。
「・・・あ、あいつは・・・?」
「反対側から落ちちゃった」
ヒョコッと顔を見せたクルクも、バルファルと似たようなものだ。
「梅、もうちょっと持ちこたえられる? っていうか、持ちこたえろ!」
クルクの言葉に隊長は声もなく、微かに頷いたように見えた。
私の腕は、もう感覚がない。
私の手首を掴んでいる血にまみれた隊長の手は、指先が真っ白くなっていた。

タルタルが二人だけでは、橋から落下しかけている二人のエルヴァーンを引き上げることは無理だろう。
「バル、ぴよを起こして」
「・・・ダメだ、気を失っててピクリともしないぞ」
「っていうか、何でぴよがいるわけ!?」
「アトルガンなら・・・爺やを呼んでくるか? クリスタルの登録はして・・・あったかなぁ?」
「そんな時間ないよ。あ、そうだ。クルクがももんがの体にロープを巻き付けてさぁ」
「そんなロープがどこにあるんだよ」
私の手首に巻かれているロープは、今は下へと垂れている。
「あ、そうだ、デジョンの指輪はないの?」
クルクの声に、私は 「ポケットに入っている」 と答えた。
両手を縛られている私には、指にはめるどころか、取り出すことも出来ない。
隊長は? と見上げると、死んだような目をしていた。
意識が朦朧としているのか!?
「隊長! 起きてるか!?」
私の呼びかけに、わずかに視線を動かした。
「え、なに? 梅がヤバいの?」
「ここ、暑いしな。早いトコ何とかしねぇと」
そう、暑いし、隊長の上半身は下向きで、頭に血が上ってもいるんだろう。
どうしようどうしようと言い合っているクルクとバルファルの声を聞きながら、今私は不思議と恐ろしさがなくなっていた。
取りあえず、クルクとバルファルとぴよ、そして隊長は生き残れるんだ。
ここで隊長の手が緩んでも、私は大丈夫だ。
そんな風に思っていた。
と、その時・・・。
「あーっ、クルクすごいいいこと思いついた! っていうか、思い出した!」
クルクが叫んだ。
「バル、ぴよをこっちに引きずって来て!」
「おう!」
そうして、クルクが魔法の詠唱に入る。
「女神アルタナの御名において・・・」
魔法は得意じゃないと、言っていた。
魔法を唱えているヒマがあったら、殴った方が早いもんね、とも。
そんなクルクが、魔法で私を救ってくれた。
「・・・テレポホラ!!」

涼しい風が吹いていた。
草と土の匂いもする。
背中に地面が当たっている安心感と、夜空に見えた月の美しさ。
そこは、ラテーヌ高原にある、ホラの岩だった。
大きなクリスタルが、月に反射してキラキラと輝いている。
ああ、生きている。
そんな実感や余韻もなく、「何でもっと早く思い出さないんだよ!」 とバルファルの声が耳元で聞こえた。
「仕方ないじゃんか。だったら、バルがクルクにテレポしろって言ったらよかったんだよ」
「んなこと・・・あの時には思い出さなかったんだよっ」
「クルクだってそうだよ~」
いつも通りの、緊張感のない言い合い。
体を起こすと、私の手首を掴んだまま倒れている隊長と、その側に倒れているぴよがいた。
「ももんが、大丈夫?」
クルクが私の背中を支えてくれた。
「梅さん、手を離してくれ」
手首のロープをナイフで切ろうとしたバルファルが隊長に言うと、「指が・・・動かん」 と呻くような返事があった。
クルクとバルファルの二人掛かりで隊長の指を広げ、バルファルがロープを切ってくれた。
「ちょっと痛いけど我慢だよ」 と言って、クルクが私の指先をマッサージしてくれる。
痺れるような、刺す痛さに顔をしかめていると、「クルたん・・・俺にも・・・」 と倒れたままの隊長が甘えたことを言った。
「バル~、梅の手をニギニギしてあげて」
「オレ~?」
「・・・バルファルでもいい・・・」
「それよりさ」
バルファルが、「気休めかもしれないけど」 と言い、全員に回復魔法を使ってくれた。
そしてクルクも、残っているMPを使い切るまで。

小さな切り傷や擦り傷はふさがり、数日もすれば痕さえ残らず消えるだろう。
クルクが全員の具合を見て回り、「ヒドイね」 と笑った。
とにかく、ぴよ以外の全員の装備が血まみれだった。
「それで、どうするの?」
クルクが隊長を見た。
隊長は体を起こして 「このまま撤退する」 と言い、「いいな」 と私を見た。
私は、頷くことしか出来なかった。
何の成果もなかった。
何も付き止めることは出来なかった。
ただいたずらに、みんなの命を危険に晒しただけで、何一つ・・・。
ポンと頭に乗せられた隊長の手が、「諦めろ」 とも 「気にするな」 とも言っているように感じられた。

「そんじゃこれより、クルクが指揮をとるよ。バルに確認なんだけど」
クルクがバルファルに、倉庫の仕事はどうなっているのか聞いている。
「ぴよさんが駆け込んで来て、オレの親が危篤だとか言ってさ。それで有無を言わさず、実家に帰りますって、辞めて飛び出してきたんだ。だから、問題ないんじゃねぇか」
「ん、ならいいね。でさ、何でぴよがいるんだっつーの!?」
「オレも知らないよ!」
クルっと、二人がこちらを向いた。
私はフルフルと首を振る。
「そぉ~言えばさぁ~、梅には情報屋がいるって言ってたよねぇ~?」
クルクが、座っている隊長の前に仁王立ちになった。
「そうだったか?」
「クルクさぁ、いっつも言ってるよねぇ?」
「・・・勝てば官軍」
「ちがーう! そっちじゃない! 共有すべき情報は隠さず伝えろ!」
「共有すべきでない情報なら」
「口答えするなー!」
隊長の言葉を遮り、鬼教官のように吠えると、クルクは 「教育的指導!」 と言って飛び上がり、ゲンコツで隊長の頭を殴った。
せっかく回復していたのに、隊長は頭を押さえて再び倒れ込んだ。

「さて、どうしようっかねぇ?」
「どうって、何がだ?」
「モグハに戻ればいいんだけど、こんな梅をサンちゃんがいるモグハに帰せないし、クルク達だってボロボロだからさぁ、もうちょっとマシな格好で戻りたいじゃん?」
「モグ達のいいウワサ話になりそうだもんな」
「そうだよ! クルク、梅んとこのモグにお説教されるのイヤだもん! サンちゃんとこに、遊びに行けなくなっちゃう」
バルファルも、爺やがどうとか二人でブツブツ言い合っているから、私が口をはさんでみた。
「なぁ・・・ぴよを起こせないのか?」
今のぴよの状態は、いわゆる戦闘不能ってやつだ。
気付け薬ならぬレイズの魔法で、起こすことが出来るはずだ。
そうしたら、取りあえず何でもいいから、着替えの装備を買って来てもらえる。
テレポが使えるクルクなら、レイズくらい・・・出来ないのか?
すると、クルクが両手をポンと叩いた。
「あぁ! それもそうだね! ももんが、いいトコに気づいたね! これあげる」
クルクがアップルジュースをくれた。
喉がカラカラに乾いていた私は、それをほぼ一気飲みした。
リンゴの甘さが、喉にしみる・・・。
「だから、もっと早く気づけっつーの」
「だったらバルが、もっと早くに気づかせろっつーの」
お決まりのやり取りをしながら、クルクは持っていたカバンの中を探っていたが、「何もない」 と、ポカンとした顔で言った。
使い切ったMPを回復するアイテムが、何もないと言うことなのか?
「梅、起きて! いつまで寝てるの!」
と、クルクは自分で殴って気絶させていた隊長を揺さぶった。
「クルクにリフレかけてってば! 梅ー! 起きろーっ!!」
隊長も、いわゆる戦闘不能状態ってことか・・・。
隊長をガクガク揺すっているクルクの肩に、バルファルがポンと手をかけた。
「ついさっきモモさんに渡した、アップルジュースを返してもらえ」
え・・・。
「それでMPを回復させれば、自分でリフレかけられるだろ。そうすりゃ、レイズだって」
「ごっ、ごめん! 飲んじゃった・・・!」
「ぎょおおおおおおおお!!!!」

結局、クルクがデジョンの指輪でアトルガンへ戻り、クリスタルでジュノへ向かい、装備と薬品を買い込んで戻って来た。
クルクが目を覚ましたぴよに隊長の情報屋なのかどうか問い詰めると、ぴよはあっさりと白状してしまった。
「どうしてぴよには教育的指導がないんだ」
そう文句を言った隊長は、クルクに 「ぴよは素直に認めたもん」 と言われて頬を膨らませた。

「それじゃ、クルクはアトルガンに戻るよ。それとな~く、ゴゼー商会がどうしてるか見ておく」
「んじゃオレは、ぴよさんをバスまで送ってから、しばらくはアドゥリンにモグハを移すことにするぜ」
バルファルはそう言って、チョコボに乗るとぴよと一緒にサバイバルガイドまで走って行った。
ぴよはまだぼんやりとした目をしていたが、モグハに戻って休めば元に戻るだろう。
「梅とももんがはどうするの?」
「俺はウィンダスに戻る」
「私は・・・クリルラ様に会いに行く」
二人が私を見た。
なんの証拠も掴めなかったけど、報告はするに越したことはないと思ったからだ。
殺されそうになったのは事実だからな。
それに、不確かではあるが、私はなんとなく思うところがあった。
もしかして、裏と繋がっているのはゴゼーではなく、妻のマジュリなのではないのか、と。
もちろんゴゼーもグルだろう。
だが、私はマジュリに主導があるように感じてならなかった。
「クルクも一緒に行こうか?」
「いや、私一人で大丈夫だ。もしかしたら、話を聞きたいと呼び出しがあるかもしれないが」
「わかった。それじゃ、こっちでも何かわかったら知らせるね」
クルクはそう言って、手を振りながら姿を消した。

チョコボに乗るためにホラの岩から降りると、「騎士団に戻ったらどうだ?」 と隊長が言った。
それは、私も考えなかったわけではない。
組織の中にいた方が、きっと自分の無力さを感じることが少なくて済むだろう。
でも、私は首を横に振った。
「私は、気ままな護衛屋に戻る。もしもそこで気になる噂を耳にしたら、迷わずクリルラ様に・・・報告する」
悔しくて、泣きそうだった。
だけど、涙は見せるものかと、奥歯をかみしめて隊長を見上げた。
「俺は、お前が無事でよかった。それだけでいい」
フッと笑った隊長に、私は 「ズルい!」 と言って泣いてしまった。

日を置かず、私はサンドリアのドラギーユ城へ登城した。
もちろん、一度モグハに戻り、シャワーを浴びてあのバカげた髪型を元に戻した。
クリルラ様に時間をいただき、事の次第を語った。
隊長のことはもちろん、ぴよとバルファルの名前も伏せた。
協力者として実名を出したのは、クルクだけだ。
結果としては、何もない。
ただの憶測と、殺されかけたという事実だけ。
それでもクリルラ様は、私を労ってくださった。
ゴゼーの妻マジュリについて、詳しく調べてみるとも。
そして隊長と同じく、騎士団に戻ってはどうかと勧められた。
それでもやはり、私は隊長にしたものと同じ返事を返した。
退室際、クリルラ様が 「その潜入の任を共にした者は・・・」 と声をかけてきた。
けれども、私が振り返ると 「いや、何でもない。その者にも、ご苦労と伝えてくれ」 と言った。
私はもう一度敬礼をして、そして部屋を出た。

城を出て真っ直ぐ進み、凱旋門をくぐり南の競売所前に着く。
ベヒモスマスクをかぶったミスラが、尻尾を揺らしながら熱心に入札をしていた。
そのすぐ側では、イカツイ鎧を身に着けたタルタルと、装飾の凝ったローブを身にまとったガルカが、モンスターの弱点について話し込んでいた。
いつもの風景だ。
前髪をかき上げた時に、手首のアザが目に入った。
赤く擦り剥けている手首の傷は、まだ癒えていない。
ああ、酒が飲みたいな。
隊長は、戻ったとうずらに報告しただろうか?
チッと私は舌打ちをした。
リエッタの小娘を泣かせてやることが出来なくて、とってもとっても残念だよ。
代わりに自分が泣いてしまったことを思い出し、もう一度大きく舌打ちをした。
「え、あ、ごめんなさい」
足元にいたタルタルが、私の舌打ちに驚いて慌てて謝った。
「あぁ、ゴメン、なんでもないんだ。・・・って、ヨックじゃないか」
「あ、モモさん! よかったぁ~、捜していたんです。修行のお手伝いをお願いしたくって」
「ああ、いいよ。それにしてもアンタ、まだ初期装備着てんの?」
「それが、お金を騙されてしまって」
「またぁ~?」
「英雄セットっていう装備を買ったんですけど、雨に濡れたら溶けてしまって」
「もぉ~、形から入るんじゃないよ~。気持ちと実力!」
「は、はいっ!」

明日の正午、ここで待ち合わせを決めて、私はヨックと別れた。
世界を変える力は、私にはない。
でも、それを支える力にはなれるんじゃないかな・・・。
もしかしたら、騙されてばっかりいるヨックが、いつかとんでもない英雄になったりするかもしれないもんね。
・・・なんてね。
「さて、美味い酒でも飲みに行くか」
歩き出した時に膝が痛んだけれど、私は構わず足を踏み出した。
前を向いて、ほんの少しだけ微笑んで。



< 終 >


---*---*---*---*---*---

やっぴ~、クルクです(・▽・)ノ

むぅぅぅ~、長かったwww
っていうか、疲れた。
もうこんなの書かないw
途中で書いたコト後悔しちゃったもん(^_^;)

物語って、必ず解決するでしょ?
でも実際は、何でも解決するわけじゃない。
さんざん時間をかけて苦労したことが、結果なんの成果も得られなかったり、そういうことだってあるよね。
自分は苦労したのに、別の誰かがサラリと解決したりっていうこともね。
ただの無駄足。
骨折り損のくたびれ儲け。
何一つハッキリしたことがわからないままの、進展のない話。
そういうお話を書きたかったのww
物語としては、面白くも何ともないけどねw

あ、あと一つ。
クルクはボスで仲間たちには頼られちゃってるけど、世界にはもっともっとクルクなんかよりも全然強い人がいるんだよって、それも書いておきたかったの。
鎧の男の素性は知らないけどw
前にヴォルフィに人殺し呼ばわりされた時、直接殺したことはないって言ったクルクだけど、これで前科が出来てしまいました。
バルと梅が共犯者ってことになるのかな?
物証は何も残っていないけど、証拠は心の中にあるからね。

それでは、もしも読んでくれている人がいるとしたら、ありがとうございました。
お疲れ様でした~(・▽・)ノ

次はもっとお気楽なお話しにしようっとw





いつも遊びに来てくれてありがちょん(・▽・)
ポチッと押してくれたら嬉しいな♪




【2017/10/22 23:59】 | * クルク一家
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お疲れ様でした
コウ
クルクさん、こんばんは〜。
物語の完結お疲れ様でした。面白く読ませていただきました。洞窟の戦闘はどきどきしました。ももさん、溶岩に落ちて死んじゃうかと思いましたけど、無事でよかったですね〜。
クルクさんと、バルと梅さんの3人で勝てない相手ですか〜。確かに強い冒険者とかいっぱいいますから、黒い鎧の男もかなりの猛者だったんでしょうね。相手は死んじゃったけど、クルクさん達が無事で良かったな〜。

解決しない問題はいっぱいあるとのことですが、そうですねー。だけど物語でそうだと、消化不良が・・・この話の続きを書いてみようかな?主人公はももさんとヨック君でw
ももさん、真面目そうなので割と好きなキャラです。
自分で書いてる懸賞小説が書いても書いてもちっとも終わらないので、気分転換に書いてみます〜。
目標→今年中。

そう言えばこないだ、図書館の魔女という小説を読んでとても面白かったです。ちょっと長いですが、クルクさんもお暇だったらどうぞ。

それでは〜。

Re: お疲れ様でした
クルク
コウさん、こんばんは~(・▽・)ノ
読んでいただいて、ありがとうございます。

今回の件は、調査自体は全く進展がなく終わってますが、ゴゼー商会の後日談はあったりしますw
それからモモの今後は、自分で言っていたように、何かあったらすぐに騎士団に報告するので、自分から首を突っ込んで行くことはありません~。
成り行きで関わることはあるかもですが。
でも梅に相談なしで動くことはしないだろうし、相談されても梅は首を縦に振りません。
それとですね、裏にある組織に古の東王派が絡んでいるかも?なので、基本解決しないことになってますww

モモって真面目ですか?
護衛の仕事の時は、けっこう真面目に働いてはいますけどww
ケチでタカってばっかりいるのにお金溜まってないし(理由はありますがw)
まぁ、書いてて絡めやすいキャラではありますが、梅に対しては色々と複雑ですよ~。

ヨックも、成長させなっくちゃって思ってるのに、人数多いからなかなか手が回りませんw
そろそろいい加減、サンラーとちゃんと合わせてあげたいんだけど、いや、まだ早い!とかねww

最近、各キャラで遊んでいると、過去の設定とか出来上がってるから、同じことしてても(カボチャのイベントとか)その時に思ったり感じることがキャラによって全く違うのが面白いですw
逆に言うと、うちのキャラで書いてもらっても、そのセリフは言わないとか、ダメ出しが出ちゃうかもしれないレベルになって来ちゃってるのですww

それよりもクルクは、コウさんとユファちゃんの物語が読みたいですよぉ~!!
黒い鎧の男は、きっとコウさん側の人だと思います。
善悪じゃなく、強さ的に。
うちはどっちかって言うと、皆のほほんと生活しながら冒険したり町の人のお手伝いしたりっていう感じだけど、コウさんは強いモンスターを狩る賞金稼ぎ的と言ったらちょっと違うかもだけど、大勢の同業の仲間たちと情報の交換をしたり、細かい連携で動いたりとか、そういうバトルのプロなイメージがあったりします。
それに、コウさんの過去とか、めっちゃ興味あります。
ずーっと前から、気になって仕方ないんですww
やんちゃ時代とか。
それをどういう形でユファちゃんが知るんだろうなぁ~とか、行動範囲を広げたユファちゃんは、もちろんコウさんのお仲間たちと会うことになるだろうけど、その時コウさんは仲間にどんな風にいじられるのかなぁ~wとかww
ぜひぜひ、二人が主役の物語をお願いしますっ!!
連載でもいいですよ!
むしろ、そっちで強く希望ですw


了解です
コウ
クルクさん、またまたこんばんは〜。

了解です。ではそっち系で書いてみます〜。

Re: 了解です
クルク
コウさん、おはよーございます(・▽・)ノ

わわわっ!
やったぁ~ヽ( *´ ▽ ` *)ノ
嬉しーい♪ めちゃ楽しみです♪


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Klu4641.jpg

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ひんやりとした、スーっとする匂い。
陥ちた時と同じ速さで、意識が浮かび上がってくる。
深呼吸と同時に、私は目を開いた。
上から、クルクが私を覗き込んでいた。
「・・・クルク?」
「まだ起き上がるな」
体を起こそうとした私を、隊長が止めた。
視線を回して見れば、そこは私たちに充てがわれた部屋だった。
クルクは私の枕元に座って、「何で同じ部屋なの?」 と隊長に聞いた。
「さぁな。兄妹だと言ったからだろう」
そう、私たちには、二つのベッドをチャチな衝立で仕切っただけの、小さな部屋が充てがわれていた。
騎士団時代、私は男ばかりの控え室で平気で着替えていたし、雑魚寝だってしていた。
だから隊長と同室でも、どうと言うことはない。
隊長も、私を女だと思っていないはずだ。
でなければ、拳で顔を殴ったり、手合わせで本気の蹴りを入れたりするはずがない。
それよりも・・・。
「ゴゼーは?」
私が尋ねると、隊長は短く 「寝ている」 とだけ答えた。
ベッドに肘をついて体を起こすと、少しだけ目が回った。
「お前は効きすぎだ」
そう言って隊長は、私にリネンを渡した。
鼻に当てると、スッとした清涼な匂いが肺を満たす。
クルクが隣でクンクンと鼻を動かし、「薄荷の匂い」 と言った。

ぼんやりとした頭が、次第にスッキリとしてきた。
「それで、何か聞き出せた?」
尋ねると、隊長は表情を変えずに 「手を引くぞ」 と言った。
「えっ? どうして!?」
「ドゥッガージという人物は存在していない」
「・・・え?」
隊長が催眠状態のゴゼーから聞き出した話によると、ドゥッガージというのは、標的として目を付けた貴族の家を破産させて乗っ取ることを指す隠語だったようである。
「昔、ドゥッガージって人が借金まみれで破産したから、それでそう呼んでいるみたい」
クルクが説明した。
ゴゼー商会の役目は、巻き上げた金を一時的に預かる隠れ蓑だったようだ。
きっと公には、品物を買い付けたことになっているのだろう。
「バルが、倉庫のどこにも怪しい品物はないって言ってたからね」
おそらく、ちゃんとしてはいるが価値の低い品を使っているのだろうと、クルクが言った。
「でも、だからって、手を引くことは」
「前任の用心棒は、殺されていた」
私が言いかけた言葉を、隊長が遮った。
それも、ゴゼーの口から聞き出したことのようだ。
「前任は、サンドリアからやって来た使者との話を聞いてしまったようだ」
「口封じ?」
「ああ」
背筋がヒヤリとした。
私は隊長から、絶対に秘密を探ろうとするなと釘を刺されていた。
探るために潜入しているのに、なぜだと訊いた。
すると隊長は、何が潜んでいるかわからない藪に無暗に手を突っ込むのは自殺行為だと、そう言ったのだ。
その時はわかったと納得を見せた私だったが、もうそろそろ聞き込みでもしてみようかと思っていた矢先だった。
「前任の人は、自分から盗み聞きしちゃったわけだけど、知りたくなくても何かの時に偶然知っちゃったとか、聞いてないのに聞かれちゃったって誤解されちゃうこともあるよね」
長くいればいるほど、その危険は増すだろう。
クルクは、それが心配だという。
「それにね、梅たちのことも調べてたんだって」
ゴゼーは、兄妹について天晶堂に問い合わせていたらしい。
だが、天晶堂がフィルターになっていて、生い立ちまでは確認することができなかったと言ったそうだ。
それらは全て、裏で事を動かしている組織に関わる者達が指示をしているのだという。
けれどゴゼーは、その組織に籍を置く者の名前を一人として知らなかったらしい。
「裏の組織の一端でもと思っていたが、騎士団でさえ掴めない証拠を手に入れるなど、命をかけても出来るかどうかわからん」
「でも私はっ・・・」
ここでお終いだなんて、そんなの納得がいかない。
なんとか一矢報いたかった。
でなければ、みんなの死が悔しすぎる。
その思いは、隊長だって同じはず。
けれど、隊長はもう一度 「手を引く」 と言った。
「なんで!?」
そう顔を見上げると、隊長は静かに言ったのだ。
「俺にとっては、生きている者の方が大事だからだ」
わかってる。
私だって、そうだ。
ただ、ただ、悔しいのだ。

「それで、どうやって用心棒を辞めるの?」
クルクが聞いた。
天晶堂の紹介状まで持ってやって来たのに、一身上の都合だなんて理由にならないだろう。
「死んだことにしたらいいんじゃないか? 得意だぞ」
隊長のシャレにならない提案に、クルクが 「それしかないかなぁ」 と頭を傾けた。
「じゃあさぁ」 と言ってクルクが喋り始めた筋書きは、また誰かがゴゼーを襲ってきて、逃げていくのを追いかけて、そのまま戻らないというものだった。
「梅の情報屋って人に、また手伝ってもらえたら、だけど」
「それは大丈夫だろう。バルファルはどうする?」
「バルはねぇ~、もうしばらく働いてればいいんじゃないかな? なんかさ、無邪気を装って、ガルカたちに気に入られちゃってるみたいだよ」
クルクはそう言って笑うが、私が知る限り、バルファルは裏表がなく天真だ。
倉庫で見かけた時も、真面目に働いていた。
体の小さなタルタルが、ガルカに混じって一生懸命に働いていれば、そりゃ気に入られてもおかしくはない。
取り敢えず、もう数日このまま過ごすことになり、クルクは窓から帰って行った。

翌日、ゴゼーは何事もなかったかのように変わりない。
だが私はまだ心の折り合いがつかず、目は何か手掛かりになるものはないかと、今まで以上に探していた。
「なんだ? モモガー、何をキョロキョロしておる?」
「えっ!? あのぉ~、ゆ、指輪を落としちゃったみたいでぇ~」
「指輪だと? そんなものいつもしていたか?」
「・・・ぺっ」
「ぺっ?」
「ペンダントにしてたのぉ! ママの形見なのぉ! 探してぇぇ~!!」
キーキー声で私が叫ぶと、ゴゼーは 「勝手に探しておれ」 と言って部屋を出て行った。
ゴゼーが隊長を呼び、妻のマジュリが 「お気を付けて」 と送り出す声が聞こえてきた。
そう言えば、今日はアルザビのレストランへ用聞きに行くと言っていたっけ。
店が大きくなっても、店主が自ら得意先へ足を運ぶ。
巷では驕らない人物だとか言われているが、よく言う者と同じ数だけ僻む者もいて、裏で何をやっているかわからないと陰口を叩かれてもいた。
だが、ゴゼーが用聞きに得意先を回るのは、倉庫で働く者たちの他に、従業員がいなかったからだ。
つまり、それでやっていける程度の商いなのだ。
大きすぎるナシュモの倉庫には、どこからか大量の安物を仕入れ、それをサンドリアへと運んでいる。
その仕入先や出荷先、そういった類の伝票や書類はないのだろうか?
机の引き出しや書類棚、そして金庫は隊長が調べたと言っていた。
「何をしているの?」
突然背後から声をかけられ、私は飛び上がるほど驚いた。
マジュリが部屋の入り口に立ち、険しい表情で私を見ていた。
「ママの形見の指輪を~、落としちゃったのぉ。見つからなくてぇ~」
「そう・・・。お客様がお見えになるから、捜すのはまた後でにしてちょうだい。邪魔にならないように、リエッタを連れて外に出ていなさい」
「はぁ~い」
私は言われるまま、リエッタと店の外へと出た。

ゴゼーはまだ戻って来ない。
なのに、客・・・ね。
男でも引き入れているのか?
シャララトで甘くしたアルザビコーヒーを飲みながら、そんな下賤なことを考えていたら、リエッタが 「お客って誰だと思う?」 と私に聞いて来た。
そんなこと知るはずがない。
「さぁ~?」 と首を傾げると、「想像もできないの?」 とバカにするように鼻で笑った。
本当に腹が立つ。
だから私は言ってやったのだ。
「ご主人が留守なのにぃ~、わざわざ娘とワタシを外に追い出す客なんてぇ~、愛人でもいるのかしらぁ~?」
「なっ! モモガーあなた、何てこと言うの!? ママがそんなわけないじゃない!」
「ぃやぁ~だぁ~、ただの想像だよぉ~」
キャキャキャっと笑い声をあげると、リエッタが私の腕を掴んで睨んで来た。
「確かめに行くわよ」
「え?」
「戻って、どんなお客か、何をしに来たのか、確かめるのよ!」
それは・・・マズいんじゃないか?
もしも本当に愛人だったら、どうする?
いや、それならそれでいい。
そうではなく、知られてはならない客だとしたら・・・チャンスか?
こちらが見つからなければいいのだ。
それには、この小娘が邪魔だった。
「それじゃぁ~、ワタシが確かめてきてあげる~」
「ダメよ、私も行くわ」
「もしも見つかったら、なんて言い訳するつもりぃ~? ワタシなら、リエッタとシャララトに行ったんだけど、お財布忘れちゃって~って、取りに戻りましたぁって言えるんだけどなぁ~」
「・・・わかったわよ。それじゃ、モモガーが一人で行きなさい」
「りょぉ~かぁい」
私は頬を引きつらせて笑うと、ゴゼー商会へと戻った。

店の正面扉に手をかけると、カギがかかっているのがわかった。
つまり、裏口から招き入れるような客ってことか。
裏口に回り取っ手を掴むと、こちらもカギがかかっていた。
なるほど、客はもう中にいるということか。
私はクルクが入って来たように、窓から部屋に入ることにした。
ところが・・・。
「チッ、あの几帳面男め、窓に鍵なんかかけやがって」
鍵の構造は単純なものだったので、前髪を留めていたリボンのついたピンでチョチョっといじって開けることが出来た。
私はベッドの下に置いてある、隊長のカバンを引き寄せた。
探していたのは、サイレントオイルとプリズムパウダーだ。
もちろんすぐに見つかった。
他に何か面白いものはないかと漁ってみたけど、いくつかの薬品と携帯食、それから最低限の着替えだけだった。
「つまんないなぁ。愛しの彼女の写真くらい持っててもいいのにさ」
カバンを元に戻しながら、そんなことをしている場合ではなかったと、私は部屋を出た。
扉は閉めず、その場でオイルとパウダーを使用した。
靴音は床に吸われ耳には届かず、視界には薄い紗幕がかかっている。
そのおかげで、スニークとインビジがかかっている状態だと認識出来る。
それでも私は、そっと足を運ばせ、気配を消して廊下を進んだ。

軽い笑い声と、低い話し声。
マジュリと客が、事務所に使っている部屋にいるのは間違いなさそうだ。
扉は閉まっているため、聞こえてくる言葉は不明瞭だ。
私は扉に耳を付け、中の音に神経を集中させた。
「サン・・・の・・・様は、・・・」
「さよう・・・かの・・・いずれ・・・」
あぁ、クソッ!
マジュリは声を潜めているようだし、低い男の声は布を通して喋っているかのように、くぐもってよく聞こえない。
ほんの少しでも扉が開けば・・・。
私は扉の取っ手に手をかけようとしたが、魔法によって作り出された薄い紗幕に遮られ、取っ手を掴むことが出来ない。
インビジの効果を切るか?
やめておけと、灰色がかった薄茶色の冷静な瞳が脳裏に浮かんだ。
でも隊長、たった1つでいいんだ。
何でもいいから、ここで私たちがしたことは無駄じゃなかったって、そう思える成果が欲しいんだ。
今が、そのチャンスなんだ。
私は意識を集中して、インビジの効果を切った。



< 続く >





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【2017/10/18 23:59】 | * クルク一家
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私はモモンジーナだ。
クルクは私をももんがと呼び、アトルガンでの潜入ネームはモモガーになっている。

アトルガンに来て、どのくらい経つだろう?
もう地図を見なくても、細い裏路地の抜け道まで頭に入っている。

私と隊長はゴゼー商会に入り込み、寝食を共にしていた。
ゴゼーはエルヴァーンにしては腹の出たオヤジで、やたらとキラキラと光る物を身につけている。
私は目利きではないが、それらは高額であろうと思われ、しかし品がなかった。
ゴゼーは取り引き先との商談や内輪の話し合いには必ず私たちを外させているが、用心棒としては天晶堂からの招待状を持ってやって来た兄妹を信頼しているように感じる。

その日の朝ゴゼーは、ナシュモにある倉庫へ行くと言った。
クリスタルでの移動は、冒険者登録していない者には許可されていない。
そのため、もちろんゴゼーの用心棒である我々も、船での移動になる。
ゴゼーは外出する時には、いつも隊長を連れて行った。
その間私は留守を守っているのだが、今回ばかりはそうもいかない。
隊長の船酔い体質は、誤魔化しが通せるレベルではないからだ。
ナシュモと聞いて、すでに船酔いしたような顔色になった隊長に代わり、私からゴゼーに真実を告げた。
「うちのお兄ちゃんはぁ~、船に乗るとぉ~、役立たずどころか~、お荷物にしかならないよぉ~」
このバカげたしゃべり方は、クルクの設定によるものだ。
だが、長く続けていると、自分の本当のしゃべり方がわからなくなってくるので、怖ろしい。
私の言葉を聞き、ゴゼーは眉を寄せた。
「む・・・そうなのか?」
「申し訳ない」
これっぽっちも申し訳なく聞こえない声音の隊長に、ゴゼーは仕方ないとため息をつき私を見た。
「ならばモモガー、準備をしておけ」
「はぁ~い、ワタシなら、いつでも出れまぁ~す」
私は指先までピンと反らせた手を真上に上げて、鼻にかかった高い声で返事をした。
まるで痛々しい者を見るような隊長の目つきにも、もう慣れた私だ。
そんなことよりも、これはチャンスだ!
私はここへ来て初めて気持ちが高揚した。

ゴゼーにはマジュリという妻と、リエッタという17歳になる娘がいる。
私はこの娘が、とにかく大嫌いだった。
成金の娘にありがちな、贅沢でワガママなお姫様気取りのバカ娘で、この私を顎で使うことを父親に許されている。
一昨日の夜は真夜中に叩き起こされて、シャララトまでシュトラッチを買いに行かされた。
そして買って帰れば、眠いから後にしてと手を振って追い払われたのだ。
いつか泣かしてやると心に決めた私だが、まさかこんなに早く仕掛けられるチャンスが来るとは!
私は知っているんだ。
このクソ生意気なバカ娘が、いつもチラチラと隊長のことを気にして見ているということを。
私にはくだらない用事を根性の悪い姑のように言いつけるくせに、隊長には朝の挨拶さえまともに返せないのだ。
隊長にバカ娘をたらし込む甲斐性があるとは思えないけど、タルタルと女性には親切な男だからな。
せいぜい勘違いさせてときめかせてやってから、お前なんか眼中にないんだよと泥の中に蹴り落としてやったらスッキリするだろうと、私は密かに考えていたんだ。
だから、これはチャンスだ。

ゴゼーが支度を整え終わるのを待ち、私は思い出したように口を開いた。
「ご主人~、リエッタちゃんって、ダンスは出来るのかしらぁ? お金持ちのお嬢様なら~、ダンスくらい出来ないとねぇ~」
するとゴゼーは、意外にも話に乗って来た。
「そうなのだ。以前に習わせようと思ったことがあったんだが、なかなかよい先生が見つからなくてな」
「お兄ちゃんは上手よぉ~。と言っても、クォン大陸のダンスだけどねぇ~」
私は両手を広げて、ワルツのステップを踏んで見せた。
「ほぅ、クォン大陸というと、サンドリアなどかね?」
「ワタシのお母さんの叔母さんの従兄妹の息子のお嫁さんのお兄さんのお嫁さんのお父さんがサンドリアの人だったみたいでぇ~、それで教わったのぉ~」
もう一度言えと言われても、もう二度と言えないが、ゴゼーはサンドリアと聞いて頷いた。
そして出かける準備が出来ると隊長とリエッタを呼び、隊長にリエッタにダンスを教えるようにと告げたのだ。
その時のリエッタの顔!
見る見るうちに頬を染めちゃって、バカな娘!
私は腹を抱えて笑いたいのを我慢しながら、遮光眼鏡の向こうから睨んで来る隊長の視線を逸らした。
そうだよ、これは隊長にたかる時のネタにもさせてもらうつもりさ。
もしくは、ランコントルでただ酒を飲む時のネタだね。
そっちの方が、その後の修羅場が見れたりして面白いかもね。
ダンスの練習風景を見れないのは大いに残念だけど、私はゴゼーについてナシュモの倉庫へと向かった。

ナシュモの倉庫では、大勢のガルカに混じって荷物の選別作業をしているバルファルを見つけた。
バルファルも私に気づいたようだけど、すぐに視線を外してテキパキと働いていた。
なんとか接触できないかと考えたが、不自然に近づくのは危険なので諦めたよ。
そろそろクルクから連絡がある頃合いだろうしな。

ゴゼーは倉庫の責任者らしきガルカと話しているので、私はその辺をブラブラと見て歩いていた。
積み上げられている木箱のラベルは、読む限りどれもまともな品に思える。
まぁ、こんな目立つ場所に、武器などの密売品は置いておかないだろう。
と、その時、上の方から 「何だ、あれ?」 とバルファルの声がした。
見上げると、積み上げられた荷の上に立っているバルファルが、指を差していた。
その方向へ振り返った私は、こちらに向かって走って来る男を見た。
頭にベヒーモスマスクを被っていたが、体つきを見れば男とわかる。
私やバルファルには、そんな格好の者は見慣れているしどうということはない。
にもかかわらず、バルファルは 「うわぁぁぁーー、コワイ! 逃げろーっ!」 と悲鳴をあげたのだ。
すると、その場にいたガルカたちは慌てて逃げ出した。
見ると、ベヒモス男が走りながら懐に手を入れたので、私は咄嗟に槍を掴んで飛び出した。
私に気づいたベヒモス男はその場に立ち止まると、恐怖で凍り付いたようにその場に立ち尽くしているゴゼーに向けて、手に持った苦無を投げ放った。
私は難なくそれを槍で払い落とす。
2回、3回、4本目の苦無を槍で弾くと、ベヒモス男はそれを見て踵を返した。
逃がすか!
私はベヒモス男の後を追った。

ナシュモの町は小さい。
逃げ込める建物は限られているし、故に追っ手を巻けるような路地も少ない。
が、その分、時間をかけずに外へ逃げられる。
頭の中で地図を思い浮かべ、ベヒモス男が逃げている方角と照らし合わせる。
そして、やはりカダーバへ出るつもりだなと確信した。
そうしながらも、私は考えていた。
ベヒモス男を最初に見つけたのは、なぜバルファルだったのだろうか?
ベヒモスマスクをかぶった冒険者など見慣れているはずのバルファルが、なぜ悲鳴をあげたのだろうか?
導き出せる答えは一つしかない。
私はカダーバへ出てから勝負をかけることに決めた。

足元を狙った槍は水平にクルクルと回転をして、逃げるベヒモス男の足に絡んで転ばせた。
すかさず私は背後から馬乗りになり、片腕をねじ上げながらもう片腕で首を絞め上げた。
「痛い痛い、苦しいってば!」
ベヒモス男は片手で地面を叩きながら、ギブアップを示した。
私は首から腕を外し、ねじ上げた腕を掴む力を緩めてやった。
「あんた、こんな所で何してるのよ?」
「何してるって、モモさんこそ、何で追いかけて来てるんですか?」
「そりゃ、あんたが逃げたから」
「ええ!?」
ベヒモスマスクを取った男は、やはりぴよだった。

ナシュモからカダーバへ出てすぐの草の茂みに、私たちは姿を隠すように腰を下ろした。
「梅兄から聞いてないんですか?」
「何を?」
ぴよは大きくため息をつき、「俺がモモさんに捕まったって、梅兄には言わないでくださいね」 と言った。
「これは隊長の計画なの?」
「いえ、クルたんです。と言っても、クルたんは俺がアトルガンに来ていることは知りません」
「どういうこと?」
ぴよによると、昨夜バルファルからゴゼーがナシュモの倉庫に来るという情報を聞いたクルクが、隊長に会いに行ったらしい。
なかなか進展しないことに焦れたクルクが、ゴゼーを襲うことを提案したようだ。
クルクは自分が変装すると言ったようだが、クルクはタルタルだし変装したところで 「小さい何か」 にしかならない。
そこで隊長がベヒーモスマスクを被って襲うことにしたらしい。
船酔いがあるのでナシュモに行くのは私になるだろうし、そうすれば隊長はクリスタルで素早く移動が出来るからということだったのだろう。
ところが、私がゴゼーに入れ知恵をしたために、隊長は抜け出せなくなってしまった。
そこで、ぴよに連絡がきたようだ。
「ねぇ、隊長からどうやって連絡があったの?」
隊長はモグハをレンタルしていないし、モグがいないので通信も使えないはずだ。
私の問いに、ぴよは 「企業秘密です」 と小さく笑っただけだった。

倉庫へと戻る道すがら、私は浮かび上がった疑問について考えていた。
バスにいたであろうぴよが、隊長の呼び出しにこれほど早く対処出来たということは、以前にアトルガンに来てクリスタルの登録を済ませてあったからだろう。
船で来たのでは間に合わない。
では、アトルガンへは何をしに?
あまりにもタイミングよく女と駆け落ちをした、前任の用心棒。
果たして彼は、本当に駆け落ちをして姿を消したのだろうか?
だとしても、その女の素性は?
そして、隊長の情報屋が手配したと言う天晶堂からの紹介状。
何となく、私にはわかったような気がした。

倉庫へ戻ると、ゴゼーが私を待っていた。
私は大袈裟に頬を膨らまして、唇を尖らせた。
「カダーバまで逃げていくんだもん、疲れちゃったぁ~」
「逃がしたのか?」
「まさかぁ~。追い詰めて、顔を見たよぉ。頬に大きな傷があったっけ~。なんかぁ、先物で騙されたとか~、ヒトカイ? とか叫んでてムカついちゃったからぁ、沼に沈めちゃった。アハハ」
「よくやった。しかし・・・」
ゴゼーは険しい顔になり、それ以上何も言わなかった。

白門に帰って来たのは、夕方だった。
腹を鳴らしながらゴゼー商会へ戻ると、マジュリとリエッタが奥から走り出て来た。
「あなた! 大変でしたのよ!」
「どうしたのだ?」
「パパ! コワイお面を被った人が入って来たのよ」
「なんだと!? メルメルはどうした!?」
マジュリとリエッタが同時に話し始めたので聞き取りにくかったが、どうやら入って来た人というのは、ベヒーモスマスクを被っていたらしい。
ということは・・・もしかして、またぴよか?
ご苦労なことだ。
ベヒモス男はゴゼーはいるかと言って、ナイフを振り回していたようだ。
すぐに隊長が出て行き何の用かを尋ねると、ベヒモス男はゴゼーに騙されたとか、密売をしているのを知っているなどと喚きながら、殺してやると言って暴れたらしい。
が、すぐに隊長が取り押さえ、しゃべれないようにした後、外へ連れ出したと言う。
落ち着きなく部屋を行ったり来たりしながら、ゴゼーは隊長の帰りを待っていた。
間もなくして戻った隊長は、「ワジャームに捨てて来た。今頃は剣虎族のエサになっているだろう」 とゴゼーに報告をした。
マジュリとリエッタはホッとした顔をしていたが、ゴゼーは険しい顔つきのままだった。

夕食後、ゴゼーは私と隊長を自室に呼んだ。
ゴゼーはソファーに腰を下ろすと、年代物のブランデーを惜しみなくグラスに注ぎ、自分だけ喉を潤した。
「それにしても、いったいどういうことだ? わしが誰を騙しただと? 人買いだとか密売だとか、誰がそんな噂を流しているのだ?」
「言われる事実や、心当たりはないのか?」
隊長の言葉に、ゴゼーは目を剥いて 「あるものか!」 と唾を飛ばした。
「ここまで店を大きくするのに、そりゃキレイ事ばかりやって来たわけじゃない。あぁ、嘘をついたこともある。だが、命を狙われるような悪事はしておらんぞ!」
その言葉に、私は隊長と目配せをした。

隊長が、ふっと窓に顔を向けた。
それを見て、ゴゼーは 「なんだっ!?」 と怯えた表情になる。
一度窓を開けて外を確認した隊長は、「いや・・・気のせいだ」 と言って窓を閉めた。
ただのフェイクだ。
しかし、ゴゼーはよほど恐怖を感じているのだろう、目を見開いて何か聞こえはしないかと、耳を澄ましているように見える。
私はゴゼーの気を引くために、パチンと両手を叩いて 「そう言えばぁ~」 と口を開いた。
「ワタシが沼に沈めた男は~、沈んじゃう前に助けてくれって言いながら、なんか言ってたんだけどぉ~、なんだったかなぁ~」
「なんだ? 何を言っていたのだ?」
「えぇ~っとねぇ~」
口元に人差し指を当てて、思い出している風を装いながら、私は隊長を見ていた。
隊長はポケットから茶色い紙の包みを取り出すと、窓際のデスクの上に置かれたオイルランプにそれを浸した。
「そうそう! サンドリアの貴族がどうとかって言ってたっけ~」
すると、ゴゼーがギクリと顔を強張らせた。
「主人、サンドリアの貴族と、何か取引はしていないのか?」
「しておらん! いや、だが、わ、わしは・・・」
ゴゼーはキョトキョトと視線を彷徨わせながら、必死に何かを考えている風だ。
隊長が微かに顎を上げて私を見た。
やれやれ、了解。

普段は化粧などしない私だが、ここに来てからは欠かしたことがない。
自分で言うのもなんだが、素材はいいはずだ。
それに手を加えているのだ、魅力的でないわけがない。
それに、なにより若い!
そんな私が、床に膝をついて、ゴゼーを下から見上げたのだ。
「大丈夫よぉ~。ワタシたちは、ご主人の味方だよぉ」
そして、そっとゴゼーの手を取った。
「ワタシたちィ、ご主人に死んでほしくないのぉ」
「死ぬ・・・」
ゴゼーが、私の顔を見下ろしている。
私はニコッと微笑んで頷いた。
「だからぁ~、ワタシは命に代えても、アナタを守ってあげるぅ。それにはぁ~、誰が敵なのかぁ~、見極めなくっちゃならないのね~」
そうしている間に、ゴゼーのデスクの上にあるオイルランプから、糸のように細い紫煙が漂ってきている。
いつの間にか、隊長は足音もなく扉の前に移動していた。
ゴゼーは私の目をじっと見つめている。
だから私も、ゴゼーから目を逸らさない。
が、視界には隊長からの 「続けろ」 という合図が見えている。
「もしもぉ~、サンドリアの貴族がぁ、ご主人の邪魔をしているんだったらぁ、ワタシがそいつを・・・始末してきてあげるぅ」
「いや・・・そうでは、ないのだ・・・」
私の目を見つめたまま、瞬きもせずにゴゼーは呟くように口を開いた。
「ワタシに、話してぇ。何でもいいのぉ・・・知っていること、全部ぅ・・・」
あぁ、クソッ、眠い!
漂う微かに甘い香りが、急速に眠気を誘う。
これは、騎士団が犯人に自白させる時に使っていた、香の匂いだ。
本来なら、身動きが取れない状態にしてから、直接嗅がせて自白を促す。
それが出来ないから、炊いたのだ。
チャンスがあればこれを使うと、隊長に言われていた。
吸い込むなとも言われたが、それは無理と言うものだ。
ゴゼーは私を見つめ、ユラユラと体を揺らしながら口を開く。
「・・・わしは・・・言われたのだ・・・サンドリアの・・・貴族にして・・・・・・」
耳に何かを詰められているように、ゴゼーの声がどんどん遠のいていく。
目の前で、ゴゼーの口がパクパクと閉じたり開いたりしているのが見える。
何を言っているのだろう?
隊長は、まだそこにいるのだろうか?
視界が狭まり、だんだん暗くなっていく。
あぁ、陥ちる・・・。
そこで、私の意識は途切れた。


< 続く >





いつも遊びに来てくれてありがちょん(・▽・)
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【2017/10/11 23:59】 | * クルク一家
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